ヒメレンゲ Sedum subtile  Miq.
  山地・岩上・渓流の植物 ベンケイソウ科 マンネングサ属
Fig.1 (兵庫県養父市・渓流の岩上 2015.5/14)

Fig.2 (兵庫県姫路市・渓流の岩上 2014.5/7)

山地の岩上や渓流畔に生育する多年草。
花後に花茎基部の葉腋から走出枝を出し、その先端に小さなロゼットをつくって越冬する。
ロゼットの葉はさじ形、長さ5〜15mm、幅3〜6mm、円頭〜鈍頭で、基部は柄状になる。
花茎は軟弱で直立し、高さ5〜10cm。
茎葉は互生し、ややまばらにつき、下部の葉はさじ形、中、上部の葉は広線形〜狭倒披針形、長さ5〜20mm、幅1〜3mmで、鋭頭〜鈍頭。
花序は頂生し集散状。花は5数性。萼片は離生し、基部にはわずかな距があり、長さ2〜5mm、鈍頭、多少の大小があり、花時に斜上する。
花弁は離生し、黄色、菱状楕円形〜菱状披針形、長さ4.5〜6mm、鋭頭で、花時には平開する。
雄蕊は花弁より短い。裂開直前の葯は赤色。蜜腺は扇状卵形、長さ約0.5mmで、半透明な白色。
雌蕊は長さ4〜5mm、子房は長さ2.5〜3mmで、基部は1mmほど合生する。花柱は長さ約1.5mmで細長い。
子房は熟すと各心皮の腹側が著しくふくれ、斜開し、真上から星状に見える。

近縁種 : コモチマンネングサマルバマンネングサ

■分布:本州(関東地方以西)、四国、九州
■生育環境:山地の沢沿いの岩上や渓流畔など。
■花期:5〜6月

Fig.3 花茎の茎葉。(兵庫県養父市・林道脇の岩上 2013.5/8)
  茎葉は互生し、ややまばらにつき、下部の葉はさじ形、中、上部の葉は広線形〜狭倒披針形、鋭頭〜鈍頭。

Fig.4 花序。(兵庫県養父市・渓流畔の岩上 2015.5/14)
  花茎は軟弱で直立し、高さ5〜10cm。花は花茎頂部の2出集散状の花序につき、下方から開花する。

Fig.5 上から見た花序。(兵庫県姫路市・渓流畔の岩上 2014.5/7)

Fig.6 花。(兵庫県姫路市・渓流畔の岩上 2014.5/7)
  苞葉は上部の茎葉と同形か少し細くなる。萼片は離生し、鈍頭、針状披針形〜披針形、大きさには多少大小がある。
  花弁はふつう5個、黄色、菱状楕円形〜菱状披針形、鋭頭で、花時には平開する。
  雄蕊はふつう10個、花弁より短い。裂開直前の葯は赤色。
  雌蕊は長さ4〜5mm、披針形、子房の基部は1mmほど合生する。花柱は長さ約1.5mmで細長い。

Fig.7 果実形成期。(兵庫県宍粟市・谷筋の林道脇 2011.6/8)
  子房は熟すと各心皮の腹側が著しくふくれ、斜開し、真上から星状に見える。

Fig.8 晩秋の草体。(西宮市・谷筋の岩上 2015.11/1)
  花後に花茎基部の葉腋から走出枝を出し、その先端に小さなロゼットをつくって越冬する。
  ロゼットの葉はさじ形、長さ5〜15mm、幅3〜6mm、円頭〜鈍頭で、基部は柄状になる。

生育環境と生態
Fig.9 谷筋斜面に群生するヒメレンゲ。(西宮市・谷筋 2015.5/24)
熔結凝灰岩の転石が堆積している谷筋斜面に、広い範囲にわたってクマワラビとともに群生が見られた。
西宮市内では比較的冷涼な場所で、周辺にはヤブサンザシ、コタニワタリなどの好石灰性の種も多く見られる。
同所的にミヤマキケマン、アオイスミレ、タチツボスミレ、ナガバノタチツボスミレ、ニシノオオタネツケバナ、ジャニンジン、ナツトウダイ、
キシダマムシグサ、イトスゲ、ホガエリガヤ、ヌカボシソウ、ツルマサキ、スイカズラ、ジュウモンジシダ、ハクモウイノデなどが生育している。

Fig.10 渓流の岩上に生育するヒメレンゲ。(兵庫県養父市・渓流の岩上 2015.6/13)
山地の渓流の岩上では画像のようにナルコスゲの株元で群生している光景をよく見かける。
ナルコスゲは増水時にも急流に流されないように、岩の隙間や岩上に発達した根を張る。
この根の塊がヒメレンゲの生育の足場となっていて、急流に飲まれても根茎から復活する。


最終更新日:2nd.Nov.2015

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