センブリ | Swertia japonica (Schult.) Makino | ||
里山・草地・道端の植物 | リンドウ科 センブリ属 |
Fig.1 (兵庫県三田市・溜池土堤 2011.11/9) |
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Fig.2 (西宮市・農道脇草地 2014.10/16) 低地〜山地、里山の日当たり良い草地や道端などに生育する越年草。 茎は直立し、紫色〜淡紫色を帯び、高さ5〜20cm、盛んに分枝する。茎葉は線形で長さ1.5〜3.5cm、縁は多少外側に反る。 花は円錐状につき、ふつう5数性、萼裂片は線形〜線状披針形で、長さ5〜11mm。 花冠は白色で5深裂し、裂片は広披針形で紫脈があり、長さ12〜15mm、基部付近に2個の蜜腺溝がある。 腺溝の周囲には長い毛があり、その毛は顕微鏡下では平滑。 刮ハは花冠よりも少し長く、種子はやや円くて、表面は浅い凹凸がある。 【メモ】 全草に苦味があり、干したものは健胃薬の「千振」や「当薬」としてよく知られている。 近縁種 : ムラサキセンブリ、 イヌセンブリ ■分布:北海道西南部、本州、四国、九州 ・ 朝鮮半島、中国 ■生育環境:日当たり良い草地や道端など。 ■花期:8〜11月 |
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↑Fig.2 茎と葉。(兵庫県篠山市・道端の草地 2011.10/23) 茎は直立し、紫色〜淡紫色を帯び、よく分枝する。茎の横断面は四角形。 葉は対生して、ほぼ無柄、線形で鋭頭または鈍頭、中央脈はへこみ、縁は多少外側に反る。。 |
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↑Fig.3 開花したセンブリ。(兵庫県三田市・溜池土堤 2011.11/9) 花は枝先や葉腋に1個づつつき、明瞭な花柄がある。 |
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↑Fig.4 円錐状に多数の花をつけた生育条件のよい個体。(兵庫県三田市・溜池土堤 2011.10/23) |
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↑Fig.5 つぼみ。(兵庫県篠山市・道端の草地 2011.10/23) 萼裂片は線形〜線状披針形、鈍頭で、長さ5〜11mm、花冠裂片よりもかなり短い。 |
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↑Fig.6 花冠。(兵庫県篠山市・道端の草地 2011.10/23) 花はふつう5数性で、花冠裂片はふつう5深裂するが、4深裂するものも多く見かける。 左の花は葯が裂開する前で紫色が強く、右の花では葯が裂開したあとで青味が強くなる。 |
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↑Fig.7 花冠中心部。(兵庫県篠山市・道端の草地 2011.10/23) 花冠裂片の基部付近には2個の蜜腺溝があり、その周囲には毛が生えている。 毛はイヌセンブリのものよりも短く、蜜腺溝が見える。イヌセンブリの毛は長く縮れて蜜腺溝が見えない。 |
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↑Fig.8 訪花したオオハラナガツチバチ(♂)。(神戸市・林道脇 2015.10/16) ハラナガツチバチの仲間は土中に居るコガネムシ類の幼虫に産卵して寄生する寄生蜂。成蜂はいろいろな花をよく訪花する。 |
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↑Fig.9 刮ハ。(兵庫県三田市・溜池土堤 2011.11/9) 刮ハは宿存する枯れた花冠に包まれて成熟する。画像は枯れた花被片を開いて、刮ハを見せている。 刮ハは花冠よりも少し長く、披針形。熟すと先が2裂し、風に揺さぶられて少しずつ種子をばら撒く。 |
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↑Fig.10 種子。(兵庫県三田市・溜池土堤 2011.11/9) 種子はやや円くて、径約0.4mm、表面は浅い凹凸がある。 |
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↑Fig.11 当年苗。(兵庫県篠山市・溜池土堤 2011.11/3) 当年に発芽した苗は根生葉のみからなる。根生葉は楕円形〜長楕円形で全縁、光沢があり鈍頭。 この苗はこのまま常緑で越冬し、翌年茎を伸ばして秋に開花する。 |
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↑Fig.12 草丈の低い個体。(兵庫県篠山市・溜池土堤 2011.11/3) 草刈りの行き届いた草地では刈り込みに遭い、低い草丈で多数の花をつける。 |
生育環境と生態 |
Fig.13 溜池土堤に群生するセンブリ。(兵庫県三田市・溜池土堤 2011.11/9) 灌漑用水として現在も使用されている溜池では土堤が草刈り管理されて程よい草原環境が保たれ、センブリが生育している場所も多い。 ここではススキ、チガヤを主体としてメドハギ、ネコハギ、メリケンカルカヤ、セイタカアワダチソウ、ワレモコウ、オミナエシが生育し、 クズやセイタカアワダチソウも混じるが生育は抑えられ、草丈の低い場所にセンブリが小群生をつくっている。 |
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Fig.14 粘土質の土壌に生育するセンブリ。(兵庫県篠山市・溜池土堤 2011.11/3) 兵庫県東南部では粘土質の貧栄養で被植の少ない場所でセンブリがよく見られる。 このような場所は山中の崩壊地、貧栄養な尾根の斜面、粘土で固めた溜池土堤などがあり、たいていセンブリの生育を見ることができる。 画像は山際に造られた粘土質の溜池土堤で、貧栄養な土壌の指標となるハナゴケ、コナアカミゴケ、ジョウゴゴケなどの地衣類が多い、 矮小化したネザサ主体の草地となっており、ツリガネニンジン、ワレモコウ、オミナエシ、トダシバ、メリケンカルカヤ、アキノキリンソウ、 リンドウ、イトハナビテンツキとともに多数のセンブリが生育していた。 このような貧栄養な粘土がむき出しとなったような場所では、センブリの草丈も低い。 |