ワカサハマギク Chrysanthemum wakasaense  Shimot. ex Kitam.
  海岸・草地・崖地の植物 キク科 キク属
Fig.1 (兵庫県新温泉町・海岸の草地斜面 2016.10/27)

Fig.2 (兵庫県豊岡市・草地斜面 2016.11/30)

主に日本海側の沿岸の草地斜面や崖地に生育する多年草。
リュウノウギクに近縁で、2倍体となり、染色体数はリュウノウギクが2n=18に対し2n=36となる。
細長い地下茎を出す。茎は高さ40〜80cmで、まばらに枝を分ける。
葉は卵形または広卵形で、長さ4〜10cm、ふつう3中裂、まれに3浅裂し、大きな鋸歯がある。
葉の表面は緑色で短毛があり、裏面は密にT字状毛があって灰白色、洋紙質。基部はくさび状となる。
頭花はふつう細長い枝の先に単生し、径2.5〜5cm。花柄は長さ2.5〜7cm。
総苞は半球形、片は3列に並び、同長、外片は線形で鈍頭、先は乾膜質で背部に灰白色毛がある。
舌状花は白色、のちに淡紅色となるものがある。痩果は長さ1.5〜1.9mm。
近縁種 : リュウノウギクノジギク

■分布:本州(主に福井〜鳥取県の日本海側、滋賀、三重)
■生育環境:主に日本海側の沿岸の草地斜面や崖地など。
■花期:9〜11月

Fig.3 茎と葉柄。(兵庫県豊岡市・海岸の岩場 2016.11/30)
  茎に灰白色の毛が生える。葉は互生し、短い柄があって毛が生えている。

Fig.4 葉。(兵庫県新温泉町・海岸の草地斜面 2016.10/27)
  葉は卵形または広卵形で、長さ4〜10cm、ふつう3中裂、まれに3浅裂し、大きな鋸歯がある。
  葉の形はノジギクよりもリュウノウギクに似ているが、5浅裂のものも見られ、変異幅がある。

Fig.5 葉表と葉裏の拡大。(兵庫県新温泉町・海岸の草地斜面 2016.10/27)
  葉表には短毛が生え、脈上にはやや長い毛がある。裏面は密にT字状毛があって灰白色に見える。

Fig.6 開花し始めた個体。(兵庫県新温泉町・海岸の草地斜面 2016.10/27)
  花数はリュウノウギクよりも多く、頭花もやや大きい。また舌状花も重なり合うものが多い。

Fig.7 頭花。(兵庫県豊岡市・海岸の岩上 2016.11/30)
  舌状花は白色で雌性花、長楕円形で、先はわずかに3裂することが多い。中の両性花は筒状で黄色。

Fig.8 総苞。(兵庫県豊岡市・海岸の岩上 2016.11/30)
  総苞は半球形、片は3列に並び、同長、外片は線形で鈍頭、先は乾膜質で背部に灰白色毛がある。

Fig.9 果実期の草体。(兵庫県豊岡市・海岸の草地斜面 2016.11/30)
  痩果は冠毛を持たず立ち枯れているように見える。

Fig.10 宿存した筒状花と痩果。(兵庫県豊岡市・海岸の草地斜面 2016.11/30)
  冠毛はなく、筒状花は枯れた後にも宿存するが、痩果から容易に脱落する。

Fig.11 痩果。(兵庫県豊岡市・海岸の草地斜面 2016.11/30)
  痩果は赤褐色〜暗褐色、長さ1.5〜1.9mm。表面には縦の隆条があり、その間は光沢がある。

生育環境と生態
Fig.12 海崖の岩上に生育するワカサハマギク。(兵庫県新温泉町・海岸の岩上 2016.10/27)
兵庫県但馬地方の沿岸部では海岸の岩上から風衡地の草地斜面のいたるところでワカサハマギクが見られる。
ここでは草地が入り混じる急傾斜地の岩上にワカサハマギクが点在していた。タンゴイワガサ、ニッコウバイカウツギ、ウツギ、タニウツギ、
テリハノイバラ、トベラなどの低木に混じってオニヤブソテツ、クマワラビ、イヌシダ、イソアオスゲ、ショウジョウスゲ、イソヤマテンツキ、
ススキ、トダシバ、アズマガヤ、ハマエノコロ、コオニユリ、ヒオウギ、オオバギボウシ、オオバスギカズラ、ニオウヤブマオ、ヤマハタザオ、
メノマンネングサ、ハマボッス、ツリガネニンジン、アキノキリンソウ、ヨモギ、ハマベノギク、ツワブキなどとともに生育している。

Fig.13 ハマベノギクと岩上で混生するワカサハマギク。(兵庫県豊岡市・海岸の岩上 2016.10/27)
ここではトベラ、シャリンバイ、マルバグミ、イヌビワ、イボタノキ、キンギンボクなどからなる低木林と、海岸の間の岩場にハマベノギクとともに点在している。
同所的にオニヤブソテツ、アズマガヤ、ハマエノコロ、イソアオスゲ、ツルボ、ヤブカンゾウ、オオタチツボスミレ、カワラナデシコ、アキカラマツ、ネコハギ、
メノマンネングサ、テリハノイバラ、ナワシロイチゴ、センニンソウ、ハマサオトメカズラ、ハマボッス、ツリガネニンジンなどが見られた。


最終更新日:6th.Dec.2016

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