サンインシロカネソウ | Dichocarpum nipponicum (Franch.) W.T. Wang et Hsiao var. sarmentosum (Ohwi.) Tamura et K.Kosuge |
||
山地・渓流の植物 兵庫県RDB Cランク種 | キンポウゲ科 シロカネソウ属 |
Fig.1 (兵庫県但馬地方・濡れた岩壁 2014.5/30) |
||
Fig.2 (兵庫県但馬地方・濡れた岩壁 2014.5/30) 温帯林の渓流畔や濡れた岩壁などに生育する多年草。 地下茎は短く、鱗片に密に覆われる。茎は高さ5〜18cmとなる。根生葉は1〜2個あり、柄とともに長さ3〜11cm、3小葉からなる。 茎葉は途中にはほとんど付かず、上部に対生し、3小葉からなり、頂小葉は倒卵形〜扇形で、基部はくさび形、鈍鋸歯がある。 花は平開せず、下垂して咲くことが多く、径6〜10mm、萼片は5個で花弁状となり、淡黄緑色、下部はふつう紫色を帯びる。 花弁は萼片よりも小さく、蜜を分泌する蜜弁となり、橙黄色を帯びた舷部と柄からなり、柄は舷部よりも長い。舷部は1枚で内曲する。 花後、腋芽が長い匐枝となって地表を這って繁殖し、根茎の発達は悪い。種子は球形、表面には微小ないぼ状の低い突起があり、径0.8〜1mm。 開花期が終わると閉鎖花をつけるが、トウゴクサバノオのような基部から出る特殊化したものではなく、ふつうの花茎につく。 アズマシロカネソウ(var. nipponicum)…草体はサンインシロカネソウよりも大きく、花後に匐枝は出さない。分布:秋田〜福井の日本海側。 ツルシロカネソウ(D. stoloniferum)…花は上向きで、萼は白色で平開。長い匍匐枝を出して殖える。分布:本州太平洋側(神奈川〜奈良)。 サイコクサバノオ(D. dicarpon var.univalve)…萼は緑白色。花弁の舷部は1片のみからなり、茎や葉裏に軟毛がある。 分布:近畿地方と四国の温帯林中。 トウゴクサバノオ(D. trachyspermum)…花の径6〜8mmで、萼外側は着色しない。基部から特殊化した有茎の閉鎖花を複数出す。 種子表面には顕著な突起がある。 分布:本州(宮城以南)、四国、九州の暖帯林。 近縁種 : アズマシロカネソウ、 ツルシロカネソウ、 サイコクサバノオ、 トウゴクサバノオ キバナサバノオ ■分布:本州(福井県〜島根県の日本海側) ■生育環境:温帯林下の渓流畔や濡れた岩壁など。 ■花期:5〜6月 |
||
↑Fig.3 サンインシロカネソウの草体。(兵庫県但馬地方・渓谷の濡れた岩壁 2013.5/8) 画像は3つの個体がかたまっており、基部からそれぞれ1〜2個の根生葉を出している。 茎の途中にはほとんど茎葉は付かず、上部で2個の茎葉が対生する。 |
||
↑Fig.4 根生葉。(兵庫県但馬地方・渓谷の濡れた岩壁 2013.5/8) 根生葉は3小葉からなり、頂小葉は倒卵形〜扇形、基部はくさび形、縁には鈍鋸歯がある。 |
||
↑Fig.5 茎葉。(兵庫県北播地方・渓流畔 2013.5/8) 茎葉はふつう3小葉で、柄とともに長さ1.2〜4.5cm、頂小葉は根生葉と同様。 |
||
↑Fig.6 多数の花をつける個体。(兵庫県但馬地方・渓谷の濡れた岩壁 2013.5/8) 多数の花をつけるものは、上部の茎葉の葉腋から分枝して、その先に花を単生する。 分枝した花茎には苞状の単葉が対生する。画像からは、2対の茎葉の基部が合着して茎をゆるく杯状に包んでいるのが分かる。 分枝した花茎の2対の苞状葉の基部も同様で、苞状葉の基部からはさらに小さな花茎を分枝している。 |
||
↑Fig.7 花は下向きに開き、萼片下半部は紫色を帯びる。(兵庫県北播地方・渓流畔 2013.5/8) |
||
↑Fig.8 花。(兵庫県但馬地方・濡れた岩壁 2014.5/30) 萼片は5個、狭倒卵形で、長さ7〜9mm、淡黄緑色、下部はふつう紫色を帯びる。 花弁は密弁化し、舷部は鮮黄色〜橙黄色で、舷部よりも柄が長い。雄蕊は多数。心皮は2個。 |
||
↑Fig.9 花の拡大。(兵庫県北播地方・渓流畔 2013.5/8) 密弁の舷部は内曲する。雄蕊は葯の裂開に伴って花の中心に寄り集まって、心皮を覆い隠す。 キバナサバノオでは雄蕊は葯の裂開に伴って外側に倒伏する。 |
||
↑Fig.10 果実期の袋果。(兵庫県但馬地方・渓流畔 2014.5/30) 花後、心皮は袋果となって平開する。1個の袋果に10〜12個の種子ができる。 |
||
↑Fig.11 閉鎖花。(兵庫県但馬地方・渓流畔 2014.6/25) 開花期が終わっても、上部の葉腋に閉鎖花をつける。閉鎖花は正常花のつぼみよりも小さく、雄蕊数や種子数は少ないという。 |
||
↑Fig.12 種子。(兵庫県但馬地方・渓流畔 2014.6/25) 種子は球形、ルーペで見ると光沢があり平滑に見え、径0.8〜1mm、淡褐色。 |
||
↑Fig.13 種子表面の拡大。(兵庫県但馬地方・渓流畔 2014.6/25) 表面には微小ないぼ状の低い突起がある。 |
||
↑Fig.14 秋に不時開花するもの。(兵庫県但馬地方・濡れた岩壁 2011.10/11) 閉鎖花をつけるためか、スミレ類やタツナミソウ類のように秋に不時開花することがある。 画像の個体は花梗もしっかり伸びて開花準備のできた大きなつぼみがついている。 |
生育環境と生態 |
Fig.15 谷筋の岩壁に生育するサンインシロカネソウ。(兵庫県但馬地方・谷筋 2013.5/8) サンインシロカネソウは濡れた岩壁などの湿った急傾斜地に現れることが多い。 ここでは蘚類に覆われた湧水で多湿となっている岩壁でオクノカンスゲ、サンインネコノメ、ツルネコノメソウ、シラネセンキュウ、 オトギリソウなどとともに生育していた。 |
||
Fig.16 急傾斜な渓流畔で生育するサンインシロカネソウ。(兵庫県但馬地方・渓流畔 2014.5/30) 5月に入っても残雪の残る、急傾斜な山腹斜面を流れる細流脇の多湿な草地に多くの個体が生育していた。 ここでは画像中に見られるエンコウソウ、サラシナショウマ、オニシモツケ、タマガワホトトギス、ミズタビラコのほか、バイケイソウ、 ショウジョウスゲ、ニョイスミレ、オトギリソウ、オオバミゾホオズキ、チョウジギクなどとともに生育している。 |