サンインヒエスゲ | Carex jubozanensis J.Oda et A.Tanaka | ||
林床・林縁の植物 兵庫県RDB Aランク種 |
カヤツリグサ科 スゲ属 ヒエスゲ節 |
Fig.1 (兵庫県但馬地方・温帯域の林縁 2017.6/9) 冷温帯のアカマツ林や乾燥した林床に生育する多年草。 まばらに生え、長い匍匐根茎がある。基部の鞘は淡色で、繊維状に細裂する。 葉は常緑でやや硬く、幅3〜8mm、緑色、縁はややざらつく。有花茎は高さ20〜40cm、平滑。 頂小穂は雄性、側小穂は雌性、時に雄雌性。苞は1〜2cnの鞘を持ち、葉身は刺状で、小穂よりも短い。 雄小穂は長さ2〜3cm、棍棒状、柄は長さ1〜3cm。雄鱗片は赤褐色で、短い芒がある。 雌小穂はたがいに離れてつき2〜3個、長さ1.5〜2cm、短柄があって直立し、3〜5列の雌花がつく。 雌鱗片は大部分が半透明で、稀に紫紅色の脈があり、短い芒がある。 果胞は雌鱗片よりも長く、狭卵形、長さ6〜8mm、幅2〜3mm、稜間に細脈があり、無毛、長い嘴があり、口部は2歯、熟すとやや開出する。 痩果はやや密に果胞に包まれ、倒卵形、長さ約3mm、花柱の基部は湾曲する。柱頭は3岐する。 【メモ】 兵庫県下ではこれまで1ヶ所で記録があるのみで、稀。 近縁種 : アオバスゲ、 アオヒエスゲ、 ヒロバスゲ、 ヒエスゲ ■分布:本州(福井〜広島県の日本海側) ■生育環境:冷温帯のアカマツ林や乾燥した林床など。 ■果実期:5〜6月 |
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↑Fig.2 全草標本。(兵庫県但馬地方・温帯域の林縁 2017.6/9) 中型のスゲで常緑。有花茎は高さ20〜40cm。葉は有花茎よりも短い。 |
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↑Fig.3 基部。(兵庫県但馬地方・温帯域の林縁 2017.6/9) 基部の鞘は淡色で、繊維状に細裂する。長い匍匐根茎がある。 |
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↑Fig.4 葉。(兵庫県但馬地方・温帯域の林縁 2017.6/9) 葉は常緑でやや硬く、幅3〜8mm、緑色、横断面はM字形。 |
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↑Fig.5 葉縁には上向きの小刺が並び、ざらつく。(兵庫県但馬地方・温帯域の林縁 2017.6/9) |
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↑Fig.6 有花茎。(兵庫県但馬地方・温帯域の林縁 2017.6/9) 有花茎は高さ20〜40cm、平滑。頂小穂は雄性。側小穂は雌性で2〜3個がたがいに離れてつき、時に雄雌性となる。 |
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↑Fig.7 雄小穂。(兵庫県但馬地方・温帯域の林縁 2017.6/9) 雄小穂は長さ2〜3cm、棍棒状、柄は長さ1〜3cm。雄鱗片は赤褐色で、短い芒がある。 |
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↑Fig.8 側小穂と苞。(兵庫県但馬地方・温帯域の林縁 2017.6/9) 苞は1〜2cnの鞘を持ち、葉身は刺状で、小穂よりも短い。雌小穂は長さ1.5〜2cm、短柄があって直立し、3〜5列の雌花がつく。 |
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↑Fig.9 雌小穂の拡大。(兵庫県但馬地方・温帯域の林縁 2017.6/9) 雌鱗片は大部分が半透明で、稀に紫紅色の脈があり、短い芒がある。 果胞は雌鱗片よりも長く、口部は2歯、熟すとやや開出する。柱頭は3岐する。 |
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↑Fig.10 果胞。1目盛=0.5mm。(兵庫県但馬地方・温帯域の林縁 2017.6/9) 果胞は狭卵形、長さ6〜8mm、幅2〜3mm、稜間に細脈があり、無毛、長い嘴があり、口部は2歯。 内部には痩果がやや密に包まれるが、まだ未熟だった。 |
生育環境と生態 |
Fig.11 温帯林の林縁に生育するサンインヒエスゲ。(兵庫県但馬地方・温帯域の林縁 2017.6/9) 過去に兵庫県内で唯一標本が採集されている場所を訪れると、山頂部の明るい乾いた登山道脇に、20個体ほどのサンインヒエスゲがまばらに生育していた。 山頂部北西面にはブナ林も見られるが、電波中継施設があって、その周辺は適度な伐採がなされて、明るい環境が保たれているようである。 登山道脇には刈り込まれたウリハダカエデ、タムシバ、リョウブ、ミズナラ、コナラ、アカマツ、ヤマハギが生育し、サンインヒエスゲは芝地にススキが混生 するような場所にナガバモミジイチゴの幼木、ニガナなどとともに生育していた。半日陰地ではコカンスゲ、ダイセンスゲ、ミヤマカンスゲが生育している。 |