ササノハスゲ Carex pachygyna  Franch. et Sav.
  山地・林縁の植物 カヤツリグサ科 スゲ属 タガネソウ節
Fig.1 (兵庫県神戸市・林縁 2010.5/21)

Fig.2 (兵庫県篠山市・雑木林の細流脇 2012.5/5)

低山〜山地の林縁、特に斜面に見ることが多い多年草。
根茎は匍匐して、肥厚し、まばらに生える。葉は披針形で幅1〜2cm、無毛、花期にも前年葉が枯れずに残る。
有花茎は高さ15〜30cm。有花茎の葉は退化して苞と同形。苞は卵形で、基部は鞘となる。
小穂は1節に2〜3個つき、雄雌性、球形で長さ4〜5mm。雌鱗片は広卵形で円頭、緑白色、果胞より短い。
果胞は長さ2〜2.5mm、無毛。柱頭は3岐する。
近縁種 : タガネソウケタガネソウ

■分布:本州(近畿以西)、四国
■生育環境:低山〜山地の林縁など。やや湿った斜面に多い。
■果実期:5〜6月

Fig.3 全草標本。(兵庫県神戸市・林縁 2010.5/21)
  果実期になっても長い前年葉が残る。有花茎は新鞘の脇から出る。

Fig.4 基部と根茎。(兵庫県神戸市・林縁 2010.5/21)
  基部の鞘は下方のものほど赤味を帯びる。根茎は地中の浅いところを横走する。

Fig.5 肥厚した根茎。(兵庫県神戸市・林縁 2010.5/21)
  経年した古い基部があった部分は塊茎状に肥厚する(黄色矢印部分)。

Fig.6 新鞘と前年葉。(兵庫県神戸市・林縁 2010.5/21)
  今年出た新鞘は緑色で立ち上がって基部の赤味だ目立ち、やわらかく、前年葉は濃緑色で長く、硬く、地表に倒伏する。
  前年葉や成葉では葉裏に短毛が見られるが、新葉ではほとんど目立たない。

Fig.7 着色した新葉。(兵庫県神戸市・林縁 2010.5/21)
  ときに新葉は細かい斑入り状に着色することがあるが、成葉になるにつれて消失してゆく。
  注)上下と左に見える明瞭な斑模様を持った長楕円形の葉はヤマジノホトトギスのもの。

Fig.8 有花茎。(兵庫県神戸市・林縁 2010.5/21)
  1節にふつう2〜3個の小穂がつき、基部が鞘となる卵形の苞をともなう。

Fig.9 苞から出た2個の小穂。(兵庫県神戸市・林縁 2010.5/21)
  小穂は数個の花が球形に集まる。ふつう雄雌性だが雄花部は小さく、果胞がふくらみはじめるとその間に埋没して目立たない。

Fig.10 雄花部が見える未熟な小穂。(兵庫県神戸市・林縁 2010.5/21)
  雄花部は小さな披針形で花軸の先につく(黄色矢印部分)。

Fig.11 果胞と雌鱗片。(兵庫県神戸市・林縁 2010.5/21)
  果胞は長さ2〜2.5mm、無毛。雌鱗片は広卵形で円頭、緑白色、果胞より短い。

Fig.12 果実期の成葉。(西宮市・落葉広葉樹林床 2010.6/11)
  果実期になると新葉もすっかり伸びて花茎よりも長くなり、花茎は目立たなくなる。

生育環境と生態
Fig.13 林縁のやや湿った斜面に生育するササノハスゲ。(兵庫県神戸市・林縁 2010.5/21)
半日陰の斜面のネザサの被植の薄い場所に点在している。画像に見えるものは地下の根茎でつながっており、1株である。
周辺にはムラサキケマン、ホソバテンナンショウ、フタリシズカ、アカショウマ、ウド、オオバノヤエムグラなどが生育する。

Fig.14 登山道脇の斜面に群生するササノハスゲ。(兵庫県神戸市・林縁 2010.5/21)
比較的日当たり良い場所で、適湿の草地斜面にササノハスゲが群生している。
同所的にイタドリ、ヤマジノホトトギス、クサイチゴ、トボシガラ、タチツボスミレなどが見られた。

Fig.15 雑木林の細流脇に生育するササノハスゲ。(兵庫県篠山市・細流脇 2012.5/5)
コナラ、アカマツを主体とする雑木林内の細流脇に生育していた。
同所的にクサスゲ、サトヤマハリスゲ、シシガシラ、ミゾシダ、ヤワラシダ、イタドリ、シラヤマギクなどが見られた。



最終更新日:7th.May.2013

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