イワイタチシダ | Dryopteris saxifraga H.Ito | ||
山地・岩壁の植物 | オシダ科 オシダ属 |
Fig.1 (兵庫県養父市・岩壁 2014.6/25) |
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Fig.2 (兵庫県神河町・岩場 2015.5/3) 深山の湿った岩壁に生育する常緑性のシダ。ヤマイタチシダに似るが小型。 根茎はごく短く斜上し、ほぼ塊状で、葉を叢生する。 葉柄や中軸の鱗片は密に直角または下向きに開出してつき、弓なりに反曲して先は上を向き、黒褐色〜黒色、基部は長袋状となるものが多い。 葉柄基部のものは長さ0.7〜1.2cm、辺縁と先端がやや淡色となることがあり、上部や中軸のものは長さ3〜8mm、下部が卵形で淡色となる。 解け掛けの新葉は茶褐色を帯びず、明るい緑色となる。 葉身は2回羽状深裂、長さ10〜30cm、葉面はヤマイタチシダほど光沢がなく、細長い。 胞子嚢群は中間生。包膜はやや大きい。染色体数n=41の2倍体。 イヌイワイタチシダ(D. saxifraga-varia)はイワイタチシダよりも鱗片の幅が広く、やや圧着気味につき、葉柄基部の長袋状鱗片は不完全。 ヤマイタチシダ(D. bissetiana)は葉柄や中軸の鱗片は披針形で、先が長く伸び、やや圧着気味につき、鱗片基部は球状の袋状となる。 近縁種 : イヌイワイタチシダ、 ヤマイタチシダ、 オオイタチシダ、 ヒメイタチシダ、 ナンカイイタチシダ、 ナガバノイタチシダ、 ミヤマイタチシダ、 ミサキカグマ ■分布:北海道、本州、四国、九州 ・ 朝鮮半島〜モンゴル ■生育環境:深山の湿った岩壁。 |
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↑Fig.3 地上部標本。越冬した前年葉。(兵庫県養父市・岩壁 2014.6/15) 葉身は2回羽状深裂、長さ10〜30cm、葉面はヤマイタチシダほど光沢がなく、小型で細長い。 |
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↑Fig.4 葉柄基部付近の鱗片。(兵庫県養父市・岩壁 2014.6/15) 鱗片は密に直角または下向きに開出してつき、弓なりに反曲して先は上を向き、黒褐色〜黒色、基部は長袋状となるものが多い。 |
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↑Fig.5 葉柄上部の鱗片。(兵庫県養父市・岩壁 2014.6/15) 鱗片基部の長袋状部は完全。イワイタチシダでは不完全となる。 |
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↑Fig.6 最下羽片。(兵庫県養父市・岩壁 2014.6/15) 最下羽片の下側第1裂片は他のイタチシダ類同様に長く伸びる。 |
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↑Fig.7 中軸の鱗片。(兵庫県養父市・岩壁 2014.6/15) 葉柄と同様、基部が長袋状となった反曲した鱗片がつく。 |
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↑Fig.8 羽片の裏面。(兵庫県養父市・岩壁 2014.6/15) 胞子嚢群は中間生。包膜はやや大きい。 |
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↑Fig.9 羽軸裏の鱗片。(兵庫県養父市・岩壁 2014.6/15) 長袋状の鱗片がつく。 |
生育環境と生態 |
Fig.10 フクロシダとともに着生したイワイタチシダ。(兵庫県養父市・岩壁 2014.6/25) ここでは安山岩の岩壁の摂理の割れ目にフクロシダや小型のジュウモンジシダなどとともに着生していた。 このほか、近隣の他の岩壁ではイワキンバイ、ミヤマカラマツ、ショウジョウスゲ、イワハリガネワラビ、イヌシダ、ヒメスギランなどとともに見られた。 |
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Fig.11 渓流畔の岩上に着生したイワイタチシダ。(兵庫県神河町・渓流畔の岩上 2015.5/3) 安山岩質の渓流畔の崖の摂理の割れ目にミヤマカンスゲなどとともに着生していた。 他に岩上にはショウジョウスゲ、シハイスミレなどが生育し、岩場直下の渓流畔ではハバビロスゲ、キンシベボタンネコノメソウなどが生育している。 |