ミヤコアオイ Asarum asperum  F.Maek.
  里山・林縁・林床の植物 ウマノスズクサ科 カンアオイ属
Fig.1 (兵庫県三田市・雑木林の林縁 2011.4/10)

Fig.2 (兵庫県篠山市・社寺の石垣 2014.4/12)

丘陵〜山地や里山の林縁、林床に生育する地生の多年草。
茎は短く地表をはい、節間は短く、葉痕が節くれ立ち、細い多肉根を地中に下ろす。
葉は卵形、楕円形、卵状楕円形で長さ5〜8cm、やや薄く、鈍頭、基部は深い心形で、その両側面はときに少し張り出し、ほこ形となる。
表面は平坦、光沢が弱く、雲紋があり、短毛がまばらに生える。裏面は無毛、葉柄は長く紫色である。
花は淡紫褐色で、長さも径も2cm前後。萼筒は横からみると台形で、長さ約6mm、径約9mmで、外側は淡色、内側は萼裂片よりも濃色。
萼筒口部はいちじるしくくびれ、内面に15本の縦の隆条、2〜3本の横の隆条があって格子状となる。
萼裂片は卵形で開出し、長さ8〜10mm、やや鈍頭。花弁はない。雄蕊は12個。花柱は6個で円柱状。
近縁種 : ヒメカンアオイナンカイアオイ、 アツミカンアオイ

■分布:本州(近畿以西〜島根県)、四国西部
■生育環境:丘陵〜山地や里山の林縁、林床など。
■花期:2〜4月

Fig.3 前年の葉。(兵庫県三田市・雑木林の林縁 2011.4/10)
  葉は卵形、楕円形、卵状楕円形で、やや薄く、鈍頭、基部は深い心形で、その両側面はときに少し張り出し、ほこ形となる。

Fig.4 前年の葉の表裏の拡大。(兵庫県三田市・雑木林の林縁 2011.4/10)
  表面には短毛がまばらに生え、脈上と葉縁には短毛が多く生えている。裏面は無毛で、表皮には光沢がある。

Fig.5 基部周辺の構造。(兵庫県三田市・雑木林の林縁 2011.4/10)
  茎は短く地表をはい、節間は短く、葉痕が節くれ立ち、下方には細い多肉根がある。
  短い茎の先端には苞葉が2〜3個つき、その中から新葉と花を出す。新葉は茎に2個互生するか単生し、花は単生する。

Fig.6 開花しはじめの花。(兵庫県篠山市・植林地と雑木林の境界斜面林床 2011.4/6)
  つぼみははじめ下向きつき、開花するとやや横向きとなる。花に花弁はなく、萼筒外面は淡色で、台形、口部はいちじるしくくびれる。

Fig.7 開花した花。(兵庫県三田市・雑木林の林縁 2011.4/10)
  萼裂片は卵形で開出する。萼筒口部のくびれがいちじるしいため、萼筒内部は外からほとんど見えない。

Fig.8 花の内部。(兵庫県三田市・雑木林の林縁 2011.4/10)
  子房下位で、花盤はナンカイアオイやヒメカンアオイのように盛り上がらず、平坦である。
  雌蕊は6個つき円柱形で、柱頭はかぎ状に外曲する。雄蕊は全てほぼ同長で、各雌蕊の外側に環状に取り巻く。

Fig.9 花床の拡大。(兵庫県三田市・雑木林の林縁 2011.4/10)
  雄蕊の花糸は紫褐色で、やや内傾し、外面の上端より少し下方に2個の葯がつく。

Fig.10 萼筒内壁。(兵庫県三田市・雑木林の林縁 2011.4/10)
  計15本の縦の隆条の間に、横の隆条が2〜3本あって、格子状となる。隆条は明瞭で乱れは少ない。

Fig.11 葉の模様の変異。(京都府福知山市・社寺林林縁 2013.3/15)
  葉身の中央脈と、基部の張り出し部分にのみ白斑のある個体。

Fig.12 葉の模様の変異。(兵庫県篠山市・植林地林縁 2013.4/9)
  葉身の脈上全てに白斑が生じた個体。

生育環境と生態
Fig.13 雑木林の林縁に生育するミヤコアオイ。(兵庫県三田市・雑木林の林縁 2011.4/10)
林縁の下刈りされた場所から、まばらに間伐された植林地の林床にかけて数多くのミヤコアオイが生育している。
この周辺では下刈りされたコナラ−アベマキ林や、間伐されて林床にも陽が届くような場所にミヤコアオイが見られる。
雑木林でも管理放棄されてネザサが密生するような場所には見られない。

Fig.14 植林地の林床に生育するミヤコアオイ。(兵庫県丹波市・植林地 2010.5/14)
手入れされた明るい植林地の林床にミヤコアオイが点在していた。
林床にはまばらに丈の低いネザサが生育し、フユイチゴ、チャノキの幼木、メアオスゲ、モエギスゲ、ツタウルシ、ショウジョウバカマ、
ウバユリ、シャガ、サルトリイバラ、ヌカボシソウ、ベニシダ、ナンゴクナライシダなどが見られた。


最終更新日:25th.Aug.2014

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