ヤブカンゾウ | Hemerocallis fulva L. var. kawano Regel |
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里山・草地・林縁の植物 | ユリ科 ワスレグサ属 |
Fig.1 (兵庫県篠山市・果樹園の土手 2010.7/18) 低地〜低山の里山の草地、林縁、用水路脇、ときに道ばたに生育する多年草。 史前帰化植物とされ、日本国内のものは3倍体で結実が見られない。 ノカンゾウと生育環境が似るが、ふつうノカンゾウよりも自生地が多く、里山の人家付近にも多い。 黄色のひも状の根を多数出し、その先は楕円形の塊状となり、基部の根茎から匐枝を出して群生する。 葉は2列に多数生じて長さ40〜90cm、幅20〜40mm、中部以上は円弧状に開いて先は垂れる。 花茎の高さ50〜150cm、先で枝分かれし、その後節から1本ずつ同一方向に花柄を出して巻散状となる集散花序を形成する。 花は黄赤色、八重咲きで、1日花、雄蕊は全部または一部が花弁化する。 【メモ】 ヤブカンゾウは食用としての利用価値が高い。春先の新芽と花期のつぼみ、新鮮な花を食材とすることができる。 春先の新芽はアクもクセもなく独特のぬめりがあって、生食もできるほか様々な料理に利用でき、とくにスープや油と非常に相性がよい。 つぼみは新芽と同様に利用でき、乾燥したものは「金糸菜」として中華食材店でも販売され、薬膳料理の素材となっている。 開花したての新鮮な花もエディブル・フラワーとして食すことができる。 ヤブカンゾウは匐枝で容易に殖え、食材としての利用価値が高かったために、古い時代に「野菜」として持ち込まれたものと 考えているがどうであろうか? 里山周辺ではごく普通に見られるヤブカンゾウを利用しない手はないと思って毎年利用しているが、それほど多くのレシピが web上に見られないのは残念である。 近縁種 : ノカンゾウ、 ユウスゲ ■分布:北海道、本州、四国、九州 ・ 中国 ■生育環境:里山の草地、林縁などの適湿な環境に見られる。 ■花期:7〜8月 |
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↑Fig.2 ヤブカンゾウの葉。(兵庫県篠山市・溜池土堤 2010.8/5) 葉は2列になって生じ、次第に開いて中部以上は円弧状となり、先は垂れる。 近似種のノカンゾウやユウスゲよりも葉は大きく、葉幅も広い。 |
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↑Fig.3 開花前の花茎。(西宮市・農道脇 2011.6/23) 花茎は粉白色を帯び、小型の線形の葉を互生する。 |
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↑Fig.4 開花したヤブカンゾウ。(西宮市・水田の畦 2010.7/9) 花茎は高く伸び、多くはノカンゾウよりも長い。 |
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↑Fig.5 花序。(西宮市・水田の畦 2010.7/9) 花茎は茎頂でふつう2枝に分枝し、その先の各節に1花ずつ花柄を1方向に向けてつける。 花は下方から順次咲きあがり、主軸は次第に弧状に曲がるため卷散状となる(卷散花序<単集散花序)。 花柄基部の主軸上には3角状の小さな苞葉がつく。 |
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↑Fig.6 ヤブカンゾウの花。(西宮市・水田の畦 2010.6/28) 花は6個の花被片のほか、雄蕊の全てまたは一部が花弁化して八重咲きとなる。 6個の花被片は先端裏面が緑色または淡緑色を帯びていることが多い。 |
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↑Fig.7 花のバリエーション。(西宮市・水田の畦 2010.7/9) 画像の花では花弁化していない雄蕊が見られた。 |
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↑Fig.8 春の出芽。(西宮市・河川堤防 2011.3/15) 摘み草として美味しい時期のもの。沢山生えるので収穫量も多い。 味はほのかに甘みがあり、少しぬめりもあって美味しい。 |
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↑Fig.9 根。(西宮市・棚田の土手 2013.4/5) 棚田の土手が崩れてヤブカンゾウの根が露出していた。 地中に黄色のひも状の根を多数出し、その先は楕円形の塊状となる。 |
生育環境と生態 |
Fig.10 農道の土手に生育するヤブカンゾウ。(西宮市・農道土手 2010.7/9) 里山の山際を通る農道の土手にヤブカンゾウが点在していた。 年に数度刈り込みが行われ半自然草地環境が維持されており、ヤブカンゾウの他、ススキ、チガヤ、ノアザミ、サワヒヨドリ、ヒヨドリバナ、アキカラマツ、 イナカギク、ノコンギク、シラヤマギク、スズサイコ、キツネノマゴ、ガガイモ、エビヅル、スイカズラ、アオツヅラフジなどが生育している。 |
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Fig.11 春先に野焼き後の堤防で芽生えるヤブカンゾウ。(西宮市・河川堤防 2011.3/15) 野焼きの行われる堤防では多くの草原性植物が生育する。 ここではヤブカンゾウのほか、カワラマツバ、ツリガネニンジン、ノビル、イヌドクサ、カワラナデシコ、クサボケなどが見られる。 |
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Fig.12 河川堤防に群生するヤブカンゾウ。(西宮市・河川堤防 2011.7/15) ヤブカンゾウは盛夏直前に満開を迎える。河川堤防に群生するヤブカンゾウの花が終わる頃には猛暑日が続き、開花している種も少なくなる。 |