ムラサキセンブリ Swertia pseudochinensis  Hara
  草地・崩壊地の植物 
  環境省絶滅危惧U類(VU)・兵庫県RDB Bランク種
リンドウ科 センブリ属
Fig.1 (兵庫県・崩壊地 2010.11/1)
低地〜山地の日当たり良い草地や崩壊地などに生育する越年草。
茎は直立し、横断面は4角形、暗紫色を帯び、高さ15〜70cm、中部以上で盛んに分枝する。
根生葉は開花時には無い。葉はやや密に対生し、ほぼ無柄、線状披針形で、長さ2〜4cm、鋭頭。
花は枝先や葉腋に1個づつつき、萼裂片は線形。花冠は5深裂し、淡紫色まれに白色、濃紫色の縦脈が目立ち、楕円形で鋭頭、長さ7〜15mm、
基部には波状隆起のある長い毛状の突起に囲まれた蜜腺溝が2個ある。
雄蕊5個で花冠裂片よりも短く、葯は最初は黄色、花粉放出後には青色〜濃紫色を帯びる。花柱は短く、やや太く、柱頭は2岐する。
果実期には花冠は閉じて枯れたまま宿存し、刮ハは披針形で、淡紫色を帯びる。
近縁種 : センブリ、 イヌセンブリ

■分布:本州、四国、九州 ・ 東アジア
■生育環境:日当たり良い草地や崩壊地。
■花期:9〜11月

Fig.2 茎と葉。(兵庫県・崩壊地 2009.11/26)
  茎は直立し、節間はやや短く、暗紫色を帯び、中部以上で葉腋から盛んに分枝する。茎の横断面は四角形。
  葉は対生して、ほぼ無柄、線状披針形で鋭頭、中央脈はへこんで目立つ。

Fig.3 開花したムラサキセンブリ。(兵庫県・崩壊地 2010.11/1)
  花は枝先や葉腋に1個づつつき、明瞭な花柄がある。分枝の多い株では、花数が多く賑やかである。

Fig.4 花冠。(兵庫県・崩壊地 2010.11/1)
  萼裂片は線形。花冠はふつう5深裂し、淡紫色、鋭頭、濃紫色の縦条が目立つ。裂片の幅はセンブリよりも広い。
  雄蕊5個は、花冠裂片より短く、葯は最初は黄色、花粉放出後には青色〜紫色を帯びる。
  リンドウ科なので、花には雄性期と雌性期があると思われるが、雄性期の花糸は短く、花粉放出後に完全に伸びる。
  一方、柱頭のほうは最初から2岐しており、受粉可能時期は見た目では明確ではない。

Fig.5 花冠中心部。(兵庫県・崩壊地 2010.11/1)
  花柱は短く、やや太く、柱頭は浅く2岐する。
  花冠裂片の基部には蜜腺溝が2列あり、その周囲を毛状の突起が囲む。
  毛状突起はイヌセンブリよりも短く、毛状突起表面には波状隆起がある。

Fig.6 開花直前のつぼみと開花した花。(兵庫県・崩壊地 2010.11/1)
  開花直前のつぼみは丸みを帯び、花冠裂片が広いぶんだけセンブリよりも幅広い。花冠外面は全体的に紫色を帯びる。

Fig.7 花冠裂片の変異。(兵庫県・崩壊地 2010.11/1)
  ムラサキセンブリの半はふつう5数性であるが、ときに4裂や6裂する花冠をもつものも現われる。

Fig.8 花冠の白色が勝る個体。(兵庫県・崩壊地 2010.11/1)
  ときに花冠が白色となるものが生じる。画像のものは紫条がまだ明瞭だが、紫条が生じない完全な白色のものも現われる。
  ただし、画像のものは周辺に見られる淡紫色の花を持つものよりも花冠裂片は多少狭く、センブリとの種間雑種も疑われる。

Fig.9 果実期の草体。(兵庫県・崩壊地 2009.11/26)
  枯野の中、赤紫色を帯びた草体がよく目立つ。

Fig.10 宿存する花冠に包まれた刮ハ。(兵庫県・崩壊地 2009.11/26)
  受粉が完了した後、花冠は閉じるが、果実形成期にもそのまま宿存し、花冠に包まれたまま刮ハは熟す。

Fig.11 種子。(兵庫県・崩壊地 2009.11/26)
  種子は広卵形で黒褐色、長さ約0.4mm、表面には隆起した細かな網状紋がある。

Fig.12 当年苗。(兵庫県・崩壊地 2010.11/1)
  当年に発芽した苗は根生葉のみからなる。根生葉は楕円形で全縁、光沢があり鈍頭。
  この苗はこのまま常緑で越冬し、翌年秋に茎を伸ばして開花する。

生育環境と生態
Fig.13 貧栄養な崩壊地の草付きに生育するムラサキセンブリ。(兵庫県・崩壊地 2010.11/1)
断層によって生じた崩壊地の小さな谷筋の草付きに生育している。
他の地域では石灰岩地や蛇紋岩地のように極端に貧栄養で条件の厳しい場所に生育するようであるが、ここでは風化・浸食にさらされて
腐植土質が蓄積しない貧栄養地に生育が見られる。同所的にはコシダ、トダシバ、メリケンカルカヤ、矮小化したススキ、ヤマジノギク、ノギラン、
ソクシンラン、ヤクシソウ、オオヒキヨモギ、アリマウマノスズクサ、メアオスゲ、ナキリスゲ、オオナキリスゲ、アリノトウグサ、ネズミサシ、ヒサカキ、
サルトリイバラ、ノイバラ、イヌツゲ、アカマツ、コナラなどが生育する。これらの種は兵庫県下では貧栄養地にみられる一群の植物である。

Fig.14 崩壊地にトダシバとともに生育するムラサキセンブリ。(兵庫県・崩壊地 2010.11/1)
断層によって生じた崩壊地は、断層の活動による変成作用で粘土層を生じる。そのような場所では雨水や湧水が滞水して適湿な場所が生じ、先駆的な植物である
トダシバ、メリケンカルカヤが根をおろす。ムラサキセンブリはそういった場所で好んで固まって生育している。
このような環境下では兵庫県ではふつうモウセンゴケやイトイヌノハナヒゲ、カリマタガヤなどが出現するが、ここではそれらの種は全く見られない。
近縁のセンブリはムラサキセンブリほど勢力は強くなく、ムラサキセンブリの自生中心地域から外れた周辺でまばらに生育している。


最終更新日:15th.Nov.2010

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