オオベニシダ Dryopteris hondoensis  Koidz.
  里山・雑木林・林縁・林床のシダ オシダ科 オシダ属
Fig.1 (西宮市・林床 2011.12/19)

Fig.2 (兵庫県篠山市・林床 2013.2/26)

Fig.3 (神戸市・林床 2013.5/13)

低山〜山地の林縁、林床などに生育する常緑性シダ。3倍体で無融合生殖する。
根茎は短く、斜上、塊状となり、葉を叢生し、鱗片をつける。
葉柄は長さ20〜50cm、わら色で、多少褐色を帯びることがある。
葉柄の鱗片は披針形〜狭披針形、全縁、長さ4〜8mm、基部のものでは長さ1cmを超え、褐色〜暗褐色、辺縁はやや淡色、質はやや硬い。
葉身は卵形から3角状広卵形、鋭尖頭、長さ30〜50cm、幅20〜30cm、2回羽状複生〜3回羽状深裂、中軸は褐色となることがあり、小さい鱗片がある。
羽片は有柄、3角状披針形〜披針形、羽軸の鱗片は披針形、扁平なものが多いが、基部が袋状のものも混じる。
小羽片は広披針形〜狭長楕円形、鋭頭〜鈍頭、基部は広いくさび形で無柄、羽状に中裂〜深裂、中肋に小さな袋状鱗片がある。
葉質はやや硬い草質で薄く、淡黄色を帯びた緑色で、光沢はない。
胞子嚢群は小羽片の中肋寄りにつき、包膜は全縁でふつう紅紫色を帯びない。

ベニシダD. erythrosora)は最下小羽片は長楕円形であまり切れ込まない。包膜は紅色。
トウゴクシダD. nipponensis)は基部鱗片が黒色〜黒褐色。葉身の先はふつう急にとがる。
ヌカイタシダマガイD. simasakii)は羽片はほぼ無柄。羽片や小羽片は軸に直交してつく。稀。
近縁種 : ベニシダ、 トウゴクシダハチジョウベニシダマルバベニシダタカサゴシダサイゴクベニシダヌカイタチシダマガイ

■分布:北海道、本州、四国、九州
■生育環境:平地から山地の雑木林の林床や林縁など。

Fig.4 地上部標本 (3060 HYO)。(兵庫県姫路市・林縁 2011.12/18)
  葉身は卵形から3角状広卵形、鋭尖頭、長さ30〜50cm、2回羽状複生〜3回羽状深裂、中軸は褐色となることがある。
  葉質はやや硬い草質で薄く、淡黄色を帯びた緑色で、ベニシダのような光沢はない。

Fig.5 葉柄下部の鱗片。(兵庫県姫路市・林縁 2011.12/18)
  葉柄の鱗片は披針形〜狭披針形、全縁、褐色〜暗褐色、辺縁はやや淡色、質はやや硬い。
  ときによく似るトウゴクシダの葉柄下部の鱗片は黒褐色となることで区別できる。

Fig.6 葉先は次第に狭くなり鋭尖頭。(兵庫県姫路市・林縁 2011.12/18)

Fig.7 最下羽片。(兵庫県姫路市・林縁 2011.12/18)
  最下羽片の小羽片は、上側のものよりも下側のものが大きい。

Fig.8 ソーラス。(西宮市・林縁 2011.12/19)
  オオベニシダのソーラスは中肋寄りにつくのが特徴であるが、この個体は辺縁と中肋の中間についていた。

Fig.9 基部。(西宮市・河畔 2013.1/13)
  基部は褐色の鱗片に覆われている。

Fig.10 若い葉。(兵庫県丹波市・林床 2013.4/11)
  展葉間もない葉は黄緑色。

Fig.11 葉の変異。(兵庫県丹波市・林縁 2013.2/12)
  鱗片の特徴はオオベニシダと変わらないが、小羽片の形が典型的なものと異なっているもので、時折見られる。
  浸透交雑によって生じた変異個体であるかもしれない。

生育環境と生態
Fig.12 低山の雑木林の林縁に生育するオオベニシダ。(兵庫県姫路市・雑木林 2011.12/18)
里山の雑木林の縁にベニシダ(画像下)とともに生育し、周辺にもまばらに点在していた。
ベニシダと比べると葉面に光沢がなく、淡黄色を帯びて質も薄いことがよくわかる。

Fig.13 谷津の林縁部を流れる小川の斜面に生育するオオベニシダ。(兵庫県西宮市・小川の斜面 2012.3/19)
小川の縁の斜面に画像に見えるシシガシラのほか、マルバベニシダ、リョウメンシダ、イノデなどとともに生育している。


最終更新日:9th.Mar.2013

<<<戻る TOPページ