ホソベリミズゴケ Sphagnum junghuhnianum  Doz. et Molk.
 subsp. pseudomolle  (warnst.) Suzuki
ミズゴケ科 ミズゴケ属
湿生植物  環境省情報不足・兵庫県RDB Bランク種
Fig.1 (兵庫県丹波市・岩壁 2013.1/24)

山地の多湿な斜面、湧水周辺、岩壁下部に生育する大型の蘚類。
草体は薄緑色〜黄褐色、ときに暗褐色。茎は10cm以上となる。
茎葉は三角形〜舌状三角形、先端は狭く、透明細胞にはらせん状の肥厚が見られ、表面の孔は腹面で明瞭。
枝葉は卵形〜卵状披針形で凹み、縁は先端付近で著しく内曲。
透明細胞の腹面には膜にそって少数の大きな丸い孔が中央に並ぶ。
近似種 :  オオミズゴケハリミズゴケ、 ホソバミズゴケ、 イボミズゴケ、 ヒメミズゴケ

■分布:本州、四国、九州 ・ 台湾、中国、ヒマラヤ
■生育環境:山地の多湿な斜面、湧水周辺、岩壁下部など。
■西宮市内での分布:市内には見られない。分布は丹波地方に限られる。

Fig.2 全草標本。(兵庫県篠山市・林道脇斜面 2013.3/4)
  茎は10cm以上に伸びる大型の蘚類。

Fig.3 茎。(兵庫県篠山市・林道脇斜面 2013.3/4)
  茎は紫褐色を帯びていた。茎葉は長さ1.2mm前後、三角形〜舌状三角形、先端は狭くなる。

Fig.4 茎の表皮細胞。(兵庫県篠山市・林道脇斜面 2013.3/4)
  茎の表皮細胞にらせん状の肥厚はない。
  オオミズゴケ、イボミズゴケ、ムラサキミズゴケなどのオオミズゴケ節のものは表皮細胞にらせん状の肥厚がある。

Fig.5 茎葉の先端。(兵庫県篠山市・林道脇斜面 2013.3/4)
  先は狭くなり、葉縁は内側に少し巻いている。先端のささくれはごくわずか。

Fig.6 茎葉の葉身細胞。(兵庫県篠山市・林道脇斜面 2013.3/4)
  葉身の細胞には大型の透明細胞と、線形の葉緑細胞の2種があり、交互に並ぶ。
  透明細胞には線状またはらせん状の肥厚がある。これらはミズゴケ科に共通する特徴。

Fig.7 枝。(兵庫県篠山市・林道脇斜面 2013.3/4)
  枝は1.5cm程度のものが多い。

Fig.8 枝葉。(兵庫県篠山市・林道脇斜面 2013.3/4)
  枝葉は長さ2.5mm前後、卵形〜卵状披針形で凹み、縁は先端付近で著しく内曲する。

Fig.9 枝葉上部背面の葉身細胞。(兵庫県篠山市・林道脇斜面 2013.3/4)
  上部の背面の透明細胞には多くの孔が膜にそって並ぶ。特に葉縁近くでは数が多い。

Fig.10 枝葉の葉先。(兵庫県篠山市・林道脇斜面 2013.3/4)
  わずかに鋸歯らしきものが見られた。

生育環境と生態
Fig.9 岩壁下部に群生するホソベリミズゴケ。(兵庫県丹波市・岩壁下部 2013.1/24)
渓流に面した大きなチャートの岩壁下部から湧水がにじみ出して濡れており、広い面積にわたってホソベリミズゴケに覆われていた。
岩壁にはシシラン、ヌリトラノオ、カミガモシダが着生しているが、ホソベリミズゴケに覆われるあたりではこれらの種は見られず、
ナンゴクナライシダ、コバノイシカグマ、トウゴクシダ、キジノオシダ、コウヤコケシノブ、アオハイゴケが見られる。
他の蘚苔類も多く、オオスギゴケ、ナミガタタチゴケ、オオトラノオゴケ、ヒメシノブゴケ、オオサナダゴケモドキ、ヤマトムチゴケ、
クモノスゴケ、ジャゴケなどが見られた。

Fig.10 多湿な林道上に群生するホソベリミズゴケ。(兵庫県篠山市・林道 2014.3/4)
山側斜面からの湧水によって常にぬかるんでいる林道上を半分ほど覆っている。悪路で車は入り込めない場所である。
他の蘚苔類はほぼ見られず、ホソベリミズゴケの純群落となっている。湧水のある場所ではキジノオシダ、コバノイシカグマ、ベニシダ、
イワガネゼンマイなどが密生している。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
岩槻善之助, 1972. ミズゴケ科ミズゴケ属. 岩槻善之助・水谷正美『原色日本蘚苔類図鑑』 p.29〜35. pl.1. Fig.27〜30. 保育社
兵庫県. 2010. ホソベリミズゴケ. 『兵庫の貴重な自然 兵庫県版レッドデータブック(植物・植物群落)』 (財)ひょうご環境創造協会

最終更新日:7th.Mar.2014

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