アワボスゲ | Carex nipposinica Ohwi | ||
林縁・草地の植物 | カヤツリグサ科 スゲ属 ミヤマシラスゲ節 |
Fig.1 (神戸市・棚田の土手 2014.5/22) |
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Fig.2 (神戸市・棚田農道脇 2011.5/21) 平地〜低山の湿った林縁や草地に生育する多年草。 根茎は短く叢生する。基部の鞘は葉身が短く、濃赤色を帯びる。 葉は幅3〜7mm、黄緑色。有花茎は高さ30〜80cm。苞は葉身が発達し、鞘がある。 小穂は3〜4個つき、上部のものは接近し、下方のものは離れてつく。 頂小穂は雄性、長さ1.5〜3cm、幅約2mm。側小穂は雌性で長さ1.5〜3.5cm、幅約5mm。鱗片は雌雄ともに凹頭で芒がある。 雌鱗片は芒を含め果胞と同長またはやや長い。 果胞は広卵形で長さ3〜3.5mm、有脈で無毛、先は急に短嘴となり、口部は2歯、乾くと黒変する。 痩果は倒卵形で3稜あり、長さ約2mm。柱頭は3岐する。 【メモ】 もともと個体数の少ないスゲであり、草原環境の遷移によって減少傾向にあり、古くから管理されている草地の継続保全が必要である。 兵庫県版RDB 2010では記載されていないが、実情はBランクと同等と考えられ、自生地・個体数ともに少ない。 ヤワラスゲに似ており、混生していると紛らわしいが、果胞の嘴が1mm以下と短く、口部が2歯となる点で区別できる。 近縁種 : ヤワラスゲ、 ベンケイヤワラスゲ、 ウマスゲ ■分布:北海道、本州、四国、九州、対馬 ・ 朝鮮半島、台湾、中国 ■生育環境:平地〜低山の湿った林縁や草地など。 ■果実期:4〜6月 |
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↑Fig.3 全草標本。(神戸市・溜池の土堤 2010.6/4) 根茎は短く叢生する。苞葉は発達し、側小穂は下方のものは離れてつく。小穂も草体の色もヤワラスゲとよく似る。 |
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↑Fig.4 基部。(神戸市・溜池の土堤 2010.6/4) 基部の鞘には短い葉身があり、濃赤色を帯びる。 |
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↑Fig.5 雄小穂と雌小穂。(神戸市・溜池の土堤 2010.6/4) 頂小穂は雄性(雄小穂)で、線形、褐色を帯びる。側小穂は雌性(雌小穂)で上部のものはたがいに接してつく。 |
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↑Fig.6 雌小穂の拡大。(神戸市・溜池の土堤 2010.6/4) 果胞は広卵形でふくらみ、中軸に密につく。雌鱗片は突出した芒の部分だけが果胞から出て、果胞と同長またはやや長い。 |
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↑Fig.7 果胞。(神戸市・溜池の土堤 2010.6/4) 果胞は広卵形で長さ3〜3.5mm、有脈で無毛、先は急に短嘴となり、口部は2歯。 嘴の長さ1mm以下、口部が2歯となる点がヤワラスゲとの区別点となる。 |
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↑Fig.8 痩果。(神戸市・溜池の土堤 2010.6/4) 痩果は倒卵形で3稜あり、長さ約2mm。短嘴と基部の短い柄は曲がる。 |
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↑Fig.9 ヤワラスゲとの雌小穂の比較。(神戸市・休耕田 2013.5/19) アワボスゲはヤワラスゲよりも果胞の嘴が短く、アワボスゲでは1mm、ヤワラスゲは2mm前後。 また、アワボスゲの果胞は中軸に開出気味につくのに対し、ヤワラスゲでは明らかに斜開してつく。 このほか、平坦地ではアワボスゲの有花茎は直立する傾向が強いが、ヤワラスゲの有花茎は中心から放射状に斜開するものが多い。 |
生育環境と生態 |
Fig.10 溜池の土堤に生育するアワボスゲ。(神戸市・溜池の土堤 2010.6/4) 新たに造成された土堤の半裸地状の斜面に数株が生育していた。 造成の際に用土は周辺部にある休耕田のものが使われたようで、土堤には付近の休耕田に見られるものと同様な植生が見られた。 タチスゲ、ホナガヒメゴウソ、ヤワラスゲ、セイタカアワダチソウ、ヘビイチゴの個体数が多く、ゴウソ、アオスゲなどが混じる。 |
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Fig.11 棚田の農道脇に生育するアワボスゲ。(神戸市・棚田農道脇 2011.5/21) よく手入れされた草地環境が維持されている棚田の間を通る農道脇にかなりの個体が生育していた。 農道には踏み付けに強いヤマジスゲが雑草のごとく生育しており、アワボスゲの出現とともに自然度の高さを示している。 |
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Fig.12 草刈り管理された休耕田に生育するアワボスゲ。(神戸市・休耕田 2013.5/19) アワボスゲとともにヒメミコシガヤが同時に見られる保護管理休耕田に多数生育している。 水田雑草や畦畔雑草とともにゴウソ、ホナガヒメゴウソ、タチスゲ、ヤワラスゲなどのスゲ類が生育している。 |