コガンピ Diplomorpha ganpi  (Sieb. et Zucc.) Nakai
  里山・草地の植物 ジンチョウゲ科 ガンピ属
Fig.1 (兵庫県篠山市・溜池土堤 2010.8/19)
Fig.2 (兵庫県小野市・溜池土堤 2011.7/12)
日当たり良い草地に生育する落葉小低木。
枝は直立して、ほぼ同じ高さに叢生して、高さ100cm以下の草本状に生育する。
枝、葉、花序には伏毛を密生し、冬期には地上20cmほどから上が毎年枯れる。
葉は密にらせん状につき、紙質、長楕円形で長さ2〜4.5cm、幅1〜2cm、両端ともに鋭形または鈍形をなし、葉柄はごく短い。
花序は今年枝の先が分枝しておのおのが小さい穂状花序となり、集まって円錐状になるか株の上部に花の層をつくる。
花は両性で白色または淡紅色、萼筒は長さ7〜12mm、萼裂片は狭い卵形で長さ2〜3mm。
雄蕊は小さく、上列は萼筒口に、下列は少し下がってつき、上列は半ば超出する。
雌蕊は萼筒の半長、子房は長毛を密生し、楕円形で下部は柄となり、柱頭は扁球形。
花盤は錐形ないし鱗片状で深裂する。核果は長毛を密生し、宿存する萼筒に包まれる。

【メモ】  本種はガンピやキガンピと違って樹皮の繊維が弱いため、製紙に不向きなためイヌガンピとも呼ばれる。
      草刈りや野焼きなどの手入れの行き届いた草地環境に生育し、他府県では減少傾向が著しいという。
      兵庫県下では溜池が多いためその土堤斜面で群生しているのをよく見かける。
      西宮市内ではこれまで記録がなかったが、耕作放棄された棚田の草深い土手で生育しているのを確認した。
近縁種 : キガンピガンピ、 ミヤマガンピ

■分布:本州(関東以西)、四国、九州、奄美諸島 ・ 台湾
■生育環境:里山の草地など。
■花期:7〜9月

Fig.3 枝と葉。(兵庫県三田市・水田の土手 2010.8/15)
  枝は直立するが、画像のように斜面に生えるものは斜上しているものも多く見られる。
  葉は枝に密にらせん状に互生してつく。

Fig.4 枝に見られる伏毛。(兵庫県篠山市・溜池土堤 2010.8/19)
  今年枝には伏毛が多く、樹皮は赤紫色を帯びていることが多い。伏毛は葉や花序にも見られる。

Fig.5 コガンピの葉。(兵庫県篠山市・溜池土堤 2010.8/19)
  葉は紙質で長楕円形、葉先は多くは鈍頭、ときに鋭頭、葉柄はごく短い。

Fig.6 花序。(兵庫県篠山市・溜池土堤 2010.8/19)
  枝の頂部の分枝した先がそれぞれ穂状花序となり、全体が円錐状の花序となる。

Fig.7 花序の部分拡大。(兵庫県篠山市・溜池土堤 2010.8/19)
  花序の枝は複数回分枝し、それぞれに花が多数つくため、開花期は小さな花が沢山ついてにぎやかである。
  花序の枝には伏毛が密生するため、白味を帯びて見える。

Fig.8 開花したコガンピの花。(兵庫県三田市・水田の土手 2010.8/15)
  花には花弁はなく、花被は萼筒上部が4裂したもので、長さ7〜12mm、白色または淡紅色を帯びる。
  雄蕊は4個が萼筒の上下2列に並び計8個ある。画像に見える雄蕊は萼筒の上列のもの。雌蕊は1個。

Fig.9 果実期のコガンピ。(兵庫県加西市・溜池土堤 2010.9/28)
  他のガンピ属もそうであるが、あまり結実率が良いほうではない。ときに全く結実していない花序も見られる。
  果実には短い柄があり、萼筒が宿存して果実を包んでいることが多い。

Fig.10 果実。(兵庫県加西市・溜池土堤 2010.9/28)
  宿存萼を取り除いた果実。果実は核果で、卵形、表面には長毛が生える。

生育環境と生態
Fig.11 溜池土堤に生育するコガンピ。(兵庫県篠山市・溜池土堤 2010.8/19)
コガンピは兵庫県下では草刈りのされる溜池土堤で見かける機会が多い。次いで、棚田の土手などに見られる。
ここでは刈り込まれて矮小化したコナラ、ハンノキ、ヤマツツジやツクシハギ、キキョウ、ノアザミ、ワレモコウ、オミナエシ、スズサイコ、
ノギラン、リンドウ、ヒメシダなど、溜池土堤や棚田土手などの二次的自然環境の高い草地環境に生育する種が多く見られた。

Fig.12 棚田の土手に生育するコガンピ(黄葉しているもの)。(西宮市・棚田の土手 2010.11/20)
耕作放棄された草深い棚田の土手に生育している。草刈りに遭わなかったためか、管理の行き届いた溜池土堤のものよりも大きな個体が多かった。
自生地ではコガンピとともにススキ、チガヤ、メガルカヤ、オガルカヤ、メリケンカルカヤ、アブラススキ、ヒメアブラススキ、ワレモコウ、リンドウ、
ツリガネニンジン、オミナエシ、サワヒヨドリ、リュウノウギク、イナカギクなど、棚田の土手に見られる草原性草本が多く見られた。
西宮市内ではコガンピが生育する場所はここだけであり、なんとか保全できないかと思案しているところである。

Fig.13 溜池土堤に群生するコガンピ。(兵庫県小野市・溜池土堤 2011.7/31)
定期的に草刈管理される溜池土堤に生育良好なコガンピの群生が見られた。
土堤にはコガンピとともにメドハギが多く、ススキ、トダシバ、マルバハギ、ノイバラ、ワレモコウ、ヒナギキョウなどが生育している。


最終更新日:18th.Sept.2011

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