イヌナチクジャク Dryopteris decipiens  (Hook.) Kuntze
 var. diplazioides  (Christ) Ching
  里山・林縁・林床のシダ オシダ科 オシダ属
Fig.1 (三重県・植林地の林床 2015.11/27)

低山〜山地の林縁、林床などに生育する暖地性の常緑性シダ。
ナチクジャクとマルバベニシダの中間的な特徴を持つ。根茎は短く、斜上し、葉を叢生し、鱗片をつける。
葉柄はわら色。葉質は硬い紙質でやや白っぽく、若いときは赤みを帯びる。
葉柄の鱗片は線状披針形、全縁、褐色〜濃褐色、やや早落性。
葉身は単羽状複生〜2回羽状複生、長楕円状披針形、中軸には披針形で黒褐色の小さな鱗片がある。
羽片は披針形で、基部は心形で短柄があり、羽状に中〜深裂する。
裂片は全縁または小さな鋸歯があり、羽軸の裏面には小さな袋状鱗片がある。
ソーラスは羽片の中肋寄りにふつう1列につき、深裂する羽片では2〜3列に並ぶ。包膜は円腎形、全縁、紅色を帯びない。

ナチクジャクD. decipiens)は単羽状で、羽片は深裂せず、ほぼ波状縁となる。
マルバベニシダD. fuscipes)は葉身は2回羽状複葉となり、最下羽片基部は小羽片が独立してつく。
オオマルバベニシダD. medioxima)は2回羽状複葉で、小羽片基部は耳状となり、芽出しの葉は緑色。より大型となる。
近縁種 : ナチクジャクマルバベニシダオオマルバベニシダサイゴクベニシダ、 ベニシダ、 ギフベニシダトウゴクシダ
オオベニシダハチジョウベニシダタカサゴシダ

■分布:本州(関東南部以西)、四国、九州 ・ 中国
■生育環境:平地から山地の林床や林縁など。

Fig.2 地上部標本。(三重県・植林地の林床 2015.11/27)
  葉柄はわら色。葉質は硬い紙質、光沢がある。葉身は単羽状複生〜2回羽状複生、長楕円状披針形。

Fig.3 葉柄下部の鱗片。(三重県・植林地の林床 2015.11/27)
  葉柄の鱗片は線状披針形、全縁、褐色〜濃褐色。画像のものは泥が付いていて少し解りにくい。

Fig.4 下方の羽片。(三重県・植林地の林床 2015.11/27)
  羽片は披針形で、基部は心形で短柄があり、羽状に中〜深裂、下方の羽片基部では深裂する。

Fig.5 ソーラス。(三重県・植林地の林床 2015.11/27)
  ソーラスは羽片の中肋寄りにふつう1列につき、深裂する羽片では2〜3列に並ぶ。

生育環境と生態
Fig.6 植林地の斜面に生育するイヌナチクジャク。(三重県・植林地の林床 2015.11/27)
スギ・ヒノキの植林地の沢沿いの岩混じりの斜面に、イヌナチクジャクが点在していた。
同所的にナチクジャク、ベニシダ、トウゴクシダ、シシガシラ、キジノオシダ、ウラジロ、コシダなどのシダ類が生育していた。


最終更新日:6th.Mar.2017

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