マルバマンネングサ Sedum makinoi  Maxim.
  山地・岩上の植物 ベンケイソウ科 マンネングサ属
Fig.1 (西宮市・谷筋の林道脇 2010.7/12)
山地の岩上や石垣に生育する多年草。
花茎は基部がはって分枝し、上方で斜上し、高さ8〜20cm。
葉は対生し、倒卵形〜さじ形、長さ7〜10mm、幅3〜6mm、円頭で、基部は柄状となる。
花序は頂生の集散状で、葉状の苞が目立つ。花は5数性、ややまばらにつき、柄はない。
萼片は広線形〜さじ状線形、長さ約2mm、やや大小があり、円頭で、基部は合生し、
長さ0.2〜0.5mmの短い萼筒となるが、それぞれの萼片の基部にはごく短い距がある。
花弁は黄色で針形〜針状披針形、長さ4〜5mm、鋭頭で、基部はわずかに合生し、花時には平開する。
雄蕊は花弁よりわずかに短い。裂開直前の葯は橙赤色。蜜腺は広線形、長さ約0.5mmで、乳白色。
雌蕊は長さ3〜4mm、子房は長さ2.5〜3mmで、基部は1mmほど合生する。花柱は長さ約1mmで細長い。
子房は熟すと各心皮の腹側がふくれ、斜開する。種子は楕円形、長さ0.7mm内外、褐色で微細な凹凸がある。

【メモ】 西宮市内で現在のところ確認している集団はいずれも自生かどうか疑わしい個体群である。
     この仲間は常緑でグランドカバーとして庭園で栽培されることがあり、最近では屋上緑化の素材ともなっている。
     西宮市内では山間の岩壁で生育している集団を確認したことはなく、栽培逸出または漂着による河川敷での遇産と思われる。
     六甲山系では南部の岩壁に自生地が点在しており、西宮市内でも同様な自生地が確認できる可能性があり、今後精査する必要がある。
近縁種 : コモチマンネングサヒメレンゲ

■分布:本州、四国、九州
■生育環境:山地の岩上や石垣など。
■花期:6〜7月

Fig.2 茎は分枝しながらはって広がる。(西宮市・谷筋の林道脇 2010.7/12)
  茎はの下部ははい、分枝して広がり、マット状に群生し、茎上部は斜上する。

Fig.3 茎葉。(西宮市・谷筋の林道脇 2010.7/12)
  葉は対生し、倒卵形〜さじ形、長さ7〜10mm、幅3〜6mm、円頭で、基部は柄状となる。

Fig.4 花序。(西宮市・谷筋の林道脇 2010.7/12)
  花は花茎頂部の2出集散状の花序につき、下方から開花する。花序上部は広がって平坦となり、苞葉がよく目立つ。

Fig.5 苞と萼片など。(西宮市・谷筋の林道脇 2010.7/12)
  苞は葉状、茎葉より多少とも小さく、円頭。
  萼片は先の円い広線形〜さじ状線形、基部は合着して短い萼筒となる。ひとつの花でも萼片の長さや幅は一定せず、大小がある。
  画像中の花は雄蕊の葯が裂開直前で、橙赤色である。

Fig.6 マルバマンネングサの花。(西宮市・谷筋の林道脇 2010.7/12)
  花弁はふつう5個、黄色で針形〜針状披針形、長さ4〜5mm、鋭頭、平開する。
  雄蕊はふつう10個、花弁よりわずかに短く、花弁中央から出る5個はさらに少し短い。
  雌蕊5個で披針形、柱頭は針状で長さ約1mm。

Fig.7 果実形成期。(西宮市・谷筋の林道脇 2010.7/12)
  果実は不整な卵状披針形、腹側がふくらみ、星状に平開する。

生育環境と生態
Fig.8 河川敷の護岸の隙間に生育するマルバマンネングサ。(西宮市・武庫川河川敷 2007.6/9)
河川低水敷のワンド形成のために本流に対して直角に造営された石積みの隙間に点在しているもの。
武庫川水系の自生地から漂着したものか、近隣地域で栽培されていたものが漂着して生育したものか見極めがたい。
過去に武庫川河川敷の記録はなく、キツネアザミやヘラオモダカとともに遇産種として扱うのが妥当であろう。

Fig.9 谷筋に敷設された林道脇に群生するマルバマンネングサ。(西宮市・谷筋の林道脇 2010.7/12)
周辺には法面緑化に使用されたと見られるイタチハギ、シナダレスズメガヤの生育が見られる場所であり、移入の可能性がある。
林道直下を流れる渓流沿いの護岸上にはメキシコマンネングサの群生も見られ、マルバマンネングサも観賞用に栽培されることもあり、自生かどうか疑わしい。
しかし、深く刻まれた谷間の岩壁にはナメラダイモンジソウ、コチョウ(シロバナ)ショウジョウバカマ、オサシダなど六甲山系を代表する植物群落も見られ、
六甲の南斜面の崖地に自生地が点在することから、遡行困難な谷筋をさらに精査する必要があるだろう。


最終更新日:17th.Feb.2011

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