シハイスミレ
 (フイリシハイスミレを含む)
Viola violacea  Makino
  里山・林縁・林床の植物 スミレ科 スミレ属
Fig.1 (西宮市・雑木林の林縁 2010.4/13)
丘陵〜山地の乾いた林縁や2次林の林床に生育する多年草。
ふつう無毛。地下茎は短い。葉は斜上し、葉柄は長さ2〜10cm。
葉身は3角状狭卵形、長くとがり、長さ2〜4cm、低い鋸歯があり、基部は深い心形、表面は深緑色で、裏面は紫色を帯びる。
花柄は長さ5〜8cm。花は淡紅紫色〜濃紅紫色。萼片は広披針形。花弁は長さ8〜12mm、側弁は無毛、距は長さ5〜6mmで細く、上へ曲がる。

マキノスミレ(var. makinoi)は葉が長披針形で直立気味、葉の裏面はあまり紫色とならない。
ヒナスミレV. tokubuchiana var. takedana)は葉を水平に近く広げ、葉先が急に狭くなり鋭頭、側弁はふつう有毛、茎や葉は有毛。
フモトスミレV. sieboldii)はふつう酔う面に毛があり、花は白色で径約1cmと小さい。
近縁種 : マキノスミレ、 コンピラスミレ、 ヒナスミレ、 フモトスミレ

■分布:本州(長野県南部以西)、四国、九州 ・ 朝鮮南部
■生育環境:丘陵〜山地の乾いた林縁や2次林の林床など。里山に多い。
■花期:4〜5月

Fig.2 シハイスミレの花。(西宮市・疎林の林床 2008.4/16)
  花は淡紅紫色〜濃紅紫色。西宮市内では淡紅紫色のものがほとんどである。距は細く、上に曲がる。

Fig.3 花の拡大。(西宮市・山中の河原 2009.4/9)
  側弁は無毛。

Fig.4 同じ場所でも葉身には様々な変異が見られる。(西宮市・雑木林の林床 2010.4/13)
  画像のものは葉脈に沿って白い斑が入るもので、フイリシハイスミレ(f. versicolor)とされるが、生態的な差はない。

Fig.5 フイリシハイスミレの葉身。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2014.5/20)

Fig.6 Fig.4と同じ雑木林に生育していた個体。(西宮市・雑木林の林床 2010.4/13)
  こちらのものは葉身に斑がなくやや小型でのっぺりとした印象を受ける。また非常に花付きのよい個体であった。
  画像のような小型の葉をもつものは、葉身に斑が入るものは少ない。

Fig.7 ハグロシハイスミレと称される個体。(兵庫県篠山市・疎林の林床 2012.5/5)
  葉の表面が黒紫色〜暗紅紫色となるものの通称。近辺では三田市や篠山市南部に多い。

Fig.8 ハグロシハイスミレの葉裏。(神戸市・疎林の林床 2013.4/7)
  葉裏は強く紅紫色を帯びている。

Fig.9 刮ハ。(兵庫県神河町・疎林の林床 2015.5/3)
  刮ハは球形に近い倒卵形で、赤褐色の斑が入る。

Fig.10 秋に不時開花した個体。(兵庫県三田市・林縁 2014.11/11)
  秋葉なので春先の開花時とは印象が異なる。

生育環境と生態
Fig.11 雑木林の林床に生育するシハイスミレ。(西宮市・雑木林の林床 2010.4/13)
コナラ、アベマキ、ソヨゴ、アカマツなどの雑木林の林縁近くのやや明るい林床に生育していた。
周辺にはツルアリドオシ、シュンラン、ジャノヒゲ、シシガシラなどがまばらに生育していた。

Fig.12 崩壊地の斜面に生育するシハイスミレ。(西宮市・林縁の崩壊地斜面 2012.4/24)
シハイスミレはナガバノタチツボスミレよりも日陰を好むという印象があったが、ここでは日当たりよい崩壊地に生育していた。

Fig.13 伐採後の雑木林に生育するシハイスミレ。(兵庫県篠山市・伐採地 2012.5/5)
日当たり良い伐採管理された雑木林にヒメハギとともにハグロシハイスミレが点々と生育していた。
伐採跡地にはイヌツゲの幼木、タラノキの幼木、ナガバモミジイチゴ、サルトリイバラなどが生育しはじめている。
ヒメハギが生育するようなかなり乾燥する場所だが、シハイスミレは乾燥地にも強いようだ。


最終更新日:9th.Sep.2016

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