ヤマアゼスゲ | Carex heterolepis Bunge | カヤツリグサ科 スゲ属 アゼスゲ節 |
湿生植物 |
Fig.1 (京都府綾部市・河川敷 2013.5/2) |
||
Fig.2 (西宮市・崩壊地の砂防ダム内 2007.5/24) 平地から山間の河畔、湿地に生育する多年草。 地下に横走する太い根茎があり、まばらに叢生する。基部の鞘は褐色〜淡褐色で硬く、わずかに糸網を生じる。 葉は幅3〜6mmで、いちじるしくざらつく。 有花茎は高さ20〜60cmで直立し、上部は上向きの小さな突起があってざらつき、小穂は3〜7個、頂小穂は雄性、側小穂は雌性。 雌小穂は長さ1.5〜6cm、幅4〜5mm、多くは柄がない。 雌鱗片は側面が黒紫色で、中肋が緑色、果胞と同長か、やや短い。 果胞は扁平、無毛で平滑、長さ2.5mmで、嘴は急に短くとがり、口部は小さく2裂する。 痩果は果胞に密に包まれ、広倒卵形で、長さ約2mm。 近似種 : アゼスゲ、 タニガワスゲ ■分布:北海道、本州、四国、九州 ・ 朝鮮半島、中国北部、ウスリー ■生育環境:渓流や河畔、砂防ダム内に成立した湿地など。 ■果期:5〜6月 ■西宮市内での分布:今のところ1ヶ所でのみ数個体確認しているが、今後渓流畔などで自生地が発見される可能性は高い。 |
||
↑Fig.3 全草標本。(兵庫県丹波市・溜池畔 2010.5/13) 横走根茎があり、まばらに叢生する。葉はいちじるしくざらつく。 |
||
↑Fig.4 基部。(兵庫県丹波市・溜池畔 2010.5/13) 横走根茎はやや太く、硬い。基部の鞘は褐色〜淡褐色、わずかに糸網がある。 |
||
↑Fig.5 基部の糸網。(兵庫県丹波市・溜池畔 2010.5/13) |
||
↑Fig.6 雌小穂。(西宮市・崩壊地の砂防ダム内 2007.5/24) 果胞の口部が2裂しているのがわかる。雌蕊柱頭は2岐する。 |
||
↑Fig.7 果胞。(兵庫県丹波市・溜池畔 2010.5/13)
右は鱗片の付属したもの。鱗片の両側は黒紫色、中肋は緑色。 果胞は扁平で平滑、嘴は急にすぼまり、口部は小さく2裂する。 |
||
↑Fig.8 痩果。(兵庫県丹波市・溜池畔 2010.5/13) 痩果は広倒卵形、長さ2mm内外。 |
他地域での生育環境と生態 |
Fig.9 山間の谷池の池畔に生育するヤマアゼスゲ。(兵庫県丹波市・溜池畔 2010.5/13) 山間部の溜池畔の流れ込み付近にオタルスゲとともに見られた。黒味を帯びたように見える側小穂を持つものがヤマアゼスゲ。 ここでは同所的にミヤマシラスゲ、オタルスゲ、タニガワスゲ、タカネマスクサ、シラコスゲ、タチスゲ、クサスゲ、キクムグラ、アケボノソウ、 ヘビイチゴ、オヘビイチゴ、ニョイスミレ、ミヤマチドメ、マツカゼソウ、タケニグサ、ドクダミ、ミツバ、クラマゴケなどが見られた。 |
||
Fig.10 溜池畔にアゼスゲとともに生育するヤマアゼスゲ。(兵庫県丹波市・溜池畔 2015.4/19) 水際に見られる黄緑色で草丈の低いものはアゼスゲで、手前側の緑色で草丈の高いものはヤマアゼスゲ。 ヤマアゼスゲよりもアゼスゲのほうが水際を好むようで、ヤマアゼスゲ群落中にはタカネマスクサも生育していた。 同所的にキツネノボタン、オヘビイチゴ、ニョイスミレ、チドメグサ、セリ、ドクダミなどが見られた。 |
||
【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 大井次三郎, 1982. ヤマアゼスゲ. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本1 単子葉類』 p.163〜164. pl.145. 平凡社 小山鐡夫, 2004 アゼスゲ節. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.298〜303. pl.75. 保育社 牧野富太郎, 1961 ヤマアゼスゲ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 784. 北隆館 勝山輝男. 2001. スゲ属アゼスゲ節. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 453〜456. 神奈川県立生命の星・地球博物館 勝山輝男, 2005 アゼスゲ節. 『日本のスゲ』 92〜123 文一総合出版 谷城勝弘, 2007 スゲ属アゼスゲ節. 『カヤツリグサ科入門図鑑』 46〜56 全国農村教育協会 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ヤマアゼスゲ. 『六甲山地の植物誌』 244. (財)神戸市公園緑化協会 村田源. 2004. ヤマアゼスゲ. 『近畿地方植物誌』 156. 大阪自然史センター 黒崎史平・松岡成久・高橋晃・高野温子・山本伸子・芳澤俊之 2009. タニガワスゲ. 兵庫県産維管束植物11 カヤツリグサ科. 人と自然20:147. 兵庫県立・人と自然の博物館 最終更新日:19th.June.2015 |