ミサキカグマ Dryopteris chinensis  (Baker) Koidz.
  里山・斜面・路傍のシダ オシダ科 オシダ属
Fig.1 (神戸市・谷筋斜面 2015.6/24)

Fig.2 (神戸市・谷筋斜面 2015.6/24)

丘陵〜山地の林床、斜面、道端などに生育する夏緑性のシダ。
根茎は短く横走または斜上し、葉を叢生し、鱗片をつける。
葉柄は長さ20〜30cm、細くてかたく、緑色で栗色を帯びる。
鱗片はやや少なく、葉柄基部のものは卵状披針形、長さ1cmに達し、淡褐色〜黒褐色、辺縁は不斉な鈍鋸歯があるかほぼ全縁。
葉柄中部より上には狭い鱗片がごくまばらにしかない。
葉身は薄い紙質、鮮緑色、5角状広卵形、鋭尖頭、長さ15〜30cm、幅は長さよりやや小さく、3回羽状深裂する。
最下羽片が最大で、非対称の3角状卵形で有柄。小羽片は下先(外先)の付き方をすることが多い。
裂片は長楕円形、鋭頭、あらい鋸歯縁。胞子嚢群(ソーラス)は裂片の辺縁寄りにつき、包膜はやや小型で、全縁。
染色体数'n'=123の3倍体無融合生殖。

【メモ】 最近の遺伝子解析により、本種とナンカイイタチシダ、イワイタチシダ、モトイタチシダとの交雑したものがヒメイタチシダの起源となることが解明された。
近縁種 : シラネワラビミヤマイタチシダナガバノイタチシダオオイタチシダヤマイタチシダイワイタチシダヒメイタチシダ、 ナンカイイタチシダ

■分布:北海道(南部)、本州、四国、九州
■生育環境:丘陵〜山地の林床、斜面、道端など。

Fig.3 地上部標本。(神戸市・谷筋斜面 2015.6/24)
  葉柄は細くてかたく、緑色で栗色を帯びる。
  葉身は薄い紙質、鮮緑色、5角状広卵形、鋭尖頭、幅は長さよりやや小さく、3回羽状深裂する。

Fig.4 葉柄基部の鱗片。(神戸市・谷筋斜面 2015.6/24)
  卵状披針形、長さ1cmに達し、淡褐色〜黒褐色、辺縁は不斉な鈍鋸歯があるかほぼ全縁。

Fig.5 葉柄上部の鱗片。(神戸市・谷筋斜面 2015.6/24)
  葉柄上部では鱗片はまばらとなる。画像のものは泥が付いて少し解りにくいかもしれない。

Fig.6 最下羽片。(神戸市・谷筋斜面 2015.6/24)
  羽片は最下のものが最大で、非対称の3角状卵形で有柄。

Fig.7 小羽片は下先(外先)に付いている?(神戸市・谷筋斜面 2015.6/24)

Fig.8 小羽片の拡大。(神戸市・谷筋斜面 2015.6/24)
  裂片は長楕円形、鋭頭、あらい鋸歯縁。

Fig.9 葉裏。(神戸市・谷筋斜面 2015.6/24)
  胞子嚢群(ソーラス)は裂片の辺縁寄りにつく。

Fig.10 包膜。(神戸市・谷筋斜面 2015.6/24)
  包膜は0.4〜0.6mmと小さく、ほぼ全縁。

生育環境と生態
Fig.11 谷筋の斜面に生育するミサキカグマ。(神戸市・谷筋斜面 2015.6/24)
風化が進みつつある花崗岩質の谷筋斜面に生育しているもの。このような場所のものは小型の個体が多い。
周辺にはイヌシダ、オウレンシダ、ヤマイタチシダなどのシダ類、コカンスゲ、タチツボスミレ、ツクバキンモンソウ、コゴメウツギ、
ナガバモミジイチゴの低木などが見られた。

Fig.12 農道脇に生育するミサキカグマ。(兵庫県播磨地方・農道脇 2015.10/11)
ミサキカグマは広く薄く分布しているシダという印象があり、思わぬところで出会うことがある。
険しい谷に現れたかと思うと、のどかな里山の道端で出会うこともあり、畦に生えているものは草体も大きい。
画像は草刈りが行われて斜面のクヌギの根元に生育しているもので、草刈りの難を逃れている。

Fig.13 棚田の石垣に生育するミサキカグマ。(西宮市・棚田 2016.10/8)
中山間地の棚田の草地斜面や石垣の間には時にミサキカグマが残存していることがあり、ここもそのような場所である。
瀬戸内海気候によるため比較的乾燥しているために、同所的にはイヌシダ、トラノオシダ、ゲジゲジシダ、ワラビが優勢である。
西宮市内ではミサキカグマは稀であり、古い棚田環境が残されている場所だと考えられる。


最終更新日:25th.Feb.2017

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