イヌワラビ | Athyrium niponicum (Mett.) Hance. | ||
里山・林縁・土手・道端のシダ | イワデンダ科 メシダ属 |
Fig.1 (西宮市・里山の石垣 2010.5/13) 低地〜山地、里山の道端、棚田土手、林縁などに普通な中型の夏緑性シダ。 根茎は地中を横走し、赤褐色で披針形の鱗片を持ち、やや混みあって葉を出す。 葉は長い柄があり、長さ約30〜50cmでやわらかく、基部に披針形で脱落性、茶褐色の鱗片がつく。 葉身は草質、長さ30〜50cm、幅15〜25cm、2回羽状腹生〜3回羽状深裂、卵形〜広卵形または楕円形で、先は急に狭くなってとがる。 葉身の上部は頂羽片状となり、葉軸や羽軸はふつう紅紫色を帯びる。 羽片は披針形、鋭尖頭、基部はくさび形で柄があり、さらに羽裂する。小羽片は長楕円形、鋭頭、細鋸歯がある。 胞子嚢群(ソーラス)は中脈と縁の中間または中脈寄りに密集し、苞膜は線形、かぎ形、馬蹄形と変化が多い。 品種に葉の表面の羽軸に沿って白色または紅白色の斑が出るニシキシダ(f. metallicum)がある。 近縁種 : ヤマイヌワラビ、 ホソバイヌワラビ、 カラクサイヌワラビ、 ミヤコイヌワラビ、 タニイヌワラビ、 ヒロハイヌワラビ サキモリイヌワラビ、 アオグキイヌワラビ、 ヘビノネゴザ、 サトメシダ ■分布:北海道、本州、四国、九州、沖縄 ・ 朝鮮南部、台湾、中国、インドシナ ■生育環境:低地から山地の道端、草地土手、林縁など。 |
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↑Fig.2 地上部標本。(西宮市・棚田の土手 2009.12/4) 葉はやわらかい草質、葉身上部は頂羽片状となって、先は急に狭くなってとがる。 葉柄や葉軸は紅紫色を帯びている。 |
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↑Fig.3 葉柄基部の鱗片。(西宮市・棚田の土手 2009.12/4) 鱗片は披針形で茶褐色。脱落しやすく、葉柄の大部分では鱗片があまり見られなかった。 |
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↑Fig.4 葉身先端部。(西宮市・棚田の土手 2009.12/4) 頂羽片状となった葉身先端部。鋭尖頭。 |
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↑Fig.5 葉身基部付近の羽片。(西宮市・棚田の土手 2009.12/4) 羽片には明瞭な柄がある。最下羽片の基部下側の第1小羽片は欠如しているものが多い。 |
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↑Fig.6 小羽片。(西宮市・棚田の土手 2009.12/4) 小羽片は長楕円形、鋭頭、細鋸歯がある。 |
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↑Fig.7 羽片裏面。(西宮市・棚田の土手 2009.12/4) 胞子嚢群(ソーラス)は中脈と縁の中間または中脈寄りにつき、苞膜は線形〜馬蹄形。 |
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↑Fig.8 胞子嚢が密集する裂片裏面。(西宮市・棚田の土手 2009.12/4) 胞子嚢群が密集するため、胞子嚢が開くと裏面は茶褐色となり目立つ。 |
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↑Fig.9 新葉を展開したイヌワラビの群生。(西宮市・畑地土手 2013.4/29) |
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↑Fig.10 緑白色の新葉を展開した個体。(兵庫県篠山市・植林地林縁 2013.4/26) |
生育環境と生態 |
Fig.11 棚田農道脇の草地斜面に生育するイヌワラビ。(西宮市・棚田の土手 2009.12/4) イヌワラビはときに街中にも出るが、里山では道端、草地土手、林縁、林床など、いたるところで見られるようになる。 ここではススキ、チガヤ、ヨモギ、セイタカアワダチソウなどの草地土手の常在種に混じって、アキカラマツ、スイバ、センニンソウ、 ガガイモ、オニウシノケグサ、カモジグサ、ヒガンバナ、キツネノマゴ、ワラビ、センニンソウ、ミツバアケビなどとともに生育している。 |
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Fig.12 農道脇の石垣に生育するイヌワラビ。(西宮市・里山の石垣 2010.5/13) 里山でよく見られる光景であり、ベニシダ、ヤブソテツ、トラノオシダ、シシガシラ、カニクサなどのシダ類とともに見られることが多い。 ここではトラノオシダの若い株が石垣の間に見え、ベニシダも近くに生えていた。 他にフキ、ヘビイチゴ、ダイコンソウ、イワニガナ、オニタビラコ、トウバナ、キランソウ、メアオスゲなどが見られた。 |