ウマスゲ | Carex idzuroei Franch. et Sav. | カヤツリグサ科 スゲ属 ミヤマシラスゲ節 |
湿生植物 兵庫県RDB Aランク種 |
Fig.1 (兵庫県阪神地方・小河川 2015.6/1) |
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Fig.2 (兵庫県阪神地方・小河川 2015.6/1) 平野部の河川敷、湿地などに生育する多年草。 やや叢生し匍匐根茎があり、群生する。基部の鞘は錆褐色で一部が赤褐色。有花茎は高さ40〜60cm、上部はややざらつく。 葉は有花茎より短く、幅4〜8mm、軟質、縁は上向きにややざらつく。苞の葉身は葉状で長く、無柄。 頂小穂は雄性、線形、線形、長さ2〜4cm、長い柄がある。側小穂はふつう雌性で短柱形、長さ1.5〜3cm、無柄、下方のものはときに短い柄がある。 雄鱗片は淡褐色、鋭頭。雌鱗片は鮮緑色、鋭頭で鋸歯がある。 果胞は雌鱗片より長く、卵形、長さ10〜12mm、稜間に多数の脈があり、無毛、長い嘴があり、口部は2歯、完熟すると開出する。 痩果はゆるく果胞に包まれ、倒卵形、長さ3.5〜4mm、3稜形、頂部は細まり花柱の基部に接続する。柱頭は3岐する。染色体数2n=58。 ヤワラスゲ(C. transversa)はより小型で、頂小穂の柄は短く、果胞は小さく長さ4.5〜6mm、痩果は長さ2.5〜3mm。 アワボスゲ(C. nipposinica)は主に草地に生え、頂小穂は無柄、果胞は長さ3〜3.5mm、痩果は長さ2mm。 ベンケイヤワラスゲ(C. benkei)はヤワラスゲに似て、芒をのぞく雌鱗片と果胞がほぼ同長で芒が長い。紀伊半島、九州、対馬。 近似種 : ヤワラスゲ、 アワボスゲ、 ベンケイヤワラスゲ、 オニスゲ ■分布:本州(関東地方以西)、四国、九州 ・ 中国 ■生育環境:平野部の河川敷、湿地、湿った草地など。 ■果期:5〜7月 ■西宮市内での分布:西宮市内には分布していない。 |
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↑Fig.3 全草標本。(兵庫県阪神地方・小河川 2015.6/1) スゲ属では大型で、有花茎は高さ40〜60cm、やや叢生し匍匐根茎があり、葉は有花茎よりも短い。 |
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↑Fig.4 基部の鞘は錆褐色で一部が赤褐色。(兵庫県阪神地方・小河川 2015.6/1) 後に写っているのは昨年の枯れた葉が積もっているもので、枯葉を掻き分けないと基部の鞘は見れなかった。 |
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↑Fig.5 匍匐根茎。(兵庫県阪神地方・小河川 2015.6/1) 多数の匍匐根茎が地下を横走していた。 |
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↑Fig.6 葉。上:表面、下:裏面。(兵庫県阪神地方・小河川 2015.6/1) 葉幅4〜8mm、軟質、縁は上向きにややざらつく。横断面はM字状。 |
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↑Fig.7 有花茎上部。(兵庫県阪神地方・小河川 2015.6/1) 頂小穂は雄性で長い柄がある。側小穂はふつう雌性で、下方のものは互いに離れてつく。 苞の葉身は葉状で長く、無柄。有花茎上部は上向きにややざらつく。 | ||
↑Fig.8 頂小穂。(兵庫県阪神地方・小河川 2015.6/1) 頂小穂は雄性、線形、線形、長さ2〜4cm。雄鱗片は淡褐色、鋭頭。 |
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↑Fig.9 側小穂。(兵庫県阪神地方・小河川 2015.6/1) 側小穂はふつう雌性で短柱形、長さ1.5〜3cm、無柄、下方のものはときに短い柄がある。 完熟すると果胞は開出する。柱頭は3岐する。雌鱗片は果胞よりも短く、鮮緑色、鋭頭。 |
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↑Fig.10 果胞(左)と痩果(右)。(兵庫県阪神地方・小河川 2015.6/1) 果胞は卵形、長さ10〜12mm、稜間に多数の脈があり、無毛、長い嘴があり、口部は2歯。 痩果はゆるく果胞に包まれ、倒卵形、長さ3.5〜4mm、3稜形、頂部は細まり花柱の基部に接続する。 |
生育環境と生態 |
Fig.11 小河川内に生育するウマスゲ(右の草叢)。(兵庫県阪神地方・小河川 2015.6/1) 氾濫原由来の水田地帯へと続く谷津下端の小河川内に、1個体ながら大株となっているウマスゲが生育していた。 同所的にクサヨシ、カモジグサ、オオスズメノカタビラ、オヤブジラミ、キツネノボタン、ドクダミ、クルマバナなどが生育している。 小河川を遡って調べてみたがウマスゲは生育しておらず、ゴウソ、タチスゲ、ヤワラスゲなどが見られた。1個体のみが残存している。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 大井次三郎, 1982. ウマスゲ. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本1 単子葉類』 p.150. pl.127. 平凡社 勝山輝男. 2001. スゲ属ミヤマシラスゲ節. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 478〜480. 神奈川県立生命の星・地球博物館 勝山輝男, 2005 ミヤマシラスゲ節. 『日本のスゲ』 320〜330 文一総合出版 谷城勝弘, 2007 スゲ属ミヤマシラスゲ節. 『カヤツリグサ科入門図鑑』 59〜63. 全国農村教育協会 星野卓二・正木智美・西原真理子. 2011. ミヤマシラスゲ節. 『日本カヤツリグサ科植物図譜』 466〜481. 平凡社 村田源. 2004. ウマスゲ. 『近畿地方植物誌』 156. 大阪自然史センター 黒崎史平・松岡成久・高橋晃・高野温子・山本伸子・芳澤俊之 2009. ウマスゲ. 兵庫県産維管束植物11 カヤツリグサ科. 人と自然20:147. 兵庫県立・人と自然の博物館 最終更新日:6th.June.2015 |