イヌガラシ (ナガミノイヌガラシ、アオイヌガラシを含む) |
Rorippa indica (L.) Hiern | アブラナ科 イヌガラシ属 |
湿生植物 |
Fig.1 (西宮市山口町・水田の畦 2008.10/24) 湿った道端、水田の畦、休耕田、用水路、溝、河川敷、溜池畔などいたるところで見られる多年草。 茎は直立または斜上して高さ30〜55cm、無毛、よく分枝する。 葉は倒披針形または長楕円状披針形ときに卵形、長さ6〜15cm、鈍頭、頭大羽状中裂または歯牙縁、無毛、基部は狭まって葉柄状となり、 小さい耳状に茎を抱く。 花弁は黄色、狭倒卵形、長さ3〜3.5mm。萼片は長楕円形。果実は開出してまっすぐかまたはやや曲がり、円柱形、長さ16〜20mm、幅1〜1.2mm。 果柄は5〜7mm。柱頭は0.5〜1mm。種子はやや不定な楕円形で長さ0.7mm。 長角果の長いものをナガミノイヌガラシ(f. longicarpum)とすることがある。長角果の長さは20〜25mmで、しばしば曲がっている。 また花弁が退化消失したものはアオイヌガラシ(f. viridiflora)とされ、稀に見られる。 コイヌガラシ(R. cantoniensis)はイヌガラシより少し小型で、葉の長さ2〜10cm。花は葉腋に単生し、萼片は直立し、長角果も直立する。 ミチバタガラシ(R. dubia)は茎が低く、花弁はなく、長角果は開出し、アオイヌガラシに酷似するが、1室中に1列の種子を配する。 近似種 : スカシタゴボウ、 コイヌガラシ、 ミチバタガラシ、 キレハイヌガラシ ■分布:北海道、本州、四国、九州 ・ 朝鮮半島、中国、インド ■生育環境:水田の畦や休耕田、河川敷、溜池畔、湿った道端など。 ■花期:4〜6月・9〜11月 ■西宮市内での分布:市内に比較的普通に見られる。 |
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↑Fig.2 花序。(西宮市鷲林寺町・草地 2007.5/5) 花は春先に開花する。 |
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↑Fig.3 花冠。(西宮市鷲林寺町・草地 2007.5/5) 花弁4個、雄蕊6個。雄蕊は4本が直立する。アブラナ科で見られる4強雄蕊である。 |
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↑Fig.4 曲がった長角果。(西宮市鷲林寺町・草地 2008.5/1) この草体の長角果は長く2cm以上あり、ナガミノイヌガラシとされるタイプのもの。 長角果が曲がるものでは外来種のマガリミイヌガラシ(R. curvisiliqua)があるが、果柄が2〜4mmと短く、 長角果の半分以下の長さであることが多い。 |
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↑Fig.5 長角果(上)とその内部(下)。(西宮市山口町・休耕田の畦 2008.12/28) 長角果は2室あって、1室内に種子を2列に配する。 画像の果実は冬期に結実したもので、中の種子は痩せており、不稔であるのかもしれない。 |
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↑Fig.6,7 種子。(西宮市山口町・砂防ダム内の湿地 2008.6/24) 種子は赤褐色で、長さ約0.7mm、やや不定な楕円形。表面には網目状の低い隆起がある。 |
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↑Fig.8 茎についた葉。(西宮市鷲林寺町・草地 2008.5/1) 葉は頭大羽状中裂で、頂小片の縁は不規則な歯牙状となる。 葉身基部は葉柄状となり、ちいさな耳状になって茎を抱く。 |
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↑Fig.9 越冬ロゼットを形成した個体。(西宮市山口町・水田 2008.11/23) 冬期はロゼットを形成して越冬する。ロゼット葉は基部が柄状に細まり、頭大羽状裂葉で頂小片はかなり大きく、不規則な鈍鋸歯がある。 |
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↑Fig.10 花弁のないアオイヌガラシとされるもの。(西宮市山口町・砂防ダム内の湿地 2007.6/5) 同属のミチバタガラシ(R. dubia)と酷似する。 ミチバタガラシの長角果は直線状で曲がらず、1室中に1列の種子を配する。 アオイヌガラシを含むイヌガラシでは、1室中に2列の種子を配する。 |
西宮市内での生育環境と生態 |
Fig.11 やや湿った草地の裸地に生育するもの。(西宮市鷲林寺町 2007.5/5) 周辺にはヤブタビラコ、オニタビラコ、ハルジョオン、ヒメジョオン、アザミ、ヤブヘビイチゴ、オヘビイチゴ、キツネノボタン、テキリスゲ、 オタルスゲ、クサスゲ、アオスゲ、ノゲヌカスゲ、スズメノヤリ、ミゾイチゴツナギ、キランソウなどが生育している。 |
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Fig.12 渓流畔に生育するイヌガラシ。(西宮市甲山町 2007.4/20) 開花前の個体。手前に見える白い花はミズタネツケバナのもの。 同所的に見られるものはミズタネツケバナの他に、オオバタネツケバナ、オランダガラシ、タネツケバナ、セリ、ミツバ、クサヨシ、ツルヨシ、 ウシハコベ、ヤナギタデ、ミゾソバなど。 |
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Fig.13 秋に旧畑作地で開花したイヌガラシ。(西宮市山口町 2008.10/24) イヌガラシといえば春〜初夏にかけて開花するものと思われているが、秋に開花している個体も多い。 ここではイヌタデ、ホナガイヌビユ、アメリカセンダングサ、キツネノマゴ、ミゾカクシ、スギナ、チドメグサなどと混生している。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 北川政夫, 1982. アブラナ科イヌガラシ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本2 離弁花類』 p.136. pls.133. 平凡社 北村四郎・村田源, 2004. アブラナ科イヌガラシ属. 『原色日本植物図鑑 草本編(2) 離弁花類』 p.183〜184. pls.44. 保育社 牧野富太郎, 1961 イヌガラシ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 210. 北隆館 吉田多美枝・城川四郎. 2001. イヌガラシ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 750〜752. 神奈川県立生命の星・地球博物館 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. イヌガラシ. 『六甲山地の植物誌』 130. (財)神戸市公園緑化協会 村田源. 2004. イヌガラシ. 『近畿地方植物誌』 103. 大阪自然史センター 黒崎史平 2001. イヌガラシ. 兵庫県産維管束植物3 アブラナ科. 人と自然12:160. 兵庫県立・人と自然の博物館 最終更新日:13th.Aug.2011 |