ツルネコノメソウ Chrysosplenium flagelliferum  F.Schmidt
  山地・渓流の植物

  兵庫県RDB Bランク種
ユキノシタ科 ネコノメソウ属
Fig.1 (兵庫県養父市・渓流畔 2013.5/8)

温帯林下などの渓流畔や多湿な場所に生育する多年草。
地上性の走出枝があり、花茎の葉と同形の葉を互生する。花後に走出枝は急速に伸び、円形の葉をつける。
根生葉はふつう花時には枯れ、葉柄は長さ5〜8cm、葉身は円形で、長さ2〜3.5cm、幅3〜5cmになり、基部は心形、
縁に7〜17個の切頭または円頭に終わる鋸歯がある。葉は薄く、表面は緑色、あらい毛を散生。裏面は淡緑色。
花茎は高さ3〜15cmで、2〜3個の葉を互生し、ほぼ無毛で、集散花序を頂生する。
茎葉は有柄、ふつう扇形で、基部は鈍形または切形、長さ2〜8mm、幅3〜9mm、無毛、上縁には5〜7個の鈍頭または円頭の鋸歯がある。
苞は下部のものは茎葉に同じで、上部のものは卵形。
花は径約3〜6mmで短い柄がある。萼裂片はほぼ平開、広卵形、緑色または黄緑色、鈍頭、長さ1〜2mm、幅1.5〜2.5mm。
花盤は黄色。雄蕊は8個で、花盤の外縁から出て花時に直立し、長さ約0.7〜1mm。葯は黄色。花柱は長さ1mmくらいで、果時には広く平開。
種子は卵形または長卵形、長さ約0.6mm、1稜があり、平滑だが、微細な乳頭状突起を生じる。

似たものを以下にあげる。
タチネコノメソウC. tosaense)…花後に地中に走出枝を出す。雄蕊8個で、直立し、萼裂片よりも明らかに短い。
                   開花時に根生葉は残る。分布:本州、四国、九州。
チシマネコノメソウC. kamtschaticum)…葉は対生。雄蕊8個で直立し、長さ0.8mm、葯は鮮黄色または汚紅色。種子は長さ0.8〜0.9mm、十数条の稜がある。
                   開花時に根生葉は残る。次の変種ミチノクネコノメソウを同種とする見解もある。分布:北海道、本州近畿以西の日本海側。
イワネコノメソウC. echinus)…葉は対生する。花後に地上に走出枝を出す。雄蕊8個で直立し、萼裂片より短く、長さ0.5mm。葯は橙赤色。
                   開花時に根生葉は残らない。分布:本州(関東〜東海地方)、四国、九州。
近縁種 : タチネコノメソウチシマネコノメソウ、 イワネコノメソウ

■分布:本州(近畿地方以北)、四国(剣山) ・ アムール、ウスリー、中国東北部、朝鮮半島、千島、樺太
■生育環境:主に温帯林下の渓流畔、湿った林内。
■花期:4〜5月

Fig.2 花茎。(兵庫県養父市・渓流畔 2013.5/8)
  花茎は高さ3〜15cmで、2〜3個の葉を互生し、ほぼ無毛で、集散花序を頂生する。
  茎葉は有柄、ふつう扇形で、基部は鈍形または切形、長さ2〜8mm、幅3〜9mm、無毛、上縁には5〜7個の鈍頭または円頭の鋸歯がある。

Fig.3 集散花序。(兵庫県養父市・渓流畔 2013.5/8)
  苞は下部のものは茎葉に同じで、上部のものは卵形。花は径約3〜6mmで短い柄がある。

Fig.4 花。(兵庫県養父市・渓流畔 2013.5/8)
  花は径約3〜6mm、花序の中央から外側に向けて順次開花する。
  萼裂片はほぼ平開、広卵形、緑色または黄緑色、鈍頭、長さ1〜2mm、幅1.5〜2.5mm。
  花盤は黄色。雄蕊は8個で、花盤の外縁から出て花時に直立し、長さ約0.7〜1mm。葯は黄色。

Fig.5 心皮。(兵庫県養父市・渓流畔 2013.5/8)
  中央の花。心皮2個はほぼ同形、花柱は宿存する。

Fig.6 果実期。(兵庫県香美町・渓流畔 2014.5/30)
  心皮は熟すと杯状に広く平開する。開いた中に種子が見えている。

Fig.7 種子。(兵庫県香美町・渓流畔 2014.5/30)
  種子は卵形または長卵形、長さ約0.6mm、1稜があり、光沢がある。

Fig.8 種子の拡大。(兵庫県香美町・渓流畔 2014.5/30)
  表面には微細な乳頭状突起を散布する。また不明瞭な網目様の模様が見られた。

Fig.9 花後の草体。(兵庫県香美町・渓流畔 2011.5/26)
  花後に走出枝は地表を急速に伸び、互生した円形の葉によって周囲は覆いつくされる。
  右上には小さな花後の黄変した花序が見え、それと比較すると葉の大きさが解る。

Fig.10 開花後期にのびはじめた走出枝。(兵庫県養父市・渓流畔 2013.5/8)
  この頃の葉は花茎につく葉とほとんど同形である。

Fig.11 花後の走出枝の葉。(兵庫県養父市・渓流畔 2013.5/8)
  次第に葉は円形となり、葉柄には長軟毛が見られた。ときに葉面にも軟毛を生じる。

Fig.12 軟毛を生じた走出枝の葉。(兵庫県養父市・渓流畔 2013.5/8)
  大きな葉の下半分の脈上に軟毛を生じているものが多い。

Fig.13 果実期の走出枝の葉。(兵庫県香美町・渓流畔 2014.5/30)
  葉の長径は3cm程になり、円腎形、脈上に軟毛がまばらに生えていた。

生育環境と生態
Fig.14 渓流畔の濡れた岩上に群生するツルネコノメソウ。(兵庫県養父市・渓流畔 2013.5/8)
渓流畔の緩やかな岩壁上を湧水が流れ、そこに密に群生していた。
同所的にミヤマヤブニンジン、サンインシロカネソウなどが生育してる。

Fig.15 林道脇の濡れた岩上を覆うツルネコノメソウ。(兵庫県養父市・濡れた岩上 2013.5/8)
湧水により濡れている岩上に純群落に近い集団が見られた。
濡れた岩の下部ではキンシベボタンネコノメソウと混生している。



最終更新日:7th.Jun.2014

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