ツルヨシ Phragmites japonica  Steud. イネ科 ヨシ属
湿生〜抽水植物
Fig.1 (西宮市山口町・河川 2008.11/16)

渓流畔や砂質の湿地に生育する多年草。礫の多い河川では下流域にも生育する。
緑葉のある長く屈曲する地上匐枝があり、節には開出毛がある。
茎は高さ1.5〜3m。葉は灰緑色で硬く、線形、幅2〜3cm。上方の葉鞘の上部はふつう多少紫色を帯びる。
花序は長さ12〜30cm、広卵形。小穂は長さ8〜12mm、3〜4小花からなる。最下の小花は雄性で他は両性小花。
第1苞穎の長さは、最下の護穎の半分かそれより少し長く、第2苞穎とともに次第に先がとがる。
護頴には縁毛がなく、基部に長毛がある。
近似種 : ヨシ、 セイタカヨシ(セイコノヨシ)、 オギ

■分布:本州、四国、九州、沖縄 ・ 朝鮮半島、中国、台湾、ウスリー
■生育環境:渓流畔、砂質の湿地など。
■花期:8〜10月
■西宮市内での分布:中・北部の渓流畔や河川敷などに普通。武庫川河川敷にも見られる。

Fig.2 全体。(兵庫県篠山市・河川 2007.10/7)
  草体はヨシに似るがヨシよりも小型で、やや繊細さを感じさせる。
  河川の流れのある場所に生育することが多く、ふつう上〜中流域に多い。

Fig.3 ツルヨシの花序。(西宮市山口町・河川敷 2007.10/14)
  円錐花序で30cmになり、大型。全体に赤紫色を帯びる。

Fig.4 花穂の拡大。(西宮市山口町・河川敷 2007.10/14)
  花序枝の分枝部には長毛が生える。小穂には柄がある。

Fig.5 冬枯れのツルヨシ群落。(西宮市山口町・河川 2008.12/28)
  河原を一面に覆ったツルヨシの群落が河川内を冬枯れ色に染めていた。
  このように混み入った状態で生育するものは、背丈が高くなることが多い。

Fig.6 渓流中の匍匐枝から萌芽した新芽。(西宮市甲山町・渓流 2008.4/8)
  急流中にも匍匐枝を伸ばして発根し、そこから茎を伸ばす。

Fig.7 群生するツルヨシ。(西宮市甲山町・渓流 2008.7/7)
  匍匐枝を伸ばして群生し、茎が混みあってくると倒伏するものが現われ、倒伏した茎も節から発根する。

Fig.8 葉身基部と葉鞘。(西宮市甲山町・渓流 2008.7/7)
  ふつう茎上部の葉鞘は赤紫色を帯びる。
  葉身基部には葉舌がほとんどなく、若い葉の基部には長毛が生えるがやがて脱落する。
  葉耳はヨシのように広がらず、発達しない。

西宮市内での生育環境と生態
Fig.9 河川の中流域の河原に群生するツルヨシ。(西宮市山口町・河川 2008.11/16)

Fig.10 渓流畔に群落をつくるツルヨシ。(西宮市甲山町・渓流 2008.7/7)

Fig.11 溜池の水面に屈曲する匍匐枝を伸ばすツルヨシ。(西宮市甲山町・溜池 2008.7/7)

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
大井次三郎, 1982. イネ科ヨシ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本1 単子葉類』 pp.107. pls.91. 平凡社
北村四郎・村田源・小山鐡夫, 2004 イネ科ヨシ属. 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 pp.341〜342. pls.87. 保育社
長田武正・長田喜美子, 1984 ヨシ. 『野草図鑑 3 すすきの巻』 pls.115. pp.117. 保育社
大滝末男, 1980 アシ(ヨシ). 大滝末男・石戸忠 『日本水生植物図鑑』 168〜169. 北隆館
角野康郎, 1994 イネ科ヨシ属. 『日本水草図鑑』 pp.68. pls.70. 文一統合出版
藤本義昭. 1995. イネ科ヨシ属. 『兵庫県イネ科植物誌』 191〜194. 藤本植物研究所
佐藤恭子, 2001. イネ科ヨシ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 314〜316. 神奈川県立生命の星・地球博物館
桑原義晴, 2008 ヨシ属. 『日本イネ科植物図譜』 pp.384〜387. pls.28. 全国農村教育協会
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ツルヨシ. 『六甲山地の植物誌』 236. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. ツルヨシ. 『近畿地方植物誌』 181. 大阪自然史センター

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