オオモミジガサ Miricacalia makinoana
         (Yatabe) Kitam.
  山地・林床の植物 キク科 オオモミジガサ属
Fig.1 (兵庫県但馬地方・谷筋の林床 2015.7/19)

深山の適湿な林床に生育する多年草。茎は高さ55〜80cm。
葉はふつう3枚つき、下部の葉は大きく、葉柄は長さ10〜26cm、楯状につく。
葉身は円形で幅25〜33cm、基部は深く心形、掌状に9〜12中裂し、両面に縮れた毛がある。
茎中部の葉の葉柄は3〜12cm、葉身は長さ14〜23cm。花序は総状花序で、頭花が下向きにつく。
花冠は黄色を帯びる。総苞は鐘形、基部に6mmほどの苞が6〜7個あり、開花時に反り返る。総苞片は1列で多数、長さ15mm。
小花は20個内外。花柱の枝の先に短毛がある。花糸の上部はふくらむ。痩果は長さ7〜8mm。冠毛は汚褐色を帯び、長さ約10mm。

モミジガサなどのキク科コウモリソウ属の草本とは総状花序をつくることで容易に区別できる。
近縁種 : モミジガサ、 テバコモミジガサ、 オオカニコウモリ、 ミヤマコウモリソウ、 ウスゲタマブキ

■分布:本州、四国、九州
■生育環境:深山の適湿な林床など。
■花期:7〜9月

Fig.2 茎下方の葉。(兵庫県但馬地方・谷筋の林床 2015.7/19)
  葉はふつう3枚つき、下部の葉は大きく、葉柄は長さ10〜26cm、楯状につく。
  葉身は円形で幅25〜33cm、基部は深く心形、掌状に9〜12中裂し、両面に縮れた毛がある。

Fig.3 裂片の縁には粗い不揃いな鋸歯がある。(兵庫県但馬地方・谷筋の林床 2015.7/19)

Fig.4 葉柄基部。(兵庫県但馬地方・谷筋の林床 2015.7/19)
  葉柄基部は短い鞘となり、口部は開いている。茎下部は無毛だが、有毛のものもあるようだ。

Fig.5 花序。(兵庫県但馬地方・谷筋の林床 2015.7/19)
  頭花は総状花序に下向きにつく。

Fig.6 総苞。(兵庫県但馬地方・谷筋の林床 2015.7/19)
  総苞は鐘形、基部に6mmほどの苞が6〜7個あり、開花時に反り返る。総苞片は1列で多数、長さ15mm。
  花序の中軸や花梗、総苞片には毛が多い。

Fig.7 雄性期の頭花。(兵庫県但馬地方・谷筋の林床 2015.7/19)
  雄性先熟で、小花は全て筒状花で捻性があり、20個内外。花披は黄色を帯び、花糸の上部はふくらむ。

Fig.8 雌性期の頭花。(兵庫県但馬地方・谷筋の林床 2015.7/19)
  柱頭が突き出て雌性期に入ると、花披は褐色に変わり、小花の間から冠毛が伸び始める。
  画像では花粉を漁りにきた小さな甲虫が写っていた。

Fig.9 幼植物。(兵庫県但馬地方・谷筋の林床 2015.7/19)
  成熟個体の周辺に見られた当年苗で、1個の双葉がついていた。
  10月に再訪したが、開花個体の花茎はシカの食害にあったのか消失しており、痩果と冠毛の観察は今後の課題となった。

Fig.10 早春の萌芽。(兵庫県但馬地方・谷筋の林床 2015.4/26)
  ヤブレガサやヤブレガサモドキのようなスマートさはなく、先の丸い少しぼってりとした傘状。

Fig.11 ニシノヤマタイミンガサとの葉身の比較。(兵庫県但馬地方)
  オオモミジガサの未成熟個体はニシノヤマタイミンガサの葉とよく似ている。
  オオモミジガサの葉身基部の切れ込みは葉柄まで及ばず、葉身基部の裂片間の角度は狭い。
  ニシノヤマタイミンガサの葉身基部の切れ込みは葉柄まで達し、葉身基部の裂片間の角度は広い。

生育環境と生態
Fig.12 深山の谷筋の湿った林床に生育するオオモミジガサ。(兵庫県但馬地方・谷筋の林床 2015.7/19)
遅くまで雪の残る多湿な谷筋の斜面にオオモミジガサが多数生育していた。
多くの場所はチシマザサが優占するが、細流脇の急斜面や岩上には豊富な植生がみられた。
同所的にカンスゲ、ヌカボシソウ、サンインネコノメ、マルバネコノメソウ、ウワバミソウ、ヤマアジサイ、クサアジサイ、ギンバイソウ、
サンカヨウ、イケマ、ヒナノウスツボ、タニタデ、ミズタビラコ、ミゾホオズキ、タイミンガサ、モミジガサ、オタカラコウ、リョウメンシダ、
ジュウモンジシダ、ミゾシダ、シケシダ、キヨタキシダ、ヒロハイヌワラビ、ウスゲミヤマシケシダなどが生育していた。


最終更新日:24th.Sep.2016

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