ヤマミゾイチゴツナギ Poa hisauchii  Honda
  山地・里山・林縁の植物 イネ科 ナガハグサ属
Fig.1 (兵庫県篠山市・林縁用水路脇 2011.5/18)

Fig.2 (兵庫県丹波市・林縁 2011.5/25)

山地寄りの里山の湿った半日陰となる林縁や草地、山間の開けた場所の細流の脇などに生育する1年草または短命な多年草。
根はあまり発達せず、全体に繊細で、高さ30〜70cm、有花茎は細く、断面は円形、中空。
葉は幅2〜3mm、長さ5〜10cm、鮮緑色。葉舌は薄膜質で切形から鋭形まで変異に富み、長さ1.5〜2mm。
葉鞘は平滑で、節間より短く、完筒形で、口部に短軟毛を散生、節はふくらむ。
花穂は線形〜狭披針形、枝はあまり開かず、花穂上半部ではほとんど中軸に密接し、先は垂れる。
中軸と枝には刺状突起が散在し、多少ざらつく。
小穂は枝の各節に2〜3個がまばらにつき、長さ3〜4mm、3〜6小花からなる。
苞頴の竜骨には刺状突起があり、第1苞頴は3脈、長さ1.7mm、第2苞頴は1脈、長さ2.2mm。
小花の基部には長くもつれた軟毛(綴毛)がある。
護頴は5脈、長さ2.5〜3mm、竜骨および脈上中央付近まで圧軟毛があるほかは無毛。
葯の長さ0.3〜0.8mmで、護頴の1/5以下。

【メモ】 兵庫県下では内陸の山地寄りに見られ、県南部では稀で、西宮市内では確認できていない。
     丹波地方、特に篠山市では里山の山際の草地などに比較的普通に見られる。
近縁種 : ミゾイチゴツナギイチゴツナギ、 オオイチゴツナギ

■分布:本州、四国、九州 ・ 朝鮮半島
■生育環境:山地寄りの里山の湿った半日陰となる林縁や草地、山間の開けた場所の細流の脇など。
■花期:4〜5月

Fig.3 全草標本。(兵庫県篠山市・林縁用水路脇草地 2011.5/18)
  根はあまり発達せず、全体に繊細で、有花茎は細く、数個の細い葉をまばらにつける。
  標本にすると花穂の枝は花軸に接して線形となりがちである。

Fig.4 葉幅と葉先。(兵庫県篠山市・林縁用水路脇草地 2011.5/18)
  葉はやわらかく、幅2〜3mm、鮮緑色、葉先はしだいに細くなり、先端で急に細くなって鋭頭。

Fig.5 葉鞘と葉舌。(兵庫県篠山市・林縁用水路脇草地 2011.5/18)
  葉鞘は平滑無毛、完筒形、口部に短軟毛を散生する。葉舌は薄膜質で切形から鋭形まで変異に富み、長さ1.5〜2mm。

Fig.6 花穂。(兵庫県篠山市・林縁用水路脇草地 2011.5/18)
  花穂は線形〜狭披針形、枝はあまり開かず、花穂上半部ではほとんど中軸に密接し、先は垂れる。

Fig.7 小穂は枝の各節に2〜3個がまばらにつく。(兵庫県篠山市・林縁用水路脇草地 2011.5/18)

Fig.8 小穂。(兵庫県篠山市・林縁用水路脇草地 2011.5/18)
  小花の基部には長くもつれた軟毛(綴毛)がある。
  第1苞頴は3脈、長さ1.7mm、第2苞頴は1脈、長さ2.2mm。

Fig.9 苞頴の竜骨には刺状突起がある。(兵庫県篠山市・林縁用水路脇草地 2011.5/18)

Fig.10 小花。(兵庫県篠山市・林縁用水路脇草地 2011.5/18)
  小穂は長さ3〜4mm、3〜6小花からなる。苞頴の幅はオオイチゴツナギよりも狭い。
  護頴は5脈、長さ2.5〜3mm、竜骨および脈上中央付近まで圧軟毛があるほかは無毛。
  右の小花は内頴と葯を引き出したもの。葯の長さ0.3〜0.8mmで、護頴の1/5以下。

生育環境と生態
Fig.11 山際の林縁用水路脇に群生するヤマミゾイチゴツナギ。(兵庫県篠山市・林縁用水路脇草地 2011.5/18)
山際の農地の林縁に用水路が流れ、その山際側の半日陰となるやや多湿の草地にヤマミゾイチゴツナギが群生していた。
同所的にスギナ、ミゾソバ、ウシハコベ、キツネノボタン、ウマノアシガタが生育している。
すぐそばの向陽地ではイチゴツナギが群生している。

Fig.12 果樹園の湿った草地斜面に生育するヤマミゾイチゴツナギ。(兵庫県丹波市・果樹園土手 2011.5/25)
ここでは果樹園の林下の湿った場所から草地の土手にかけて非常に多くの個体が見られた。
同所的にはスギナ、ホシダ、ヒメシダ、フキ、カラスビシャク、カキドオシ、ヤマサギゴケ、ツルカノコソウ、ヤブカンゾウ、シャガ、キバナアキギリ、
カテンソウ、セントウソウ、ミヤマフユイチゴ、ウマノアシガタ、イチリンソウなどが見られた。


最終更新日:25th.Jun.2011

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