ナチクジャク Dryopteris decipiens  (Hook.) Kuntze
  里山・雑木林・林縁・林床のシダ

  兵庫県RDB Aランク種
オシダ科 オシダ属
Fig.1 (三重県・植林地の林床 2015.11/27)

低山〜山地の林縁、林床などに生育する暖地性の常緑性シダ。
根茎は短く、斜上し、小さな塊状となり、葉を叢生し、鱗片をつける。
葉柄は長さ10〜30cm、鱗片を密生し、わら色。葉質は硬い紙質でやや白っぽく、若いときは赤みを帯びる。
葉柄の鱗片は線状披針形、全縁、褐色〜濃褐色、長さ8mm以下、やや早落性。
葉身は単羽状複生、披針形〜長楕円状披針形、長さ20〜40cm、幅10〜18cm、中軸には披針形で黒褐色の小さな鱗片がある。
羽片は披針形で、幅1〜2cm、基部は心形で短柄があり、辺縁は波状に大きな鈍鋸歯があるか、羽状に浅裂する。
裂片はほぼ全縁、羽軸の裏面には小さな袋状鱗片がある。
ソーラスは羽片の中肋寄りにふつう1列につき、苞膜は全縁。胞子表面には大きいこぶと小さいこぶとぶが混じる。
染色体数'n'=123の3倍体で無融合生殖するが、n=82の2倍体もある。

イヌナチクジャク(var. diplazioides)はマルバベニシダとの中間的な型で、葉身は2回羽状中裂する。
マルバベニシダD. fuscipes)は葉身は2回羽状複葉となり、最下羽片基部は小羽片が独立してつく。
オオマルバベニシダD. medioxima)は2回羽状複葉で、小羽片基部は耳状となり、芽出しの葉は緑色。より大型となる。
近縁種 : イヌナチクジャクマルバベニシダオオマルバベニシダサイゴクベニシダ、 ベニシダ、 ギフベニシダトウゴクシダ
オオベニシダハチジョウベニシダタカサゴシダ

■分布:本州(関東南部以西)、四国、九州 ・ 中国
■生育環境:平地から山地の林床や林縁など。

Fig.2 地上部標本。(三重県・植林地の林床 2015.11/27)
  葉柄は長さ10〜30cm、わら色。葉質は硬い紙質、光沢がある。葉身は単羽状複生、披針形〜長楕円状披針形。

Fig.3 葉柄下部の鱗片。(三重県・植林地の林床 2015.11/27)
  葉柄の鱗片は線状披針形、全縁、褐色〜濃褐色、長さは8mm以下。

Fig.4 中軸の鱗片。(三重県・植林地の林床 2015.11/27)
  中軸には披針形で黒褐色の小さな鱗片がある。

Fig.5 下方の羽片。(三重県・植林地の林床 2015.11/27)
  羽片は披針形で、幅1〜2cm、基部は心形で短柄があり、辺縁は波状に大きな鈍鋸歯があるか、羽状に浅裂する。

Fig.6 羽軸の裏面には小さな袋状鱗片がある。(三重県・植林地の林床 2015.11/27)

Fig.7 ソーラス。(三重県・植林地の林床 2015.11/27)
  ソーラスは羽軸に沿ってふつう1列につく。

Fig.8 大きな葉では羽片下部でソーラスが2列になることがある。(三重県・植林地の林床 2015.11/27)

Fig.9 苞膜は全縁、径1mm内外。(三重県・植林地の林床 2015.11/27)

生育環境と生態
Fig.10 植林地の斜面に生育するナチクジャク。(三重県・植林地の林床 2015.11/27)
スギ・ヒノキの植林地の沢沿いの岩混じりの斜面に、ナチクジャクが点在していた。
同所的にイヌナチクジャク、ベニシダ、トウゴクシダ、シシガシラ、キジノオシダなどのシダ類が生育していた。


最終更新日:5th.Mar.2017

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