ハチジョウベニシダ Dryopteris caudipinna  Nakai
  里山・雑木林・林縁・林床のシダ 

  兵庫県RDB Aランク種
オシダ科 オシダ属
Fig.1 (兵庫県播磨地方・林縁 2013.4/4)

Fig.2 (兵庫県播磨地方・林縁 2013.4/4)

低地〜山地の林縁、林床などに生育する常緑性シダ。関西ではごく稀なシダ。
ベニシダに似る。鱗片は葉身の各軸に比較的多く残り、淡褐色〜暗褐色。
上部の羽片は急に短くなり、葉身の先端はやや穂状となる。
羽片の先端は尾状。小羽片は無柄、細長く、平行につき、下向き第一小羽片は深裂する。
ソーラスはやや小型でやや密に接近してつき、包膜は紅色。
染色体数はn=41の2倍体。胞子嚢内の胞子数は64個で、ベニシダが32個に対して区別できる。

ベニシダD. erythrosora)は最下小羽片は長楕円形であまり切れ込まない。胞子嚢内の胞子数は32個。
トウゴクシダD. nipponensis)は鱗片が黒褐色。包膜はふつう白色。ソーラスは中間〜やや中肋寄りにつく。
オオベニシダD. hondoensis)は基部鱗片が茶色〜茶褐色。最下の小羽片には短柄がある。包膜はふつう白色。
タカサゴシダD. hondoensis)は基部鱗片が黒褐色。最下の下向き第一小羽片は長くのびる。鋸歯の先は芒状にとがる。稀。
ヌカイタシダD. gymnosora)はソーラスに苞膜はなく、葉の下方から順につく。葉柄基部の鱗片は黒褐色。
ギフベニシダD. kinkiensis)は葉に光沢があり、羽軸裏には基部が扁平の鱗片がつく。葉先はしだいに狭くなる。
ヌカイタシダモドキD. indusiata)やヌカイタシダマガイD. simasakii)は羽片はほぼ無柄。羽片や小羽片は軸に直交してつく。稀。
近縁種 : ベニシダ、 トウゴクシダオオベニシダマルバベニシダタカサゴシダサイゴクベニシダ ヌカイタチシダマガイ

■分布:本州(栃木県・石川県以西)、九州(南部と対馬)
■生育環境:平地から山地の雑木林の林床や林縁などに稀産。

Fig.3 地上部標本。(兵庫県播磨地方・林縁 2011.12/18)
  葉身は三角状卵形〜長卵形で、先は急に狭くなり、やや穂状となる。羽片は広披針形で、先は尾状に伸びる。

Fig.4 葉柄下部の鱗片。(兵庫県播磨地方・林縁 2011.12/18)
  葉柄の鱗片は披針形〜広披針形、淡褐色〜暗褐色、ほぼ全縁。中軸や羽軸にも比較的鱗片が多い。

Fig.5 最下羽片。(兵庫県播磨地方・林縁 2011.12/18)
  羽片の先は尾状に伸びる。
  小羽片は無柄で、細長く、隣り合うものと平行に並ぶ傾向があり、多少とも鎌状に曲がる。

Fig.6 ソーラス。(兵庫県播磨地方・林縁 2011.12/18)
  ソーラスはやや小型でやや密に接近してつく。

Fig.7 葉面のソーラスのつく場所はふくらむ。(兵庫県播磨地方・林縁 2011.12/18)

Fig.8 フィドルヘッド。(兵庫県播磨地方・林縁 2013.4/4)
  地色は赤色で、褐色の鱗片がつく。

Fig.9 展葉したばかりの新葉。(兵庫県播磨地方・林縁 2014.5/23)
  新葉は独特の赤銅色を帯びていた。

Fig.10 新鮮な包膜は紅色。(兵庫県播磨地方・林縁 2014.5/23)
  地域によっては灰白色のものもあるという。

生育環境と生態
Fig.11 社寺の常緑樹林の林縁に群生するハチジョウベニシダ。(兵庫県播磨地方・林縁 2013.4/4)
社寺境内の常緑樹林の傾斜地となった、やや乾いた林床や林縁に群生している。
近くには岩場もあるためか、一部ではタカサゴシダと混生し、画像中にも葉が1枚写っている。
他にベニシダ、マルバベニシダ、シシガシラが見られ、ヒメカンアオイ、タチツボスミレなどが生育している。


最終更新日:23rd.Nov.2014

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