ヘビノネゴザ | Athyrium yokoscense (Franch. et Savat.) Christ. |
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山地・林縁・林床・鉱山跡のシダ | イワデンダ科 メシダ属 |
Fig.1 (西宮市・河川脇岩壁下部 2010.6/11) 丘陵〜山地の林縁・林床や鉱山跡地、重金属の蓄積した場所に生育する中型の夏緑性シダ。 根茎は短く斜上または直立し、葉を束生する。葉は長さ30〜80cm。葉質は硬く、薄い革質、裏面の細脈は明瞭。 葉柄は葉身より短いか同長で、葉柄基部は少しふくらみ、鱗片を密生する。 鱗片は披針形〜広披針形、暗褐色〜赤褐色で、縁は薄く縁取られ、葉柄の上部に向かうにつれて細くなる。 葉身は披針形〜長楕円状披針形、長さ20〜40cm、幅10〜15cm、1回(単)羽状腹葉、鋭尖頭、下部はしばしばやや狭くなる。 羽片は無柄で披針形、鋭尖頭、さらに羽裂し、裂片は長楕円形、鋭頭、基部は羽軸に流れて合着し、縁には鋭鋸歯がある。 胞子嚢群(ソーラス)は楕円形〜かぎ形、中脈と縁の中間またはやや縁寄りにつく。苞膜は長楕円形またはかぎ形にまがり、全縁。 【メモ】 本種は古くはカナヤマシダやカナクサと呼ばれ、鉱脈探査の指標種とされていたとされている。 鉱山跡地など、重金属類が蓄積された他の植物が進入できないような場所では群生していることがある。 重金属類を蓄積することで有名だが、近年植物体の各部位によって、蓄積される金属の種類も異なる傾向があることが明らかになっている。 本種は変異に富み、ヒロハヘビノネゴザ、ウスバヘビノネゴザなど、いくつかの品種があるが、区別は難しい。 近縁種 : イヌワラビ、 ホソバイヌワラビ ■分布:北海道、本州、四国、九州 ・ 朝鮮半島、中国、シベリア ■生育環境:丘陵から山地の林縁・林床、鉱山跡地など。 |
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↑Fig.2 地上部標本。(西宮市・河川脇岩壁下部 2010.6/11) 葉質は硬く、薄い革質。葉身は1回(単)羽状腹葉、鋭尖頭。羽片は無柄で、鋭尖頭、さらに羽裂する。 |
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↑Fig.3 葉柄基部の鱗片。(西宮市・河川脇岩壁下部 2010.6/11) 画像の鱗片は湾曲して判りにくいが、披針形。色の薄い縁取りがある。 |
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↑Fig.4 最下羽片。(西宮市・河川脇岩壁下部 2010.6/11) この標本の最下羽片は1つ上の羽片よりも少し小さくなっている。 羽片は無柄で、披針形〜広披針形、羽軸基部と羽軸と葉軸の分岐部は赤味を帯びる。 |
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↑Fig.5 裂片。(西宮市・河川脇岩壁下部 2010.6/11) 裂片は長楕円形、鋭頭、基部は羽軸に流れて合着し、縁には鋭鋸歯がある。 |
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↑Fig.6 羽片裏面。(西宮市・河川脇岩壁下部 2010.6/11) 裏面はやや白色を帯び、脈は明瞭。 胞子嚢群(ソーラス)は楕円形〜かぎ形、中脈と縁の中間またはやや縁寄りにつく。 |
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↑Fig.7 苞膜は全縁。(西宮市・河川脇岩壁下部 2010.6/11) |
生育環境と生態 |
Fig.8 河川脇の岩壁下部に生育するヘビノネゴザ。(西宮市・河川脇岩壁下部 2010.6/11) 樹林が被う岩壁の下部に大きな株が点在し、日陰となる岩壁上には小さな個体が散在していた。 岩壁とその周辺にはキヨスミギボウシ、シライトソウ、まばらなネザサ、ヒメカンスゲ、アリマイトスゲ、イヌシダ、ヘクソカズラ、 スイカズラ、ボタンヅルなどが見られ、日陰となる岩壁ではシライトソウの見事な群落が発達している。 |
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Fig.9 棚田のイノシシ除けの柵近くに生育するヘビノネゴザ。(西宮市・棚田 2011.6/23) ヘビノネゴザは古い柵や農小屋の周囲に小群生していることがある。 ここではかつてはトタン板が使われていたようで、その残骸が散乱しており、トタン板から出た亜鉛の成分が土中に浸透していると見られる。 古い農小屋周りにも見られるのも同様な理由によるものだろう。 |
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Fig.10 社殿裏の石垣に生育するヘビノネゴザ。(兵庫県篠山市・社寺境内 2011.7/8) ヘビノネゴザの生育箇所は、社殿の屋根から雨水のしたたる場所である。 やはりここでもトタン板から出た亜鉛の成分によってヘビノネゴザくらいしか生育できないのであろう。 石垣のさらに上の斜面ではヘビノネゴザに換わって、キジノオシダ、イワガネソウ、イノデ、コバノイシカグマ、トウゴクシダなど、 様々な種類のシダが生育している。 |