アオハリガネワラビ | Thelypteris japonica (Baker) Ching var. formosa (C. Chr.) Nakaike |
ヒメシダ科 ヒメシダ属 |
湿生植物 |
Fig.1 (兵庫県篠山市・溜池跡の湿地 2015.8/27) やや半日陰の湿地、水路脇、休耕田、湿った林床などに生える夏緑性シダ。 ハリガネワラビの変種で湿地生のもの。多くはハリガネワラビよりも大型となる。 根茎は短く斜上する。葉柄基部は赤褐色を帯びて光沢があるが、葉柄はわら色〜緑色で、ふつう葉身よりも長い。 葉柄基部の鱗片は3角状長楕円形、鋭尖頭、濃褐色〜黒褐色、表面は無毛、辺縁は全縁または不斉な突起がある。 葉身は3角状長楕円形、鋭頭、最下羽片はやや下向きにつき、長さ25〜60cm、中軸は緑色で有毛。 羽軸裏も有毛であるが、毛の生える程度は集団や個体によって様々である。 胞子嚢群は裂片の中間〜やや辺縁寄りにつき、苞膜は腎円形、径約1mm、毛が生え、全縁〜波状縁で、縁にごく短い腺毛が並ぶ。 ハリガネワラビ(T. japonica)は低山や里山にふつう。葉柄は赤褐色、中軸には密に毛が生え、羽軸裏にも毛が多い。 イワハリガネワラビ(T. musashiensis)は山地の岩上に生える。葉柄はふつう葉身よりも短く緑色、基部鱗片は濃褐色〜黒褐色、中軸や羽軸裏の毛は少ない。 近似種 : ハリガネワラビ、 イワハリガネワラビ、 ヤワラシダ、 ハシゴシダ ■分布:北海道、本州、四国、九州 ・ 朝鮮半島 ■生育環境:やや半日陰の湿地、水路脇、休耕田、湿った林床など。 ■西宮市内での分布:市内ではまだ確認していないが、見つかる可能性が高い。 |
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↑Fig.2 地上部標本。(兵庫県篠山市・休耕田跡の湿地 2015.9/22) 葉身は3角状長楕円形、鋭頭、最下羽片はやや下向きにつき、長さ25〜60cm、中軸は緑色。 葉柄基部は赤褐色を帯びて光沢があるが、葉柄はわら色〜緑色で、ふつう葉身よりも長い。 |
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↑Fig.3 葉身の大きいもの。(兵庫県篠山市・溜池跡の湿地 2015.9/10) 充分に生育した個体では、葉身はハリガネワラビよりも大きくなる。葉柄が短いのは基部近くで折れてしまったため。 |
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↑Fig.4 葉柄基部の鱗片。(兵庫県篠山市・休耕田跡の湿地 2015.9/22) 葉柄基部の鱗片は3角状長楕円形、鋭尖頭、濃褐色〜黒褐色、表面は無毛、辺縁は全縁または不斉な突起がある。 |
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↑Fig.5 基部鱗片の拡大。(兵庫県篠山市・休耕田跡の湿地 2015.9/22) この個体では辺縁に不斉な突起が見られた。 |
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↑Fig.6 中軸表面。(兵庫県篠山市・休耕田跡の湿地 2015.9/22) 中軸表面には毛があるが、毛の多少は集団や個体によってさまざまで、しばしばハリガネワラビより少ない。 |
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↑Fig.7 羽片の拡大。(兵庫県篠山市・休耕田跡の湿地 2015.9/22) 羽片の中軸や裂片の脈上には毛が生える。 |
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↑Fig.8 羽片の裏面。(兵庫県篠山市・溜池跡の湿地 2015.9/10) 羽軸裏には毛が多い。胞子嚢群は裂片の中間〜やや辺縁寄りにつき、苞膜は腎円形、径約1mm。 |
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↑Fig.9 包膜。(兵庫県篠山市・溜池跡の湿地 2015.9/10) 毛が生え、全縁〜波状縁で、縁にごく短い腺毛が並ぶ。 |
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↑Fig.10 毛のまばらな包膜。(兵庫県篠山市・休耕田跡の湿地 2015.9/22) 集団によっては、包膜の毛がまばらにしか見られないものもある。 |
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↑Fig.11 ハリガネワラビに酷似した個体。(兵庫県たつの市・湿った林縁 2015.8/6) 時に葉柄や中軸下部が暗褐色のものが見られる。しかし草体はハリガネワラビよりも大きい。 |
生育環境と生態 |
Fig.12 溜池跡の湿地で生育するアオハリガネワラビ。(兵庫県篠山市・溜池跡の湿地 2015.9/10) 堤体が抜かれて湿地化した溜池跡の半日陰の周縁部に点在している。画像のものは大型で草丈は80cmに及ぶ。 湿地周縁部はススキ、イヌツゲ、ウメモドキが侵入しはじめているが、そのような部分で見られることが多いようだ。 同所的に上記3種のほか、アイバソウ、アシボソ、チダケサシ、ムカゴニンジン、サワオトギリ、ヌマトラノオなどが見られた。 |
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Fig.13 湿地化した経年休耕田に生育するアオハリガネワラビ。(兵庫県篠山市・湿地化した休耕田 2015.9/22) 山際からの湧水によって湿地化した経年休耕田の周縁部に点在していた。日当たりは比較的良く、年1回草刈りが行われている。 先述と同様、ノリウツギやイヌツゲが侵入しつつある場所に見られ、ここでは地表にはオオミズゴケ群落が発達し、ゼンマイ、アブラガヤ、ヒメゴウソ、 ゴウソ、タチスゲ、チゴザサ、ショウジョウバカマ、ミズギボウシ、タチカモメヅル、サワギキョウ、キセルアザミ、サワヒヨドリなどが同所的に見られた。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 岩槻邦男. 1992 ハリガネワラビ. 『日本の野生植物 シダ』 215. 平凡社 光田重幸. 2015. アオハリガネワラビ. 京都府自然環境保全課『京都府レッドデータブック 2巻』 74. 京都府 最終更新日:9th.Oct.2015 |