タカサゴシダ | Dryopteris formosana (Christ) C. Chr. | ||
林床・岩上のシダ 兵庫県RDB Aランク種 |
オシダ科 オシダ属 |
Fig.1 (兵庫県丹波地方・林床 2013.2/12) 低山地の林床や岩上にやや稀に生育する常緑性シダ。 根茎は斜上、塊状となり、少数の葉を叢生し、鱗片がある。 葉柄は長さ30〜60cm、わら色であるが、暗褐色の部分もある。 葉柄の鱗片は下部のものは披針形で全縁、長さ0.5〜1.5cm、黒褐色で光沢がある。 葉柄上部や中軸の鱗片は線形で小さく、早落性。 葉質はやや硬い草質から紙質、表面はやや濃い緑色。 葉身は卵状三角形または五角状、鋭尖頭、長さ30〜50cm、幅25〜35cm、3回羽状深裂〜全裂する。 最下羽片は非対称の三角形、下向き第一小羽片は大きく、下から5番目の羽片とほぼ同大。 小羽片は長楕円状披針形、鈍頭、羽状に深裂〜全裂。裂片には鋸歯があり、その先は細く尖る。 羽軸の鱗片は基部が少しふくれ袋状、小羽軸の鱗片は小さくて袋状。 ソーラスは中間生で、包膜は径約1mm、全縁。 染色体数はn=123の3倍体無融合生殖と2n=164がある。 メモ : 兵庫県では自然環境の残った場所に見られる稀なシダで、現在3ヶ所の自生地が知られている。 3ヶ所とも近年相次いで発見されたため、まだ絶滅危惧種として評価されていないが、Aランク相当と思われる。 近縁種 : トウゴクシダ、 ヒメイタチシダ、 ミヤマイタチシダ、ナガバノイタチシダ ■分布:本州(東海地方以西)、九州(屋久島・種子島以北と奄美大島) ・ 台湾、フィリピン ■生育環境:低山地の林床や岩上など。暖帯域。 |
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↑Fig.2 全草標本。(兵庫県丹波地方・林床 2013.2/12) 葉質はやや硬い草質から紙質、表面はやや濃い緑色、無毛。最下羽片の下側第一小羽片が極端に長くなる。 葉身は卵状三角形または五角状、鋭尖頭、長さ30〜50cm、幅25〜35cm、3回羽状深裂〜全裂する。 葉先は急に狭くなり、その先は尾状に伸びる。葉柄はわら色であるが、暗褐色の部分もある。 |
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↑Fig.3 葉柄基部の鱗片。(兵庫県丹波地方・林床 2013.2/12) 披針形で全縁、長さ0.5〜1.5cm、黒褐色で光沢がある。 |
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↑Fig.4 葉柄基部鱗片の拡大。(兵庫県丹波地方・林床 2013.2/12) |
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↑Fig.5 最下羽片。(兵庫県丹波地方・林床 2013.2/12) 原記載は台湾産のもので、対になった最下羽片の第一小羽片の間が少し離れるという。屋久島のものも同様だという。 本州産のものは画像のように、対になった第一小羽片の間はほとんど離れない。 |
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↑Fig.6 中軸、羽軸、小羽軸の裏面。(兵庫県丹波地方・林床 2013.2/12) 中軸の鱗片は黒褐色、線形で小さい。羽軸・小羽軸ともに袋状鱗片が多くつく。 |
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↑Fig.7 羽軸鱗片の拡大。(兵庫県丹波地方・林床 2013.2/12) 羽軸の鱗片は基部がふくらんで袋状、上部は披針形〜線形。 |
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↑Fig.8 小羽軸鱗片の拡大。(兵庫県丹波地方・林床 2013.2/12) 小羽軸の鱗片はほぼ袋状、上部は線形となるが発達しないものも多い。 |
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↑Fig.9 小羽片の拡大。(兵庫県丹波地方・林床 2013.2/12) 小羽片は深裂し、表面は無毛、先が芒状に尖った鋸歯がある。 |
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↑Fig.10 葉身裏面。(兵庫県丹波地方・林床 2013.2/12) 葉裏は淡緑色。ソーラスは葉身の上からつきはじめ、中間生。 |
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↑Fig.11 苞膜は灰白色。(兵庫県丹波地方・林床 2013.6/7) |
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↑Fig.12 フィドルヘッド。(兵庫県播磨地方・山腹斜面 2013.4/4) 淡緑色の地色に黒褐色の鱗片がつく。 |
生育環境と生態 |
Fig.13 植林地の斜面に群生するタカサゴシダ。(兵庫県丹波地方・林床 2013.2/12) シカの食害を免れて、表土の薄いチャートが露出しかかった斜面に、生育良好な集団が生育している。 周辺にはベニシダ、トウゴクシダ、オオベニシダ、マルバベニシダ、サイゴクベニシダ、ヤマイタチシダ、ミヤマイタチシダ、オクマワラビ、ヤブソテツ、 ナンゴクナライシダ、ホソバナライシダ、イノデ、リョウメンシダ、キジノオシダ、イワガネソウ、ウラジロ、コバノイシカグマ、ヌリトラノオ、カミガモシダ、 シシガシラなどのシダ類が見られた。 |
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Fig.14 開けた山腹に生育するタカサゴシダ。(兵庫県播磨地方・岩場のある山腹 2011.12/18) 日あたり良い岩場交じりの山腹に生育しているもので、葉身は大きく、葉質はやや厚く、少し光沢を生じている。 日あたり良い場所のものは最下羽片下側の第一小羽片が短いものが多く、いわゆるタカサゴシダモドキと呼ばれるタイプに近い。 周辺の林下で日陰となるところでは典型的なタカサゴシダが生育していた。 周辺にはハチジョウベニシダも見られる人の手があまり入っていない場所である。 |