オニヒカゲワラビ Deparia pterorachis  (Christ) M.Kato
  山地・林床のシダ イワデンダ科 ヘラシダ属
Fig.1 (兵庫県篠山市・植林地の林床 2014.6/3)
山地のやや陰湿な林下に生じる常緑性シダ。北方のものは夏緑性となることがある。
根茎は太く横走し、葉は混みあってつく。葉柄は長さ30〜60cm、緑色〜わら色、基部は汚褐色で鱗片がある。
鱗片はやや密につき、狭披針形、先端は細長くとがり、黒褐色〜茶褐色、膜質、縁に突起があり、宿存性。
葉身は広卵状3角形、長さ幅ともに40〜70cm、2回羽状複生〜3回羽状深裂。中軸、羽軸、小羽軸の裏面に小さな鱗片と毛がある。
下部の羽片は有柄。小羽片は狭長楕円形、基部は切形〜浅い心形で短い柄があり、羽状深裂し、鋭尖頭。
裂片は長楕円形、円頭〜鈍頭だが、鋭頭のこともあり、鋸歯縁、葉質は草質。
胞子嚢群は線形、小羽片の中軸寄りにつき、苞膜は薄い膜質、縁は細裂する。
近縁種 : ヒカゲワラビタンゴワラビ、 シロヤマシダ、 シマシロヤマシダ、 コウモウクジャク

■分布:本州、四国、九州 ・ 中国
■生育環境:山地のやや陰湿な林下など。

Fig.2 地上部標本。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2015.7/23)
  葉身は広卵状3角形、長さ幅ともに40〜70cm、2回羽状複生〜3回羽状深裂。下部の羽片は有柄。

Fig.3 葉柄基部の鱗片。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2015.7/23)
  鱗片はやや密につき、狭披針形、先端は細長くとがり、黒褐色〜茶褐色、膜質、縁に突起があり、宿存性で、圧着して付いていた。

Fig.4 中軸中部裏の鱗片。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2015.7/23)
  まばらについていて、基部のものよりも小さく、黒褐色だった。

Fig.5 小羽片。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2015.7/23)
  小羽片は狭長楕円形、基部は切形〜浅い心形で短い柄があり、羽状深裂し、鋭尖頭。
  ときに同所的に見られるタンゴワラビとは、裂片の間が逆長3角状に隙間が空くことにより区別できる。

Fig.6 小羽片の基部と短柄。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2015.7/23)

Fig.7 小羽片の裏面。(兵庫県朝来市・植林地の林床 2011.6/19)
  裂片は長楕円形、円頭〜鈍頭だが、鋭頭のこともあり、鋸歯縁。
  胞子嚢群(ソーラス)は線形、小羽片の中軸寄りにつき、下端が中肋に接するものも多い。

Fig.8 羽軸、小羽軸の裏面には小さな鱗片と毛がある。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2015.7/23)

Fig.9 苞膜の縁は細裂する。(兵庫県朝来市・植林地の林床 2011.6/19)

生育環境と生態
Fig.10 植林地の林床に生育するオニヒカゲワラビ。(兵庫県朝来市・植林地の林床 2011.6/19)
被植の少ない湿った薄暗い植林地の林床に生育していた。
周囲にはヤワラシダ、ジュウモンジシダ、リョウメンシダ、ベニシダ、ヤマヤブソテツ、ホソバシケシダ、シケチシダ、コバノイシカグマなどのシダ類が多く、
ミヤマフユイチゴ、ミヤマカタバミ、ジャノヒゲ、チヂミザサ、チャノキ、ツタウルシ、ナガバモミジイチゴなどが生育していた。

Fig.11 植林地の林縁に生育するオニヒカゲワラビ。(兵庫県篠山市・植林地の林縁 2015.9/10)
かつては植林地の林床であった場所に林道が開鑿されて、オニヒカゲワラビがその林縁部に出てきていた。
林床部にはトウゲシバ、クラマゴケ、ミゾシダ、ゲジゲジシダ、ハリガネワラビ、ヒメワラビ、ベニシダ、ヤマヤブソテツ、イワガネゼンマイ、イワガネソウ、
イノデ、イノデモドキ、サイゴクイノデ、ジュウモンジシダ、リョウメンシダ、ナンゴクナライシダ、キヨスミヒメワラビ、ハカタシダ、フモトシダ、
コバノイシカグマ、イワヒメワラビ、オオバノイノモトソウ、キジノオシダ、シシガシラ、ヒロハイヌワラビ、ヤマイヌワラビ、カラクサイヌワラビ、
ホソバイヌワラビ、ホソバシケシダ、シケシダ、シケチシダなど多くのシダ類が生育し、小低木のチャノキ、ナガバモミジイチゴ、アオキ、クサギ、ミヤマシキミ、
コアジサイ、ヒサカキなどがまばらに見られ、林床から林縁にかけてツル性のミヤマフユイチゴ、ツタウルシ、テイカカズラ、イワガラミ、ノブドウなどが、
草本ではナガバジャノヒゲ、チヂミザサ、ササクサ、アシボソ、ミヤマカンスゲ、メアオスゲ、ナキリスゲ、ヒカゲスゲ、ヒゴクサ、ヤマジノホトトギス、ノギラン、
シャガ、ミズヒキ、ミヤマカタバミ、サワハコベ、ミヤマハコベ、シハイスミレ、タチツボスミレ、ナガバノタチツボスミレ、サワオトギリ、セントウソウ、
ヒカゲミツバ、ヤブジラミ、ドクダミ、ヌスビトハギ、フジカンゾウ、イノコヅチ、コナスビ、ハシカグサ、オカトラノオ、フデリンドウ、ハグロソウ、マツカゼソウ、
ハダカホオズキ、ヤマホロシ、ヒヨドリジョウゴ、ホタルブクロ、キランソウ、アキノタムラソウ、トウゴクシソバタツナミ、ツルニガクサ、アキチョウジ、
イヌコウジュ、ミカエリソウ、オトコエシ、ノコンギク、キクバヤマボクチ、シュウブンソウ、ヒメガンクビソウ、ヒヨドリバナなどが生育していた。


最終更新日:16th.Nov.2014

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