ホソバイヌワラビ | Athyrium iseanum Rosenst. | ||
山地・林床のシダ | イワデンダ科 メシダ属 |
Fig.1 (神戸市・林床 2011.7/11) |
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Fig.2 (兵庫県篠山市・植林地林床 2013.5/22) 低地〜山地の湿った林床などに生育する中型の夏緑性シダ。 根茎は塊状で直立〜斜上し、葉を叢生し、やや2形となる。 春に出る葉はやや広がってつき、胞子をつけず、夏に出る葉は直立し、胞子嚢群をつける。 葉柄はわら色か、さまざまな程度に紫色を帯びることもあり、長さ15〜30cm、基部に鱗片がある。 鱗片は狭披針形、長さ4〜7mm、幅0.3〜0.8mm、褐色で膜質、全縁。 葉身は卵形〜長楕円形、2回羽状複生〜3回羽状全裂、尾状鋭尖頭、長さ50cmを超えるものもあり、やわらかい草質。 羽片は披針形、長さ18cm、幅8.5cmに達し、長さ2〜7mmの柄がある。羽軸はほぼ紫色で、下面に毛がある。 小羽片は狭楕円形〜狭卵形、鈍頭〜鋭頭、基部前側に耳が出て、左右非相称。裂片の縁は鋭鋸歯がある。 胞子嚢群は小羽片のやや中軸寄りつき、苞膜は半月形か鉤形、ほぼ全縁〜波状縁。染色体数はn=80の4倍体。 変種のトガリバイヌワラビ(var. angustisectum)は裂片の幅が狭く、鋭尖頭、やや間遠につく。 ミヤコイヌワラビ(A. frangulum)は葉面に光沢があり、中軸は赤味を帯び、羽片が中軸に斜めにつき、小羽片が左右相称。 ヤマイヌワラビ(A. vidalii)は羽軸表面と小羽片中肋の軟刺毛がなく、裂片は丸味を帯びる。苞膜は不規則な歯牙縁となる。 サトメシダ(A. deltoidofrons)は葉柄が緑色、小羽片が左右相称、羽軸表面と小羽片中肋の軟刺毛がなく、苞膜の縁は細裂する。 雑種に以下のものがある。 ハツキイヌワラビ(A. × pusedo-iseanum) ホソバイヌワラビとタニイヌワラビの雑種。 ヘビホソバイヌワラビ(A. × inouei) ホソバイヌワラビとヘビノネゴザの雑種。 ニセハツキイヌワラビ(A. × inabaense) ホソバイヌワラビとサキモリイヌワラビの雑種。 イヌシマイヌワラビ(A. × yakumonticola) ホソバイヌワラビとシマイヌワラビの雑種。 ヤマホソバイヌワラビ(A. × pseudo-spinascens) ホソバイヌワラビとヤマイヌワラビの雑種。 ヒサツイヌワラビ(A. × hisatsuanum) ホソバイヌワラビとカラクサイヌワラビの雑種。 ユノツルイヌワラビ(A. × kidoanum) ホソバイヌワラビとヒロハイヌワラビの雑種。 以上の雑種のうちハツキ、ヤマホソボ、ユノツル3種は兵庫県からの記録がある。 近縁種 : トガリバイヌワラビ、 イヌワラビ、 ヤマイヌワラビ、 ヒロハイヌワラビ、 カラクサイヌワラビ、 ミヤコイヌワラビ、 タニイヌワラビ、 サキモリイヌワラビ、 アオグキイヌワラビ、 ヘビノネゴザ、 サトメシダ ■分布:本州、四国、九州、屋久島 ・ 朝鮮半島、台湾、中国 ■生育環境:低地〜山地の湿った林床など。 |
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↑Fig.3 地上部標本。(神戸市・林道脇斜面 2011.8/13) 葉身は卵形〜長楕円形、2回羽状複生〜3回羽状全裂、尾状鋭尖頭、やわらかい草質。 羽片は披針形、短い柄がある。中軸や羽軸は紫色を帯びている。 |
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↑Fig.4 葉柄の鱗片。(神戸市・林道脇斜面 2011.8/13) 葉柄の鱗片はごくまばらにつき、狭披針形、褐色で膜質、全縁。 |
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↑Fig.5 最下羽片。(神戸市・林道脇斜面 2011.8/13) 下側第1小羽片はやや小さくなる。小羽片は左右非相称。 |
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↑Fig.6 小羽片。(神戸市・林道脇斜面 2011.8/13) 羽軸表面の小羽片分岐直前に軟刺毛がある。 小羽片は中〜深裂し、裂片には鋭鋸歯がある。小羽軸表面には軟刺毛が並ぶ。 小羽片基部前側に耳が出て、小羽片は左右非相称となる。 |
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↑Fig.7 羽片裏面。(神戸市・林道脇斜面 2011.8/13) 羽軸裏面には微細毛が生える。胞子嚢群は小羽片のやや中軸寄りつき、苞膜は半月形か鉤形。 |
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↑Fig.8 苞膜はほぼ全縁〜波状縁。(神戸市・林道脇斜面 2011.8/13) |
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↑Fig.9 成熟した葉は秋に葉先近くの中軸に無性芽をつくる。(神戸市・植林地林床 2015.10/18) |
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↑Fig.10 新葉を展開した若い個体。(神戸市・林道脇斜面 2013.5/9) |
生育環境と生態 |
Fig.11 沢源頭部の林床のシダ群落中に生育するホソバイヌワラビ。(神戸市・林床 2011.7/11) 沢の源頭部にあるミヤコザサの被植の少ない多湿な平坦地にヤマイヌワラビ、ハクモウイノデ、ヌリワラビ、キヨタキシダなどとともに生育している。 |
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Fig.12 林道脇の日陰の斜面に生育するホソバイヌワラビ。(神戸市・林道脇斜面 2011.8/13) イノデ、ベニシダ、ヤマヤブソテツ、スギナ、チヂミザサ、ヤブヘビイチゴ、ナガバハエドクソウ、ツルリンドウ、ヤマトウバナなどとともに生育している。 |