ミヤマイタチシダ | Dryopteris sabaei (Fr. et Sav.) C. Chr. | ||
山地・林床のシダ | オシダ科 オシダ属 |
Fig.1 (京都府綾部市・林道脇 2013.5/2) 丘陵〜山地のやや湿った林床に生育する半常緑性のシダ。 根茎は短く斜上し、葉を叢生し、鱗片をつける。 葉柄は葉身のおよそ1/2ほどで、長さ15〜25cm、褐色で、下部は紫褐色、鱗片がやや密生し、基部に無性芽がある。 鱗片は広卵形〜披針形、茶色〜暗褐色、膜質で全縁、長さ1〜1.3cm、葉柄上部や中軸のものは小さく、幅は狭くなる。 葉質は紙質、表面には光沢があり、鮮緑色、葉脈は表面でくぼむ。葉はやや2形性で、胞子をつける葉は羽片の間隔が広くなる。 葉身は卵状長楕円形〜広卵形、2回羽状複生だが、下部では3回羽状深裂、長さ35〜45cm、幅15〜25cm。 羽片は大きいものには柄があり、最下のものは不整の三角状卵形。 小羽片は三角状卵形〜卵状長楕円形、鈍頭〜鋭頭、無柄、羽状に浅〜中裂し、裂片には短くて細くとがる鋸歯がある。 胞子嚢群(ソーラス)は葉身の上半部に限ってつき、その部分は葉が多少縮小し、胞子飛散後に枯れる。 ソーラスは小羽片の中肋寄りにつき、苞膜は径1〜1.2mm、全縁。染色体数n=41の2倍体。 【メモ】 兵庫県南東部では稀な種だが、丹波地方以北では普通に見られる。 イタチシダ類のなかではナガバノイタチシダと近縁だか、葉面に光沢があり、葉脈がくぼむことにより区別は容易である。 近縁種 : ナガバノイタチシダ、 オオイタチシダ、 ヤマイタチシダ、 ヒメイタチシダ、 ナンカイイタチシダ、 ミサキカグマ ■分布:北海道(中・南部)、本州、四国、九州 ■生育環境:丘陵〜山地のやや湿った林床。 |
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↑Fig.2 葉はやや2形性となる。(西宮市・林床 2013.5/27) 右手前は胞子をつけない葉で、中央の直立気味の葉は胞子をつける葉。 胞子をつける葉は羽片の間が広く空いている。 |
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↑Fig.3 実葉の地上部標本。(西宮市・林床 2013.5/27) 葉質は紙質、表面には光沢があり、鮮緑色。 葉身は卵状長楕円形〜広卵形、2回羽状複生だが、下部では3回羽状深裂する。 羽片は大きいものには柄があり、最下のものは不整の三角状卵形で、下側第一小羽片が最も大きい。 |
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↑Fig.4 葉柄と基部の鱗片。(西宮市・林床 2013.5/27) 葉柄基部には淡褐色の鱗片が密につき、葉柄には暗褐色の鱗片がついている。 鱗片は広卵形〜披針形、膜質で全縁、葉柄のものには光沢がある。 |
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↑Fig.5 小羽片。(西宮市・林床 2013.5/27) 小羽片は羽状に浅〜中裂し、裂片には短くて細くとがる鋸歯がある。葉脈は表面でくぼむ。 |
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↑Fig.6 ソーラス。(西宮市・林床 2013.5/27) 胞子嚢群(ソーラス)は葉身の上半部に限ってつき、その部分は葉が多少縮小する。 この部分は胞子飛散後に枯れる。 |
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↑Fig.7 ソーラスは小羽片の中肋寄りにつく。(西宮市・林床 2013.5/27) |
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↑Fig.8 苞膜は腎円形、無毛で全縁。(西宮市・林床 2013.5/27) |
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↑Fig.9 越年したミヤマイタチシダ。(兵庫県丹波市・林床 2013.1/24) ミヤマイタチシダの越年個体は、葉は緑色を保つが、胞子をつけていた部分がボロボロとなっている。 また、胞子を付けない葉も葉柄基部から倒伏しているものがほとんどである。 |
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↑Fig.10 解けはじめたフィドルヘッド。(兵庫県加西市・林床 2013.4/4) フィドルヘッドは褐色の鱗片に包まれる。 |
生育環境と生態 |
Fig.11 湿った林床に生育するミヤマイタチシダ。(西宮市・林床 2013.5/27) 照葉樹林と竹林の湿った薄暗い境界斜面にミヤマイタチシダが点在していた。 周辺には被植は少ないが、ベニシダ、ヒロハイヌワラビ、ホウチャクソウ、フタリシズカなどが生育している。 |
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Fig.12 林道脇に群生するミヤマイタチシダ。(兵庫県丹波市・林道脇 2013.5/9) ミヤマイタチシダは群生する傾向が少ないという認識だが、ここでは湿った林道脇に群生が見られた。 本種は基部下方に無性芽を形成することがあり、周囲には子株も見られることから、無性芽によって殖えたのだろうと思われる。 周辺にはトウゴクシダ、ミゾシダ、クラマゴケ、ミタマカタバミ、トウゴクシソバタツナミ、ヤブヘビイチゴなどが生育している。 |