アブラススキ Eccoilopus cotulifer  (Thumb.) A. Camus
  里山・林縁・草地の植物 イネ科 アブラススキ属
Fig.1 (西宮市・雑木林の林縁 2010.11/23)
丘陵〜低山の里山の林縁や草地、山地の草原に生育する多年草。
根生する葉があり、茎は高さ80〜150cm。
葉は幅10〜15mm、長さ40〜60cm、中肋は目立ち、葉身基部では中肋両側の葉身は狭く柄状となり、その長さ5〜10cm。
葉舌は3角状革質、高さ1.5〜2.5mm。葉舌うしろの葉身基部には2〜2.5mmの長毛が多数生える。葉鞘は下方では重なり合い、無毛。
円錐花序は下垂し、長さ20〜35cm。花序枝は半輪生状に節につき、表面平滑、中部以上には小穂群が総となってつく。
総には無柄小穂と有柄小穂が対となってつく。小穂はいずれも両性小穂で、長さ約6mm、淡緑色または紫褐色、披針形、長毛があり、基部は短毛が密に輪生する。
小穂は2小花からなり、第1小花は1個の薄膜質の護頴のみに退化、第2小花は両性花で、護頴は膜質で中央部は中裂し、その間から芒が出る。
芒は長さ25〜35mm、ねじれて膝折れする。
近縁種 : オオアブラススキヒメアブラススキ

■分布:日本全土 ・ 朝鮮半島・中国・インド
■生育環境:里山の林縁や草地、山地の草原など。
■花期:9〜10月

Fig.2 全草標本。(西宮市・雑木林の林縁 2010.11/23)
  根生する葉は、秋には枯れて柄状の部分のみが残っていることが多い。

Fig.3 葉身基部。(西宮市・雑木林の林縁 2010.11/23)
  葉身の幅はススキ並みだが、基部は次第に細くなり柄状となる。

Fig.4 葉身表面。(西宮市・雑木林の林縁 2010.11/23)
  中肋は白色でよく目立つ。葉縁は波打ち、上向きの微細な刺状突起が並び、ざらつく。

Fig.5 葉鞘と葉身基部。(西宮市・雑木林の林縁 2010.11/23)
  葉鞘は無毛で、両縁は下方では重なり合うが、口部近くでは重ならず、縁は薄膜質。葉舌は革質で3角状。
  葉耳は未発達。柄状となった葉身基部の葉舌の後ろには長い直毛が多数生えている。
  葉鞘や葉身基部に見える小さな黒斑は菌類が付着しているもの。

Fig.6 円錐花序は下垂する。(西宮市・雑木林の林縁 2010.11/23)
  花序枝は細く軟らかいため、花序全体は下垂する。花序枝は中軸の各節に半輪生状につく。

Fig.7 花序枝の先についた総。(西宮市・雑木林の林縁 2010.11/23)
  総は無柄小穂と有柄小穂が対になって多数ついている。画像のものは下方の小穂が欠落している。

Fig.8 無柄小穂と有柄小穂。(西宮市・雑木林の林縁 2010.11/23)
  無柄小穂と有柄小穂はいずれも両性小穂。各小穂は2小花からなる。

Fig.9 小穂の構成。(西宮市・雑木林の林縁 2010.11/23)
  小穂は2小花を革質の苞頴が包む。苞頴は5〜9脈があり長さ5mm前後。
  第1小花は薄膜質の護頴のみに退化し、1脈がある。
  第2小花は護頴、内頴ともに薄膜質、護頴は中〜深裂し、その間からねじれて膝折れした25〜35mmの芒が出る。

生育環境と生態
Fig.10 棚田の草地斜面に群生するアブラススキ。(神戸市・棚田の土手 2008.11/11)
里山の雑木林に囲まれた棚田の土手に点々と群生が見られた。
ススキ優勢の草原で、下垂した花序をまばらに立ち上げている本種を眼にするとなぜかホッとする。
同所的に見られるものとしてはヒヨドリバナ、サワヒヨドリ、ノコンギク、イナカギク、ヨメナ、オオユウガギク、ノアザミ、ヨシノアザミ、オハラメアザミ、ミヤコアザミ
シラヤマギク、ケシロヨメナ、ヨモギ、オトコヨモギ、イヌヨモギ、タンナトリカブト、イブキトリカブト、センニンソウ、ボタンヅル、リンドウ、ツリガネニンジン、
ツルリンドウ、ツルニンジン、キキョウ、ホタルブクロ、ワレモコウ、ミツバツチグリ、キジムシロ、ヤブヘビイチゴ、ノイバラ類、キンミズヒキ、ダイコンソウ、ゲンノショウコ、
ヒメジソ、イヌコウジュ、ヤマハッカ、クルマバナ、ウツボグサ、レモンエゴマ、ヤブマメ、ツルマメ、ノアズキ、クララ、コカモメヅル、スズサイコ、ガガイモ、ススキ、
メガルカヤ、オガルカヤ、メリケンカルカヤ、オオアブラススキ、ヒメアブラススキ、アシボソ、ササガヤ、コメヒシバ、ノガリヤス、エノコログサ類、メヒシバ、アキメヒシバ、
チカラシバ、ノビル、ツルボ、ノカンゾウ、ヤブカンゾウ、ユウスゲ、ヤマジノホトトギスなどであり、草原性草本の部類に入る。


Fig.11 林縁に生育するアブラススキ。(兵庫県南あわじ市・溜池土堤の林縁 2010.12/2)
溜池と雑木林の接する土堤の林縁の草刈りされるネザサ群落中に点々と生育していた。
同所的にススキ、チガヤ、ヨモギ、コゴメスゲ、キツネノマゴ、ヘクソカズラなどが見られた。


最終更新日:2nd.Dec.2010

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