ナガバノイタチシダ Dryopteris sparsa  (Buch.-Ham. ex D.Don) Kuntze
  山地・林床のシダ 兵庫県RDB Bランク種 オシダ科 オシダ属
Fig.1 (神戸市・谷筋の斜面 2015.1/17)

低山地のやや湿った林床に生育する常緑性のシダ。
根茎は短く直立〜斜上し、葉を叢生し、鱗片をつける。
葉柄は基部に向けて褐色を帯び、上部はわら色、長さ35cm以上、鱗片がある。
鱗片は膜質、淡褐色で中心部がやや濃くなることがあり、披針形〜広披針形、長さ1cm、幅0.8mmくらい、葉柄上部では小さくなる。
葉質はやや厚い草質、鮮緑色、葉身に鱗片はほとんど残らない。
葉身は卵状長楕円形、上部はやや急に狭くなり、鋭尖頭、長さ30〜50cm、幅15〜25cm、2回羽状複生〜3回羽状深裂。
羽片は柄があり、三角状披針形、やや尾状に鋭尖頭、最下羽片は非対称な三角形。
小羽片は広披針形〜卵状長楕円形、鈍頭〜鋭頭、基部は広いくさび形、無柄または短柄があり、羽状に浅〜深裂し、裂片には低い鋸歯がある。
胞子嚢群(ソーラス)は中肋近くにつき、苞膜は全縁。染色体数n=41,82の2倍体、4倍体、および'n'=82,123の2倍体と3倍体の無融合生殖が知られている。

【メモ】 兵庫県では稀な種だが、最近分布域が広がっているとも言われている。
     イタチシダ類のなかではミヤマイタチシダと近縁だか、葉面にほとんど光沢はなく、葉脈がくぼまないことにより区別は容易である。
近縁種 : ミヤマイタチシダオオイタチシダヤマイタチシダヒメイタチシダ、 ナンカイイタチシダ

■分布:本州(千葉県南部以南)、四国、九州、沖縄 ・ 台湾、中国、インド、マレーシア
■生育環境:低山地のやや湿った林床。

Fig.2 地上部標本。(神戸市・谷筋の斜面 2015.1/10)
  葉身は卵状長楕円形、上部はやや急に狭くなり、鋭尖頭、2回羽状複生〜3回羽状深裂。羽片は有柄、三角状披針形、やや尾状に鋭尖頭。
  葉柄は基部に向けて褐色を帯び、上部はわら色、長さ35cm以上。
  (本標本は発見者である望月氏にお借りしたものです。望月氏のご厚意に感謝いたします。)

Fig.3 基部鱗片。(神戸市・谷筋の斜面 2015.1/17)
  鱗片は膜質、淡褐色で中心部がやや濃くなることがあり、披針形〜広披針形。

Fig.4 最下羽片。(神戸市・谷筋の斜面 2015.1/10)
  羽片は柄があり、最下羽片は非対称な三角形。下側の第一小羽片は大きくて幅が広く、柄がある。

Fig.5 中軸と羽軸裏。(神戸市・谷筋の斜面 2015.1/10)
  葉身の中軸や羽軸の鱗片は、ほとんど残らない。

Fig.6 小羽片。(神戸市・谷筋の斜面 2015.1/10)
  小羽片は広披針形〜卵状長楕円形、鈍頭〜鋭頭、基部は広いくさび形、羽状に浅〜深裂し、裂片には低い鋸歯がある。

Fig.7 ソーラスは小羽片の中肋寄りにつく。(神戸市・谷筋の斜面 2015.1/10)

生育環境と生態
Fig.8 谷筋の湿った斜面に生育するナガバノイタチシダ。(神戸市・谷筋の斜面 2015.1/17)
いまのところ阪神間では唯一の自生地で、谷筋斜面に2個体のみが生育している。
同所的にベニシダ、イノデ、ジュウモンジシダ、ヤマイタチシダなどが生育していた。


最終更新日:10th.Feb.2015

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