ヒメイタチシダ Dryopteris sacrosancta  Koidz.
  林縁・林床のシダ オシダ科 オシダ属
Fig.1 (西宮市・林道脇 2011.9/6)

Fig.2 (兵庫県姫路市・林道脇 2012.12/11)

低地の乾いた林縁、林床に生育する常緑性のシダ。
根茎は短く斜上し、塊状となり、葉を叢生し、鱗片をつける。
葉柄はわら色、長さ20〜40cm。葉柄基部の鱗片はやや密生し、基部がやや幅広く、上部は線形、黒色で光沢があり、辺縁部は淡褐色。
鱗片の長さは1cmを超えることもあり、葉柄上部にも宿存性の鱗片がある。
葉身は5角状広卵形、下部では3回羽状複生、長さ50cmに達するものもある。葉質は紙質、表面には光沢が少なく、やや黄色を帯びる。
羽片は重なり合ってつき、有柄、羽軸の鱗片は扁平で、袋状にならない。
下部の小羽片には柄があり、長い3角形、小羽軸の表面には袋状の鱗片が混じる。羽片の辺縁には小さな鋸歯がある。
胞子嚢群(ソーラス)は小型で、やや辺縁寄りに並ぶ。

【メモ】 ヤマイタチシダほかオオイタチシダなど近縁種に関する同定の参考となる情報は、web上では山口純一氏のサイト
     「日本の野生植物検索表」《オオイタチシダ物語》が詳しい。
近縁種 : オオイタチシダヤマイタチシダ、 ナンカイイタチシダ、 ナガバノイタチシダミヤマイタチシダミサキカグマ

■分布:本州(東北南部以西)、四国、九州 ・ 朝鮮半島、中国
■生育環境:低地の林縁や里山。

Fig.3 地上部標本。(西宮市・林道脇 2011.9/6)
  葉質は紙質、表面には光沢が少なく、やや黄色を帯び、葉身は5角状広卵形、下部では3回羽状複生し、葉先は次第に狭くなる。
  羽片は重なり合ってつき、有柄。最下羽片の第1下向小羽片が第2羽片より長い。

Fig.4 葉柄基部(左)と葉柄基部の鱗片(右)。(西宮市・林道脇 2011.9/6)
  葉柄はわら色。葉柄基部の鱗片は基部がやや幅広く、上部は線形、黒色で光沢があり、辺縁部は淡褐色。

Fig.5 羽軸の鱗片は扁平で、袋状にならない。(西宮市・林道脇 2011.9/6)

Fig.6 羽片の辺縁には小さな鋸歯がある。(西宮市・林道脇 2011.9/6)

Fig.7 小羽軸。(西宮市・林道脇 2011.9/6)
  小羽軸には袋状鱗片が混じる。

Fig.8 胞子嚢群(ソーラス)は小型で、やや辺縁寄りに並ぶ。(西宮市・林道脇 2011.9/6)

生育環境と生態
Fig.9 林道脇の崖地に点在するヒメイタチシダ。(西宮市・林道脇 2011.9/6)
金網の張られたやや脆い乾いた流紋岩質の露頭に点在していた。
周辺には崩壊地や林縁に多いウツギ、ガンピ、ヤブムラサキ、マルバアオダモ、クズ、アオツヅラフジ、タケニグサ、ヤクシソウなどが見られ、
露頭の灌木下の湿った部分ではコモチシダが生育している。

Fig.10 社寺の石垣に生育するヒメイタチシダ。(西宮市・林道脇 2013.2/14)
社寺境内の北東向きの湿った石垣の間に生育していた。
一帯は基岩が花崗岩であり、乾燥した場所が多く、シダ類は北東向き斜面や沢沿い付近に多くの種がかたまって生育している。
付近ではヒメイタチシダもそのような場所にしか見られず、同じ石垣にはウチワゴケ、タチシノブ、オニカナワラビ、ヤマイタチシダ、トウゴクシダ、
ヤブソテツなどのシダ類が生育している。


最終更新日:27th.May.2013

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