アオバスゲ Carex papillaticulmis  Ohwi
  林床の植物 カヤツリグサ科 スゲ属 ヒエスゲ節
Fig.1 (兵庫県丹波市・低山の林床 2010.5/8)
低山〜山地の林床や日陰の渓流畔に生育する多年草。
まばらに叢生し、匐枝はない。基部の鞘は淡色。
葉は常緑でやや硬く、幅4〜8mm、濃緑色。有花茎は高さ15〜45cm。
頂小穂は雄性、側小穂は雌性。苞は鞘を持ち、葉身は葉状で、小穂よりも短い。
雄小穂は長さ1〜2cm、線状披針形で、鱗片の一部に赤褐色を帯びる部分がある。
雌小穂はたがいに離れてつき2〜3個、長さ0.6〜2cm。
果胞は多数の細脈があり、有毛、長さ5.5〜6.5mm、嘴がながく、口部は鋭2歯となる。
痩果は長さ2.5〜3mm、良の中央は凹入しないか浅くくぼみ、頂部の付属体は直立する嘴状。

【メモ】 兵庫県下では丹波地方以北に生育している。
     丹波地方ではチャートを基岩とする場所に多く、オクノカンスゲやミヤマカンスゲ、ニシノホンモンジスゲと混生する場合が多い。
近縁種 : アオヒエスゲ、 サンインヒエスゲヒロバスゲ、 ヒエスゲ

■分布:本州(関東地方以西)、四国、九州
■生育環境:低山〜山地(シイ・カシ帯〜ブナ帯)の林床や日陰の渓流畔。
■果実期:5〜6月

Fig.2 全草標本。(兵庫県丹波市・低山の林床 2010.5/8)
  中型のスゲで常緑。前年度の葉は有花茎よりも長い。葉は濃緑色。

Fig.3 基部。(兵庫県丹波市・低山の林床 2010.5/8)
  基部の鞘は淡色で、ほぼ葉身はない。匐枝は生じない。

Fig.4 花序。(兵庫県丹波市・低山の林床 2010.5/8)
  頂小穂は雄性、赤褐色を帯びる。側小穂は雌性で、たがいに離れてつく。

Fig.5 雄小穂。(兵庫県丹波市・低山の林床 2010.5/8)
  雄小穂は線状披針形、赤褐色の部分がある。

Fig.6 雌小穂。(兵庫県丹波市・低山の林床 2010.5/8)
  雌小穂は花序軸に2〜3個側生する。苞は小穂よりも短く、葉身は細い葉状。
  果胞は光沢があり、細脈があって有毛、長い嘴をもつ。鱗片は果胞より短く、鋭頭、芒はない。
  画像の雌小穂は最上部の2花が雄性となっている。スゲ属ではこのような変異はよく見られる。

Fig.7 痩果。(兵庫県丹波市・低山の林床 2010.5/8)
  3稜あり、下方の稜間の面がすこしくぼんだ感じになる。痩果の上端はくびれて環状の付属物があり、嘴状となって終わる。

生育環境と生態
Fig.8 林床に生育するアオバスゲ。(兵庫県丹波市・低山の林床 2010.5/8)
渓流にそってつけられた山道の脇の林床に生育している。土壌は適湿で、褐色森林土がよく発達した場所だった。
周辺にはスゲ属ではニシノホンモンジスゲ、メアオスゲが見られ、ヤマジノホトトギス、ホソバガンクビソウ、サンショウソウ、ミヤマカタバミ、
ニシノヤマクワガタ、ナガバノタチツボスミレ、ベニシダなどが生育していた。

Fig.9 遊歩道脇に生育するアオバスゲ。(兵庫県篠山市・河畔の歩道脇 2011.5/16)
渓流に沿った遊歩道脇にアオバスゲが点在していた。
周辺ではダイセンスゲ、ニシノホンモンジスゲ、メアオスゲなどのスゲ類、ホガエリガヤ、ノガリヤス、タニギキョウ、キランソウ、ニシキゴロモ、
ナガバノタチツボスミレ、マキノスミレ、チゴユリ、ミヤマフユイチゴ、トウゴクシダ、シシガシラ、トウゲシバなどが生育している。



最終更新日:24th.Feb.2014

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