オオバショリマ | Thelypteris quelpaertensis (Christ) Ching | ||
山地・林縁・林床のシダ 兵庫県RDB Bランク種 | ヒメシダ科 ヒメシダ属 |
Fig.1 (兵庫県但馬地方・歩道脇 2014.10/9) 山地の林縁から林床に生育する夏緑性シダ。近畿地方以西では高所に出現する。 根茎は短く、横走か斜上し、葉を叢生し、鱗片がある。 葉柄は長さ20〜40cm、わら色で、密に鱗片がある。 根茎と葉柄基部の鱗片は3角状長楕円形、先端は尾状、長さ約15mm、幅約5mm、膜質で黄褐色、ほぼ全縁で辺縁に毛がある。 葉身は倒披針形、鋭尖頭、下部の羽片はしだいに小さくなり、最下羽片は耳状、長さ50〜80cm、幅12〜25cm、中軸には幅の狭い鱗片が密につく。 羽片は三角状線形、基部は切形で無柄、羽軸近くまで深く切れ込む。裂片は長楕円形、円頭〜鈍頭、辺縁はわずかに切れ込む。 葉質はやわらかい紙質、緑色から暗緑色、葉面は無毛。葉脈は遊離、側脈は分岐し、先端は葉縁に達し、まばらに単細胞の毛をつける。 ソーラスは裂片の辺縁近くにつき、径約0.8mm、苞膜は腎円形で縁はやや不斉。 胞子表面はほぼ平滑でこぶ状突起はなく、細かい刺があり、淡緑色。染色体数はn=34,36の2倍体。 ホソバショリマ(T. beddomei)は根茎が長く横走し、裂片の側脈は分岐しない。静岡、中国山地西部、四国、九州。 ミヤマシケシダ(Deparia pycnosora)は裂片の側脈は分岐せず、包膜は長楕円形〜鉤形で大きい。 ミヤマシケシダに近縁のウスゲミヤマシケシダ(D. mucilagina)やハクモウイノデ(D. jiulungensis var.albosquamata )についても同様である。 クサソテツ(Matteuccia struthiopteris)の小型の葉に似るが、葉には2型があり、胞子は胞子葉につく。 近縁種 : ホソバショリマ、 ミヤマシケシダ、 ウスゲミヤマシケシダ、 ハクモウイノデ、 クサソテツ ■分布:北海道、本州、四国、屋久島 ・ 朝鮮半島、千島、カムチャッカ、アリューシャン列島 ■生育環境:山地の林縁から林床など。 |
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↑Fig.2 地上部標本。(兵庫県但馬地方・歩道脇 2014.10/9) 葉身は倒披針形、鋭尖頭、下部の羽片はしだいに小さくなる。 葉質はやわらかい紙質、緑色から暗緑色、葉面は無毛。葉の姿は小型のクサソテツに似る。 |
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↑Fig.3 葉の下部。(兵庫県但馬地方・歩道脇 2014.10/9) 最下羽片は小さく耳状。葉柄はわら色。 |
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↑Fig.4 葉柄基部。(兵庫県但馬地方・歩道脇 2014.10/9) 葉柄基部には鱗片が密につくが、多くが脱落していた。 基部の鱗片は3角状長楕円形、先端は尾状、膜質で黄褐色、ほぼ全縁で辺縁に毛がある。 |
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↑Fig.5 葉柄上部の鱗片。(兵庫県但馬地方・歩道脇 2014.10/9) 葉柄基部のものより少し小さいが、形状は同様。 |
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↑Fig.6 中軸中部の鱗片。(兵庫県但馬地方・歩道脇 2014.10/9) 中軸にはやや小型で、幅の狭い鱗片が密につく。 |
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↑Fig.7 羽片。(兵庫県但馬地方・歩道脇 2014.10/9) 羽片は三角状線形、基部は切形で無柄、羽軸近くまで深く切れ込む。 |
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↑Fig.8 裂片。(兵庫県但馬地方・歩道脇 2014.10/9) 裂片は長楕円形、円頭〜鈍頭、辺縁はわずかに切れ込む。側脈は分岐し、先端は葉縁に達する。 |
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↑Fig.9 羽片裏面。(兵庫県但馬地方・歩道脇 2014.10/9) ソーラスは裂片の辺縁近くにつく。 |
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↑Fig.10 ソーラス。(兵庫県但馬地方・歩道脇 2014.10/9) ソーラスはふつう径約0.8mmだが、この個体のものは発達が悪く、やや小さい。苞膜は腎円形で縁はやや不斉。 |
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↑Fig.11 新葉を展開した個体。(兵庫県但馬地方・歩道脇 2014.6/25) |
生育環境と生態 |
Fig.12 歩道脇に生育するオオバショリマ。(兵庫県但馬地方・歩道脇 2014.10/9) 歩道脇のチシマザサ群落の縁にやや小型の個体が点在している。 シカの食害があるため大型の個体は見られず、周辺のシラネワラビやヤマソテツも同様である。 同所的にウスノキ、ツルアジサイ幼木、ニョイスミレ、オオバノヨツバムグラ、アシボソなどが見られた。 |
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Fig.13 湿地の周縁部に生育するオオバショリマ。(兵庫県但馬地方・湿地 2015.8/16) 湿地周縁部のオオミズゴケ群落中にアブラガヤ、マイヅルソウ、ノガリヤスなどとともに点在していた。 |