トウゴクシダ Dryopteris nipponensis  Koidz.
  里山・雑木林・林縁・林床のシダ オシダ科 オシダ属
Fig.1 (西宮市・林縁 2011.12/19)

Fig.2 (兵庫県篠山市・岩壁 2014.1/23)

低地〜山地の林縁、林床などに比較的普通な常緑性シダ。3倍体で無融合生殖し、ベニシダに似る。
以下の特徴によってベニシダと分けられる。
・葉柄の鱗片は黒褐色、中軸や羽軸にも黒っぽくて早落性の鱗片が多い。
・葉身は広卵形で急鋭尖頭。
・最下羽片の下向き第1小羽片は長い。
・小羽片は卵状長楕円形〜卵形、羽状に浅裂〜深裂し、下部の小羽片は有柄。
・葉質はしなやかな紙質で、表面の光沢は少ない。
・若い葉はふつう紅色を帯びない。(稀に赤いものもある。)
・胞子嚢群はやや小さく、苞膜はふつう紅紫色を帯びない。(ごく稀に紅紫色を帯びるものもある。)
以上のような特徴があるが、変異が多くて移行的な特徴を持つものもよく見かけ、区別に迷うものも多い。
トウゴクシダの名は愛知県の東谷山で発見されたことによるもの。
染色体数は'n'=123の3倍体無融合生殖。

ベニシダD. erythrosora)は最下小羽片は長楕円形であまり切れ込まない。包膜は紅色。鱗片は茶褐色〜黒褐色。
オオベニシダD. hondoensis)は基部鱗片が茶色〜茶褐色。最下の小羽片には短柄がある。包膜はふつう白色。
タカサゴシダD. hondoensis)は基部鱗片が黒褐色。最下の下向き第一小羽片は長くのびる。鋸歯の先は芒状にとがる。稀。
ハチジョウベニシダD. caudipinna)は鱗片が淡褐色。包膜は紅色。小羽片は細長く、平行につく。胞子は胞子嚢内に64個ある。稀。
ヌカイタシダD. gymnosora)はソーラスに苞膜はなく、葉の下方から順につく。葉柄基部の鱗片は黒褐色。
ギフベニシダD. kinkiensis)は葉に光沢があり、羽軸裏には基部が扁平の鱗片がつく。葉先はしだいに狭くなる。
ヌカイタシダモドキD. indusiata)やヌカイタシダマガイD. simasakii)は羽片はほぼ無柄。羽片や小羽片は軸に直交してつく。稀。
近縁種 : ベニシダ、 オオベニシダハチジョウベニシダマルバベニシダタカサゴシダサイゴクベニシダ ヌカイタチシダマガイ

■分布:北海道、本州、四国、九州
■生育環境:平地から山地の雑木林の林床や林縁など。

Fig.3 地上部標本 (3063 HYO)。(兵庫県姫路市・林縁 2011.12/18)
  葉身は広卵形で急鋭尖頭。最下羽片の下向き第1小羽片は長い。

Fig.4 葉柄下部の鱗片。(兵庫県姫路市・林縁 2011.12/18)
  葉柄の鱗片は黒褐色、中軸や羽軸にも黒っぽくて早落性の鱗片が多い。

Fig.5 最下羽片。(兵庫県姫路市・林縁 2011.12/18)
  最下羽片の下向き第1小羽片は長く、浅裂〜深裂し、短い柄がある。
  ときに下向き第1小羽片がかなり長く、タカサゴシダのように見えるものがあるが、ソーラスの大きさで判断できる。

Fig.6 ソーラス。(兵庫県姫路市・林縁 2011.12/18)
  ソーラスは小羽片の中肋と辺縁の中間につき、やや小さい。

Fig.7 赤味を帯びた新葉。(兵庫県丹波市・林縁 2013.4/11)
  展葉間もない葉はふつう紅色を帯びないが、稀に赤くなるものも見られる。

Fig.8 葉のヴァリエーション。(京都府亀岡市・林床 2013.3/15)
  タカサゴシダに似たもの。岩場で見かけるとハッとする。
  タカサゴシダはトウゴクシダよりもソーラスが大きく、鋸歯の先が芒状となるので区別できる。

生育環境と生態
Fig.9 低山の谷間の雑木林を通る遊歩道に点在するトウゴクシダ。(西宮市・雑木林 2011.12/19)
西宮市内の雑木林のやや湿った場所ではベニシダよりもトウゴクシダが普通な場所も多い。
明るい疎林で、周辺にはリョウメンシダ、ヤマヤブソテツ、ベニシダ、アリマイトスゲ、ノギラン、ナガバモミジイチゴ、イヌコウジュ、
アリマウマノスズクサなどが生育している。

Fig.10 林道脇の土崖に生育するトウゴクシダ。(兵庫県三田市・林道脇 2011.10/13)
溜池が連続する谷間の林道脇に生育しているもので、付近はベニシダのほうが多く見られた。
周辺はアカマツ、コナラ、アベマキからなる雑木林で、林床にはシシガシラが多く、ヒサカキ、ナツナゼ、コウヤボウキなどが生育する。


最終更新日:15th.Feb.2014

<<<戻る TOPページ