ナンゴクウラシマソウ Arisaema thunbergii  Blume
 subsp. thunbergii
  林縁・林床の植物 兵庫県RDB Bランク種 サトイモ科 テンナンショウ属
Fig.1 (兵庫県播磨地方・林縁 2015.5/6)

山地の林縁、林床に生える多年草。
球茎は扁球茎で、子球はウラシマソウよりも数は少ない。
偽茎は葉柄より短い。葉は1(〜2)個、鳥足状に11〜17個の細い小葉をつける。
小葉は狭長楕円形〜線状披針形で、鋭尖頭、全縁で深緑色。花序は葉よりも下に位置する。
仏炎苞の特に内側は濃紫色、筒部は白色を帯びて淡紫褐色。口辺部は開出する。舷部は3角状卵形から広卵形で、長鋭尖頭。
付属体下部はふくらみ、表面には細かいしわがあって、ときに角状の突起があり、上部でしだいに細くなって長く糸状に伸びる。

近縁種 : ウラシマソウ、 ヒメウラシマソウ、 ムサシアブミ

■分布:本州(近畿地方以西)、四国、九州
■生育環境:山地の林縁、林床など。
■花期:4〜5月

Fig.2 葉と小葉。(兵庫県播磨地方・林縁 2015.5/6)
  葉は1(〜2)個、鳥足状に11〜17個の細い小葉をつける。
  小葉は狭長楕円形〜線状披針形で、鋭尖頭、全縁で深緑色、しばしば中脈に沿って白斑が入り、ウラシマソウよりも細身である。

Fig.3 開花中の個体。(兵庫県播磨地方・林縁 2015.5/6)
  偽茎も花茎も非常に短く、花は葉よりも下につく。

Fig.4 付属体の先は糸状となって上に長く伸びる。(兵庫県播磨地方・林縁 2015.5/6)

Fig.5 仏炎苞。(兵庫県播磨地方・林縁 2015.5/6)
  仏炎苞の特に内側は濃紫色、筒部は白色を帯びて淡紫褐色。口辺部は開出する。
  舷部は3角状卵形から広卵形で、長鋭尖頭、先は前に垂れ下がる。

Fig.6 付属体下部。(兵庫県播磨地方・道路脇斜面 2015.5/6)
  付属体下部はふくらみ、表面には細かいしわがあって、ときに角状の突起がある。
  ウラシマソウではこのようなしわや突起はなく、明瞭な区別点となる。

Fig.7 筒部の内側。(兵庫県播磨地方・道路脇斜面 2015.5/6)
  筒部内側は白地にかすれたような紫斑がある。付属体下部は次第に細くなり柄は不明瞭で、濃紫色の花序軸へと続く。
  雌花序につく子房は緑色でやや扁平、花柱は暗紫色、柱頭には微細毛がある。

生育環境と生態
Fig.8 林縁にまとまって生育するナンゴクウラシマソウ。(兵庫県播磨地方・林縁 2015.5/6)
渓流沿いの暖帯林の林縁から林床にかけてナンゴクウラシマソウが点在していた。
ウラシマソウと異なり人里近くや山麓には生育せず、山地の谷筋に生育し、多数の個体が群生することもないという。ここでも数は多くなかった。
周辺の被植は少なく、ナガバノタチツボスミレ、シハイスミレ、オオバタネツケバナ、ヤマムグラ、ウマノスズクサsp.、ヒヨドリジョウゴ、ヤブタビラコ、
チヂミザサなどが点在していた。

Fig.9 道路脇の斜面に生育するナンゴクウラシマソウ。(兵庫県播磨地方・道路脇斜面 2015.5/6)
日当たり良い乾いた道路脇のザレた斜面の下部にナンゴクウラシマソウがまとまって生育していた。
ナンゴクウラシマソウの本来的な生育環境とは言い難く、恐らく斜面の上の林の一部が崩れて落ちてきたものが生育しているのだろう。
地下にはある程度の水分もあるのか、どの個体も旺盛に生育しており、個体を観察するにはうってつけの場所だった。
明るい林縁環境であるため植生は豊富で、オクマワラビ、イノモトソウ、シシガシラ、イヌシダ、タチクラマゴケ、イチゴツナギ、アオウシノケグサ、
イトアオスゲ、アオスゲ、メアオスゲ、ヒカゲスゲ、モエギスゲ、ササノハスゲ、ヌカボシソウ、チヂミザサ、ショウジョウバカマ、タチツボスミレ、
ナガバノタチツボスミレ、アオイスミレ、シハイスミレ、ヤマムグラ、ミヤコアオイ、ヤマルリソウ、ツクバキンモンソウ、ミヤマヨメナ、キッコウハグマ、
センボンヤリ、コオニタビラコなどの草本が見られた。

最終更新日:10th.May.2015

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