オオマルバベニシダ (エンシュウベニシダ) |
Dryopteris medioxima Koidz | ||
里山・雑木林・林縁・林床のシダ | オシダ科 オシダ属 |
Fig.1 (兵庫県丹波市・溜池の縁 2013.7/16) 丘陵〜山地の林縁、林床などに生育する常緑性シダ。 マルバベニシダとサイゴクベニシダとの中間的な形態を持つ。 根茎は短く、斜上、先端は塊状となり、葉を叢生し、鱗片をつける。 葉柄や葉軸にはやや密に鱗片をつける。鱗片は褐色〜汚褐色、光沢の少ない披針形で、辺縁にはほとんど突起がない。 葉身は濃緑色で、光沢のある中厚革質、広卵形で、2回羽状複生し、葉身全体の形はマルバベニシダに似る。新葉は緑色。 小羽片は浅〜中裂し、縁には鈍鋸歯があり、羽片の基部寄りにつく小羽片の基部は耳状に出る。羽軸裏には袋状鱗片がある。 ソーラスは中肋寄りにつき、包膜は円腎形で白色。 メモ : マルバベニシダに含める立場があるが、芽出しの色やフィドルヘッドの状態は異なる。 関西ではマルバベニシダよりも見る機会はかなり少ない。 マルバベニシダ(D. fuscipes)はふつう小羽片基部は耳状にならず長楕円形、ソーラスは小羽片の中軸寄りにつく。芽出しの葉は赤く染まる。 サイゴクベニシダ(D. championii)は葉の光沢が強く、中軸に鱗片が多つき、鱗片基部には鋸歯がある。ソーラスは小羽片の中間〜辺縁寄りにつく。 ギフベニシダ(D. kinkiensis)は中軸の鱗片はより少なく、圧着気味につき、羽軸の鱗片は袋状とならない。 アツギノヌカイタチシダマガイ(D. simasakii var. paleacea)は中軸に褐色の鱗片が密生し、羽軸と中軸はほぼ直交し、小羽片は中裂し、 鱗片の突起は顕著でない。 ヌカイタチシダモドキ(D. indusiata)は羽片・小羽片ともにほぼ無柄、羽軸と中軸はほぼ直交し、小羽片は中裂、基部鱗片は黒〜黒褐色。 ヌカイタチシダマガイ(D. simasakii)はヌカイタチシダモドキに似て、表面に光沢がなく、基部鱗片は広披針形〜長卵形、褐色〜淡褐色。 近縁種 : マルバベニシダ、 サイゴクベニシダ、 アツギノヌカイタチシダマガイ、 ギフベニシダ、 ナチクジャク、 イヌナチクジャク、 ベニシダ、 トウゴクシダ、 オオベニシダ、 ハチジョウベニシダ、 タカサゴシダ ■分布:本州(関東地方以西)、四国、九州 ■生育環境:平地から山地の林床や林縁など。 |
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↑Fig.2 地上部標本。(兵庫県丹波市・溜池の縁 2013.4/23) 葉身は2回羽状複生、卵状長楕円形。葉質は中厚な革質。羽片の柄はふつうマルバベニシダよりも明瞭。 羽片の基部寄りにつく小羽片の基部は耳状に出る。 |
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↑Fig.3 葉柄下部の鱗片。(兵庫県丹波市・溜池の縁 2013.7/16) 葉柄の鱗片は披針形、先端は尾状に伸び、ほぼ全縁、褐色〜汚褐色。 サイゴクベニシダの鱗片には基部に鋸歯がある点で区別できる。 |
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↑Fig.4 中軸の鱗片。(兵庫県丹波市・溜池の縁 2013.7/16) 中軸には線形の鱗片がある。 |
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↑Fig.5 最下羽片。(兵庫県丹波市・溜池の縁 2013.4/23) 最下羽片の下側第一小羽片は小さい。小羽片の基部は耳状に出る。 |
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↑Fig.6 羽軸裏の鱗片。(兵庫県丹波市・溜池の縁 2013.7/16) 羽軸裏には基部が袋状となる小さな鱗片がつく。 |
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↑Fig.7 ソーラス。(兵庫県丹波市・溜池の縁 2013.7/16) ソーラスは小羽片の中肋に沿ってつく。 サイゴクベニシダのソーラスは中間〜辺縁寄りにつく。 |
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↑Fig.8 ソーラスの拡大。(兵庫県丹波市・溜池の縁 2013.7/16) 包膜は白色で、ほぼ全縁。 |
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↑Fig.9 フィドルヘッド。(兵庫県丹波市・溜池の縁 2013.4/23) 地色は緑色で、やや灰色を帯びた褐色の鱗片に覆われ、サイゴクベニシダのものにやや似る。 マルバベニシダのように赤く染まらない。 |
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↑Fig.10 ほぼ同一サイズのマルバベニシダとの葉身比較。(兵庫県篠山市・林縁土手 2013.2/21) 左がオオマルバベニシダ、右がマルバベニシダ。ただし、ふつうはオオマルバベニシダの葉のほうがかなり大きい。 オオマルバベニシダの羽片の柄は明瞭で、葉面の色は濃く、光沢も少し強い。 |
生育環境と生態 |
Fig.11 溜池の縁の斜面に生育するオオマルバベニシダ。(兵庫県丹波市・溜池の縁 2013.5/31) まだ展葉間もない個体で、鮮やかな緑色をしている。大きな傷んだ葉は昨年のもの。 付近はシカの食害の激しい場所で、林床にはコバノイシカグマ、オオバノイノモトソウなど、シカの忌避植物のみの被植となっている。 たまたま食しにくい場所に生育していたオオマルバベニシダが運よく生き残ったのだろう。 これまでのところ、オオマルバベニシダは斜面で見かけることが多かった。 |