モエジマシダ Pteris vittata  L.
  草地・石垣のシダ イノモトソウ科 イノモトソウ属
Fig.1 (兵庫県芦屋市・人家の石垣 2012.10/30)
草地や路傍、石垣などに生育する常緑性シダ。園芸植物として栽培もされ、兵庫県で見られるものは栽培からの逸出。
根茎は短く、斜上し、葉を叢生する。鱗片は淡色〜淡褐色、幅が狭く、長さ約5mm。
葉柄は長さ20cm以下で、基部に密に鱗片をつけ、わら色から淡褐色。
葉身は大きさに変異があり、倒披針形、頂羽片の明瞭な単羽状で、長さ10〜80cm。
羽片はふつう20対以上あり、下部のものは次第に短くなり、中〜上部のものは線形でほぼ直線状、長さ6〜15cm、幅8〜12mm、
基部は心形でほぼ無柄、先は尾状に長く伸び、ふつう全縁、ソーラスのつかない辺縁ではわずかに鋸歯がでることがある。
頂羽片は長く、長さ20cm、幅1cmに達する。中軸は表面に溝があり、鱗片をつける。
葉脈は2叉し、胞子嚢床で連結される以外は遊離する。ソーラスは葉縁にあり、羽片の辺縁に沿って長く伸びる。
包膜は薄く、淡色。染色体数はn=58,2n=116の4倍体。
近縁種 : イノモトソウオオバノイノモトソウ、 マツザカシダ

■分布:本州(和歌山、愛媛)、九州、沖縄 ・ 世界の熱帯〜亜熱帯
■生育環境:草地や路傍、石垣など。

Fig.2 地上部標本。(兵庫県芦屋市・人家の石垣 2012.10/30)
  葉の大きさには変異があるが、葉身は単羽状で、頂羽片は明瞭。葉柄は短い。
  羽片はふつう20対以上あり、下部のものは次第に短くなり、中〜上部のものは線形でほぼ直線状。
  特徴がはっきりとした判りやすいシダで、近縁種と見間違えることはない。

Fig.3 葉柄基部の鱗片。(兵庫県芦屋市・人家の石垣 2012.10/30)
  鱗片は密につき、淡色〜淡褐色、幅が狭く、長さ約5mm。

Fig.4 中軸と羽片の基部。(兵庫県芦屋市・人家の石垣 2012.10/30)
  中軸は表面に溝があり、鱗片をつける。羽片の基部は心形でほぼ無柄。

Fig.5 羽片の脈。(兵庫県芦屋市・人家の石垣 2012.10/30)
  葉脈は2叉し、胞子嚢床で連結される以外は遊離する。
  画像のものは葉縁に全てソーラスがついていて、遊離脈は見られない。

Fig.6 羽片裏面。(兵庫県芦屋市・人家の石垣 2012.10/30)
  ソーラスは葉縁にあり、羽片の辺縁に沿って連続して長く伸びる。

Fig.7 ソーラス。(兵庫県芦屋市・人家の石垣 2012.10/30)
  ソーラスは羽片の辺縁が反転した淡色の包膜(偽包膜)に包まれる。

Fig.8 石垣の間に定着した若い個体。(兵庫県芦屋市・人家の石垣 2012.10/30)
  モエジマシダは繁殖力が旺盛で、住宅街を中心として少しずつ広がりつつある。

生育環境と生態
Fig.9 住宅地の石垣に生育するモエジマシダ。(兵庫県芦屋市・人家の石垣 2012.10/30)
付近の人家で栽培されていたモエジマシダが逸出し、住宅街の人家の石垣の間や、道路の側溝に点在してた。

Fig.10 ホウライシダとともに生育するモエジマシダ。(兵庫県芦屋市・人家の石垣 2012.10/30)
両種ともに人家周辺で生育領域をひろげつつあるシダ。ホウライシダのほうが、やや湿気を好むようだ。
これらと同様、最近では人家周辺の側溝でイヌケホシダを見かける機会が多くなった。

Fig.11 護岸の石垣の間に生育するモエジマシダ。(西宮市・護岸の石垣 2015.11/8)
西宮市内では夙川公園の護岸の石垣の間に生育している。
ここではノブドウやイノコヅチとともに生育しており、これらの草本の根際が生育の温床になったのだろう。
護岸の石垣には他にゲジゲジシダ、ミゾシダ、イヌシダ、イヌケホシダ、カニクサ、スイバ、ヒメツルソバ、コスミレ、スミレ、マメグンバイナズナ、
カタバミ、ツタバウンラン、ヒナギキョウ、コオニタビラコ、ニガナ、ノゲシ、セイタカアワダチソウ、ヒメジョオンなどが生育している。
夙川公園にはハランの根際にホソバカナワラビが見られるが、これは自生のものではなく、ハランとともに持ち込まれたものだろう。


最終更新日:25th.Feb.2017

<<<戻る TOPページ