マルバベニシダ | Dryopteris fuscipes C. Chr. | ||
里山・雑木林・林縁・林床のシダ | オシダ科 オシダ属 |
Fig.1 (西宮市・林縁の水路脇土手 2012.3/19) |
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Fig.2 (兵庫県篠山市・社寺境内の林縁 2013.6/18) 低山〜山地の林縁、林床などに生育する常緑性シダ。 根茎は短く、斜上、塊状となり、葉を叢生し、鱗片をつける。 葉柄は長さ20〜40cm、鱗片を密生し、わら色。葉質は硬い紙質からほとんど革質、若いときは赤みを帯びる。 葉柄の鱗片は線状披針形、先端は尾状に伸び、全縁、赤褐色〜濃褐色、基部のものは長さ1.5cmに達し、上部のものほど小さく落ちやすい。 葉身は2回羽状複生、卵状長楕円形〜三角状卵形、長さ25〜60cm、幅15〜30cm、中軸には線形の鱗片がある。 羽片は披針形で長く鋭尖頭、幅2〜4cm、羽軸には袋状鱗片がある。 小羽片は形や大きさに変異があるが、平均的には長楕円形、円頭〜鋭頭、鋸歯縁〜中裂、基部両側が耳状になり短い柄のあるものもある。 ソーラスは小羽片の中肋に沿ってつき、苞膜は径1〜1.5mm、全縁。胞子表面には小さいこぶと、長いこぶが混じる。 染色体数'n'=123の3倍体で無融合生殖する。 メモ : オオマルバベニシダ(エンシュウベニシダ)をマルバベニシダと同一種とすることがあるが、芽出しの色やフィドルヘッドの状態は異なる。 オオマルバベニシダ(D. medioxima)は小羽片基部は耳状となり、芽出しの葉は緑色。より大型となる。 サイゴクベニシダ(D. championii)は葉の光沢が強く、中軸に鱗片が多つき、鱗片基部には鋸歯がある。ソーラスは小羽片の中間〜辺縁寄りにつく。 ギフベニシダ(D. kinkiensis)は中軸の鱗片はより少なく、圧着気味につき、羽軸の鱗片は袋状とならない。 近縁種 : サイゴクベニシダ、 オオマルバベニシダ、 ベニシダ、 ギフベニシダ、 ナチクジャク、 イヌナチクジャク、 トウゴクシダ、 オオベニシダ、 ハチジョウベニシダ、 タカサゴシダ ■分布:本州(北陸、関東地方以西)、四国、九州 ・ 朝鮮半島、中国、台湾、インドシナ ■生育環境:平地から山地の林床や林縁など。 |
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↑Fig.3 地上部標本。(兵庫県篠山市・林縁 2013.2/28) 葉身は2回羽状複生、卵状長楕円形〜三角状卵形。葉質は硬い紙質からほとんど革質。 シンプルな形状だが、葉先があまり伸びないものや、小羽片基部が耳状になるものなど、変異が多い。 |
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↑Fig.4 葉柄下部の鱗片。(兵庫県篠山市・林縁 2013.2/28) 葉柄の鱗片は線状披針形、先端は尾状に伸び、全縁、赤褐色〜濃褐色、基部のものは長さ1.5cmに達する。 |
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↑Fig.5 中軸の鱗片。(兵庫県篠山市・林縁 2013.2/28) 中軸には線形の鱗片がある。 |
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↑Fig.6 最下羽片。(兵庫県篠山市・林縁 2013.2/28) 最下羽片の下側第一小羽片は小さい。小羽片は長楕円形。 |
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↑Fig.7 ソーラス。(兵庫県篠山市・林縁 2013.2/28) ソーラスは小羽片の中肋に沿ってつき、苞膜は全縁。 |
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↑Fig.8 葉身上部のソーラス。(兵庫県篠山市・林縁 2013.2/28) 葉身上部ではソーラスは羽軸に沿ってつく。羽軸には小さな袋状鱗片がある。 |
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↑Fig.9 フィドルヘッド。(兵庫県丹波市・林道脇 2013.4/23) 地色は赤色で、赤褐色の鱗片に覆われる。 オオマルバベニシダのフィドルヘッドは赤く染まらず、地色は緑色。 |
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↑Fig.10 オオマルバベニシダ類似個体。(兵庫県丹波市・林道脇 2013.4/23) 小羽片の基部がやや耳状に出ており、一見するとオオマルバベニシダだが、フィドルヘッドは赤色であった。 |
生育環境と生態 |
Fig.11 社寺林の林縁に生育するマルバベニシダ。(兵庫県篠山市・林縁 2013.3/12) 社寺林のやや乾いた林縁にベニシダ、トウゴクシダ、キジノオシダ、コシダなどとともに生育していた。 マルバベニシダは兵庫県のリストを見ると内陸部からの記録がないが、オオベニシダと同程度には見かける機会がある。 あまり関心が持たれず採集されてこなかっただけだろう。 |
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Fig.12 林道脇に生育するマルバベニシダ。(兵庫県丹波市・林道脇 2013.4/23) 沢沿いの林道脇の半日陰地に数個体が点在していた。 周辺にはトウゲシバ、シシガシラ、ヒロハイヌワラビ、イワガネソウ、リョウメンシダ、フモトシダなどのシダ類、ミヤマフユイチゴ、 ツルアリドオシ、ヤマサギゴケ、サンインクワガタなどが生育していた。 |