カラクサイヌワラビ | Athyrium clivicola Tagawa | ||
山地・里山・林縁のシダ | イワデンダ科 メシダ属 |
Fig.1 (兵庫県篠山市・植林地の林床 2015.7/23) |
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Fig.2 (兵庫県篠山市・植林地の林床 2015.6/22) 山地、里山の湿った林床などに生育する夏緑性シダ。 根茎は斜上〜ぼ直立し、葉を叢生する。 葉柄は長さ20〜55cm、ふつう葉身より短く、基部の鱗片は線形、長さ約1cm、幅1mm以上、褐色〜黒褐色、辺縁はやや淡色、全縁。 葉身は楕円形〜長楕円形、長さ30〜60cm、幅15〜30cm、2回羽状に複生し、5〜8対目の側羽片から上は急に狭くなり、多少穂状に見える。 大きい羽片は披針形、長鋭尖頭、有柄で長い柄は1cmに達する。羽軸は中軸とともに無毛。 小羽片は卵状長楕円形、短い柄があるか、小さいものでは無柄、鈍頭〜円頭、基部前側はやや耳形となり、羽状に中〜浅裂し、草質。 裂片は円頭、鋸歯縁、最下前側のものは特に大きくなり、羽軸にかぶさることが多い。 ソーラスは小羽片は中肋近くに付き、苞膜は三日月形、背中合わせになるが、鉤形のものはほとんどなく、ほぼ全縁。 染色体数n=80の4倍体。 トゲカラクサイヌワラビ(A. setuligerum)はカラクサイヌワラビとホソバイヌワラビの中間的な形質を持つもの。 ヒロハイヌワラビ(A. wardii)は羽軸裏面に微細毛があり、小羽片の前側裂片は大きくならず、羽軸に重ならない。 雑種に以下のものがある。 ヒサツイヌワラビ(A. × hisatsuanum) カラクサイヌワラビとホソバイヌワラビの雑種。本州、四国、九州。 トットリイヌワラビ(A. × tottoriense) カラクサイヌワラビとシマイヌワラビの雑種。鳥取、四国。 カラタニイヌワラビ(A. × purpuripes) カラクサイヌワラビとタニイヌワラビの雑種。本州、四国、九州。 オトマスイヌワラビ(A. × fuscopaleaceum) カラクサイヌワラビとツクシイヌワラビの雑種。九州。 アイトゲカラクサイヌワラビ(A. × buzenense) カラクサイヌワラビとトゲカラクサイヌワラビの雑種。九州。 オオカラクサイヌワラビ(A. × tokashikii) カラクサイヌワラビとヒロハイヌワラビの雑種。本州、四国、九州。 以上の雑種のうちオオカラクサイヌワラビ1種のみが兵庫県から記録されている。 近縁種 : ヒロハイヌワラビ、 ヤマイヌワラビ、 タニイヌワラビ、 サキモリイヌワラビ、 ホソバイヌワラビ、 イヌワラビ、 ヘビノネゴザ、 サトメシダ ■分布:北海道、本州、四国、九州、屋久島 ・ 朝鮮半島、中国 ■生育環境:山地、里山の湿った林床など。 |
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↑Fig.3 地上部標本。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2015.7/23) 葉身は楕円形〜長楕円形、2回羽状に複生し、5〜8対目の側羽片から上は急に狭くなり、多少穂状に見える。 葉質は草質。大きい羽片は披針形、長鋭尖頭。成熟した葉では、中軸の下方が紫褐色を帯びているものが多い。 |
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↑Fig.4 葉柄基部の鱗片。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2015.7/23) 基部の鱗片は線形、長さ約1cm、幅1mm以上、褐色〜黒褐色、辺縁はやや淡色、全縁。 |
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↑Fig.5 葉身中部。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2015.7/23) 葉身中部の小羽片は、羽軸に下先(下側第一小羽片が先)に付く。 |
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↑Fig.6 最下羽片基部。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2015.7/23) 羽片は有柄で、長い柄は1cmに達する。画像のものはちょうど1cm程度。 |
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↑Fig.7 羽軸裏と中軸裏はともに無毛。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2015.7/23) |
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↑Fig.8 羽軸と小羽軸の分岐点表面に刺があり、羽片上部で顕著。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2015.7/23) |
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↑Fig.9 小羽片。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2015.7/23) 小羽片は卵状長楕円形、短い柄があるか、小さいものでは無柄、鈍頭〜円頭、基部前側はやや耳形となり、羽状に中〜浅裂する。 裂片は円頭、鋸歯縁、最下前側のものは特に大きくなり、羽軸にかぶさることが多い。 |
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↑Fig.9 小羽片裏面(下面)とソーラス。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2015.7/23) 最下前側の裂片が大きく羽軸に重なるため、羽軸はあまり見えない。 ソーラスは小羽片の中肋近くに付き、苞膜は三日月形、背中合わせになるが、鉤形のものはほとんどない。 |
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↑Fig.10 包膜はほぼ全縁。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2015.7/23) |
生育環境と生態 |
Fig.11 植林地の林床に生育するカラクサイヌワラビ。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2015.7/23) 湿った植林地の林床に、数多くのシダ類とともに、カラクサイヌワラビが点在していた。 林床にはチャノキ、アオキ、ミヤマシキミ、クサギ、ナガバノモミジイチゴ、イワガラミの幼木が点在し、ジュウモンジシダ、リョウメンシダ、トウゴクシダ、 ナンゴクナライシダ、イノデ、サイゴクイノデ、イノデモドキ、イワガネゼンマイ、オクマワラビ、ヤマヤブソテツ、ミゾシダ、ヒメワラビ、オニヒカゲワラビ、 イワヒメワラビ、コバノイシカグマ、オオバノイノモトソウ、イヌワラビ、ヤマイヌワラビ、ヒロハイヌワラビ、ホソバイヌワラビなど多数のシダ類が生育する。 草本類ではミやマフユイチゴ、チヂミザサが多く、ミヤマカンスゲ、ヤブラン、ジャノヒゲ、エビネ、コアカソ、サワハコベ、ドクダミ、ヘクソカズラ、テイカカズラ、 ナガバハエドクソウ、ヤマホロシ、ハダカホオズキ、ツルニガクサ、ヒメガンクビソウなどが見られた。 |