ヒロハイヌワラビ | Athyrium wardii (Hook.) Makino | ||
里山・林縁・林床・道端のシダ | イワデンダ科 メシダ属 |
Fig.1 (兵庫県篠山市・社寺林 2013.5/13) 低地〜山地、里山の道端、棚田土手、林縁、林下などに普通な中型の夏緑性シダ。 根茎は直立〜斜上し、葉を叢生する。葉柄はふつう葉身より短く、中軸や羽軸とともに紅紫色を帯び、基部は暗褐色で鱗片がある。 葉柄基部と根茎の鱗片は線形〜披針形、長い鋭尖頭、全縁、長さ6〜12mm、基部で幅約1mm、茶褐色だが、中央部が濃くなることがある。 葉身は3角形〜広卵形、長さ25〜35cm、幅20〜30cm、基部がもっとも広く2回羽状複葉だが、上方は急に狭くなって単羽状となる。 羽片は披針形、長鋭尖頭、柄は明瞭で、下部羽片のもので長さ1cmに達し、羽軸の裏面には微細毛がある。 小羽片は鈍頭、基部は広いくさび形で前側は耳状に突出し、無柄か、大きいものには短い柄があり、鋸歯縁から浅く羽裂、やや厚い草質、下部裏面に微毛がある。 胞子嚢群は小羽片の中軸寄りつき、苞膜は三日月形か、まれに背中合わせのものも混じり、全縁から不規則に浅裂する。 変種のルリデライヌワラビ(var. inadae)は葉身の先が突然に急に狭まり、頂羽片があるように見え、小羽片は混みあってつき、鈍頭〜円頭、基部は羽軸に沿着する。 また、葉の各軸が緑色で紫色を帯びないものをミドリヒロハイヌワラビ(f. chloropodum)とすることがある。 近縁種 : イヌワラビ、 ヤマイヌワラビ、 ホソバイヌワラビ、 カラクサイヌワラビ、 ミヤコイヌワラビ、 タニイヌワラビ、 サキモリイヌワラビ、 アオグキイヌワラビ、 ヘビノネゴザ、 サトメシダ ■分布:北海道、本州、四国、九州、沖縄 ・ 朝鮮南部、台湾、中国、インドシナ ■生育環境:低地から山地の道端、草地土手、林縁など。 |
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↑Fig.2 地上部標本。(兵庫県篠山市・林縁斜面 2011.7/8) 葉は草質、葉身上部は頂羽片状となって、先は急に狭くなってとがる。葉柄や葉軸は紅紫色を帯びている。 葉身は3角形〜広卵形で、基部がもっとも幅広く2回羽状複葉。 |
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↑Fig.3 葉柄。(兵庫県篠山市・林縁斜面 2011.7/8) 葉柄は紅紫色を帯びる。この個体では葉柄にはほとんど鱗片が見られなかった。 |
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↑Fig.4 葉身先端部。(兵庫県篠山市・林縁斜面 2011.7/8) 頂羽片状となった葉身先端部。鋭尖頭。 |
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↑Fig.5 葉身基部付近の羽片。(兵庫県篠山市・林縁斜面 2011.7/8) 羽片には明瞭な柄がある。最下羽片の基部の裂片は欠如しているものが多い。 |
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↑Fig.6 小羽片。(兵庫県篠山市・林縁斜面 2011.7/8) 小羽片は鈍頭、基部は広いくさび形で前側は耳状に突出し、無柄または短い柄があり、鋸歯縁から浅く羽裂、やや厚い草質。 |
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↑Fig.7 羽片裏面。(兵庫県篠山市・林縁斜面 2011.7/8) 胞子嚢群(ソーラス)は小羽片の中軸寄りにつき、苞膜は三日月形か、まれに背中合わせのものも混じる。 |
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↑Fig.8 小羽片裏面。(兵庫県篠山市・林縁斜面 2011.7/8) 羽軸や裏面には微細毛が生える。 |
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↑Fig.9 胞子嚢群(ソーラス)。(兵庫県篠山市・林縁斜面 2011.7/8) 苞膜は全縁から不規則に浅裂する。 |
生育環境と生態 |
Fig.10 社寺裏手の林縁斜面に生育するヒロハイヌワラビ。(兵庫県篠山市・林縁斜面 2011.7/8) 林縁斜面のネザサの生育の見られない半日陰の草地斜面にヒロハイヌワラビが生育していた。 斜面はヤワラシダ、テイカカズラ、ユキノシタ、ミヤマフユイチゴが多く、ヒロハイヌワラビはイノコヅチ、トラノオシダ、イヌシダなどとともに生育している。 |