イワヒメワラビ Hypolepis punctata  (Thunb.) Mett. ex Kuhn
  里山・草地・林縁のシダ コバノイシカグマ科 イワヒメワラビ属
Fig.1 (兵庫県篠山市・植林地林縁 2011.7/8)
低地〜山地、里山の草地、伐採跡地、向陽の林縁などに生育する。北方では夏緑性、南方では常緑性となるシダ。
根茎は長く匍匐し。黒色を帯び、密に毛があるが、古い部分は裸出し、径3〜4mm。
葉柄はわら色だが、基部は暗褐色で多少細くなり、匍匐枝を出し、長さ35〜50cm、毛の落ちた痕がざらつく。
葉身は長楕円形〜3角状長卵形、先端は鋭頭、基部が最も幅広く、長さ40〜70cm、幅40cmに達し、3〜4回羽状複生。
下部の羽片は3角状長楕円形、鋭頭、長さ30cm、幅20cmに達する。小羽片は3角状長楕円形、鋭頭〜鈍頭、基部はほぼ切形で柄がある。
2次小羽片は長楕円形、円頭、基部は切形で無柄。裂片は鋸歯縁、草質で緑色、葉脈は両面ともに不鮮明で有毛。
胞子嚢群は裂片の辺縁付近につき、苞膜はない。

【メモ】 本種はシカの忌避植物であり、シカの食害の激しい地域では殖えており、ときに大群生することがある。
近縁種 : セイタカイワヒメワラビ、 ヒメワラビミドリヒメワラビ

■分布:本州、四国、九州、沖縄 ・ 台湾、中国西南部、東南アジア、マレー半島、スマトラ
■生育環境:低地〜山地、里山の草地、伐採跡地、向陽の林縁など。

Fig.2 全草標本。(兵庫県篠山市・植林地林縁 2011.7/8)
  葉柄はわら色だが、基部は暗褐色で多少細くなる。
  葉身は長楕円形〜3角状長卵形、先端は鋭頭、基部が最も幅広く、長さ40〜70cm、幅40cmに達し、3〜4回羽状複生。

Fig.3 葉柄基部近く。(兵庫県篠山市・植林地林縁 2011.7/8)
  葉柄は下方では褐色から暗褐色を帯びていく。最初、毛があるが、脱落した後も痕が残り、ざらつく。

Fig.4 下方の羽片。(兵庫県篠山市・植林地林縁 2011.7/8)
  下部の羽片は3角状長楕円形、鋭頭。

Fig.5 羽片の一部拡大。(兵庫県篠山市・植林地林縁 2011.7/8)
  小羽片は3角状長楕円形、鋭頭〜鈍頭、基部はほぼ切形で柄がある。

Fig.6 第2小羽片の裏面。(兵庫県篠山市・植林地林縁 2011.7/8)
  2次小羽片は長楕円形、円頭、基部は切形で無柄。裂片は鋸歯縁、草質で緑色、葉脈は両面ともに不鮮明で有毛。
  胞子嚢群は裂片の辺縁付近につき、苞膜はない。

生育環境と生態
Fig.7 植林地林縁に生育するイワヒメワラビ。(兵庫県篠山市・植林地林縁 2011.7/8)
やや湿った植林地林縁のイワガネソウ群落の周縁部にイワヒメワラビが生育していた。
イワガネソウは日陰部分に高密度の群落をつくり、イワヒメワラビは林縁の明るい場所に見られた。
同所的にヤワラシダ、ドクダミ、カキドオシ、シンミズヒキ、シシウド、ヤブジラミ、ヤブニンジン、ヨシノアザミ、ツルカノコソウ、
ハグロソウ、ムロウテンナンショウ、ミヤマフユイチゴ、クサイチゴ、ラショウモンカズラ、ツヅラフジなどが生育する。

Fig.8 植林地の倒木により生じたギャプに群生するイワヒメワラビ。(兵庫県篠山市・植林地 2011.7/8)
シカの食害の激しい地域では、ときにイワヒメワラビが大群生することがある。
ここでは倒木により生じたギャップにシカの食害を免れて群生している。
同所的に生育するものはマツカゼソウ、タケニグサ、アケボノソウ、ニシノホンモンジスゲなどのシカの忌避・不嗜好植物ばかりであった。

Fig.9 休耕田の土手を占有するイワヒメワラビ。(兵庫県丹波市・休耕田の土手 2010.6/3)
シカの食害の激しい地域にある谷津奥の休耕田は、シカのヌタ場や採餌場となり、土手にイワヒメワラビの純群落が見られることがある。
ここではより多湿な場所ではシカの不嗜好植物であるイワヘゴやサワオグルマ、ヌマトラノオ、タカネマスクサなどが生育している。


最終更新日:20th.Aug.2011

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