ヤマイタチシダ Dryopteris bissetiana  (Baker) C.Chr.
  林縁・林床の植物 オシダ科 オシダ属
Fig.1 (西宮市・谷筋暖帯林林床 2011.2/2)
丘陵〜山地の林縁、林床に普通な常緑性のシダ。
根茎は短く斜上しほぼ塊状。葉は濃緑色で、やや光沢があり、葉柄や葉軸には長披針形で黒褐色の鱗片がやや密生する。
葉身は広披針形〜長楕円形で2回羽状中裂または深裂する。
最下羽片第1小羽片は伸長するが、オオイタチシダほど長くならず、先端は次第に細くなり、急に狭くならない。
羽軸裏面にはやや球状の袋状鱗片が多い。若い羽片はオオイタチシダのように紅色を帯びず緑色。
小羽片や裂片先端は全縁か、波状の鈍い凹凸があり、オオイタチシダの小さいが明瞭な鋸歯縁とは異なる。
胞子嚢群は中間生。若い包膜は淡緑色で円腎形、縁毛はない。

【メモ】 ヤマイタチシダほかオオイタチシダなど近縁種に関する同定の参考となる情報は、web上では山口純一氏のサイト
     「日本の野生植物検索表」《オオイタチシダ物語》が詳しい。
近縁種 : オオイタチシダヒメイタチシダ、 ナンカイイタチシダ、 イワイタチシダ、 イヌイワイタチシダ、 ミヤマイタチシダナガバノイタチシダミサキカグマ

■分布:本州、四国、九州 ・ 朝鮮半島、中国
■生育環境:暖温帯の林縁や里山。

Fig.2 地上部標本。(西宮市・谷筋暖帯林林床 2009.12/1)
  葉は濃緑色で、やや光沢があり、葉身は広披針形〜長楕円形で2回羽状中裂または深裂する。
  葉身の中軸には多数の鱗片がつくため褐色となる。

Fig.3 葉柄基部の鱗片と拡大(左)。(西宮市・谷筋暖帯林林床 2009.12/1)
  鱗片は長披針形で黒褐色、ごく狭い淡褐色の縁取りがある。

Fig.4 ヤマイタチシダの羽片。(西宮市・谷筋暖帯林林床 2009.12/1)
  先端は次第に細くなる。小羽片の縁には明瞭な鋸歯はない。

Fig.5 最下羽片の下側第1小羽片。(西宮市・谷筋暖帯林林床 2009.12/1)

Fig.6 中軸に見られる袋状鱗片。(西宮市・谷筋暖帯林林床 2009.12/1)
  袋状鱗片は基部がやや球状となり、淡褐色を帯びる。

Fig.7 最下羽片の下側第1小羽片の裏面。(西宮市・谷筋暖帯林林床 2009.12/1)
  胞子嚢群は中間生。包膜はすでに灰白色になり、縁からは沢山の胞子嚢が見えており、多くが弾けて胞子を出していた。

Fig.8 小羽片の裏面拡大。(西宮市・谷筋暖帯林林床 2009.12/1)
  胞子嚢群を包む包膜は円腎形。淡褐色の袋状鱗片は羽片軸上のほか、小羽片の中央脈にも見える。

Fig.9 新葉は褐色を帯びる。(神戸市・社寺林 2014.5/22)

生育環境と生態
Fig.10 岩壁直下の崖錐上に生育するヤマイタチシダ。(西宮市・谷筋暖帯林林床 2011.2/2)
ヤマイタチシダは岩壁直下の湿った斜面に生育しているのをよく見かける。
ここではコモチシダ(右上)が群生する岩壁の直下に多くの個体が見られた。


最終更新日:24th.Nov.2014

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