エフクレタヌキモ Utricularia inflata  Walter タヌキモ科 タヌキモ属
浮遊〜沈水植物 帰化植物
Fig.1 (西宮市・溜池 2004.5/31)

Fig.2 (西宮市・溜池 2013.6/5)

静岡県、兵庫県、大阪府の一部の溜池で帰化している多年生の浮葉〜沈水性の食虫植物。
静岡、兵庫両県のものは人為的に移入されたもので、繁殖力旺盛なため、一度定着すると駆除はなかなか難しい。
植物体は花期以外はほとんど浮遊せず、水中の全層を覆い、茎はよく分枝して長さ2mを超えることがある。
水中葉は茎の各節から1〜2個つき、羽状に細かく数度裂け、裂片は糸状で細い。
裂片の下方には卵形の捕虫嚢をつけ、その長さ1〜3mm、葉全体には多数の捕虫嚢がつく。
花期には水中茎の頂部に内部がスポンジ状の浮嚢葉を5〜10個輪生する。
浮嚢葉は長さ3〜10cm、幅8mm以内、枝の上半部では分岐し、基部はくさび形、水面上で花茎を支える。
花序は輪生する浮嚢葉中央にふつう単生して直立し、高さ20〜50cm、4〜17個の2唇形の花をつける。
萼裂片は長さ3〜5mmで不同長。花冠は幅2〜2.5cm、鮮黄色、上唇は円形、下唇は下半が3裂し、仮面部には黄橙色の斑紋がある。
距は円錐形で、長さは下唇のおよそ1/2、黄橙色の条線がある。
果実は刮ハで多数の種子を含み、果実時には果柄は3.5cm程度に伸びる。切れ藻で容易に殖える。
近似種 : イヌタヌキモノタヌキモヒメタヌキモ、 コタヌキモ、 イトタヌキモ、 タヌキモ

■分布:静岡、兵庫、大阪に帰化。
■生育環境:溜池など。
■花期:5〜10月
■西宮市内での分布:西宮市の中部の一部の溜池に帰化。

Fig.3 エフクレタヌキモの花。(西宮市・溜池 2003.7/22)
  幅2〜2.5cm、2唇形で、上唇は円形で直立し、下唇は開出して、大きく、基部は直立した袋状の仮面部となり、上部には黄橙色の斑紋がある。
  下唇は中部まで3深裂し中央裂片よりも側裂片が大きく、横にひろがる。
  画像からは距が見えないが、距は下唇の1/2の長さで、円錐形、黄橙色の条線がある。

Fig.4 花茎の直下の水面上には浮嚢葉が5〜10輪生する。(西宮市・溜池 2006.11/23)
  浮嚢葉は長い軸がスポンジ状に膨らんだもので、花茎を水中に倒さない役割を持つ。
  軸の上半には側脈にしたがって、細い糸状の裂片を分枝し、水中葉と同じように捕虫嚢をつけることがある。

Fig.5 展開しはじめの浮嚢葉。(西宮市・溜池 2006.11/23)
  花茎が伸び始めると、浮嚢葉もそれにつれて開きはじめる。浮嚢葉が沢山の気室からなっているのが判る。

Fig.6 茎の先端に形成された不完全な休眠芽。(西宮市・溜池 2006.11/23)
  晩秋になると不完全な休眠芽を形成し、冬になると茎の先にはこの芽だけが残り、下方の葉は枯れ落て池底の泥中に半ば埋もれている。
  この芽は何らかの要因でエフクレタヌキモにとって生育環境が悪化した場合にも生じる。
  一時的に休眠しているようで、水温が上昇するとすぐに生育を再開する。

西宮市内での生育環境と生態
Fig.7 貧栄養な溜池で群生するエフクレタヌキモ。(西宮市・溜池 2003.6/30)
コイが放たれている貧栄養な溜池だが、どうもエフクレタヌキモはコイの食害にあっている様子がない。
同じようにコイの食害を受けないジュンサイとともに生育している。

Fig.8 旺盛な繁殖力で群生するエフクレタヌキモ。(西宮市・溜池 2013.6/5)
甲山自然観察池に生育しているもので、夏までに池底全面が覆われる。
かつてはイトモやタチモも植栽され、イトモは特によく繁茂していたが、エフクレタヌキモの勢いに負けて姿を消してしまった。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
角野康郎. 2001. エフクレタヌキモ. 清水建美(編)『日本の帰化植物』 p.193. 平凡社
北村四郎, 1991. エフクレタヌキモ、静岡県に帰化. 植物分類・地理 142:158.
その他、海外のサイトなどを参考にしました。

最終更新日:5th.Sep.2013

<<<戻る TOPページ