ホウオウゴケ | Fissidens nobilis Griff. | ホウオウゴケ科 ホウオウゴケ属 |
湿生・岩上の蘚類 |
Fig.1 (西宮市・濡れた岩上 2015.2/12) 渓流沿いの水のかかるような湿った岩上や地上にまばらな群落をつくる蘚類。雌雄異株。 大型で緑色〜緑褐色、葉はときに30対以上もつき、茎はふつう高さ3〜6cm、ときに10cm以上にも達する。 茎は披針形、鋭頭、長さ3〜6mm、乾いてもあまり縮れない。中肋は葉頂近くに届く。 上部の葉縁には大きな重鋸歯がある。葉縁は全周にわたって2〜3細胞の厚さがあり、それらの細胞は厚膜、平滑で葉身細胞よりやや暗く縁取られる。 葉身細胞は不規則な6角形、長さ8〜11μ、膜はかなり厚く、表面は平滑、または小さな乳頭がある。 剳ソは茎の上部の葉腋から出て、長さ5〜10mm。葯はわずかに湾曲する。染色体数n=16。 ホソホウオウゴケ(P. grandifrons)は葉が硬く、葉縁上部には明瞭な鋸歯がなく微歯がある程度。葉縁付近の細胞は1〜2層となる。 ナガサキホウオウゴケ(P. geminiflorus)は葉の長さ2〜3mm、葉身は1細胞の厚さ、葉縁上部は微歯が並ぶ程度。 トサカホウオウゴケ(P. dubius)は葉の長さ2.5〜3.5mm、葉身の細胞はふうつ1層ときに2層、葉身上部はトサカ状の重鋸歯となる。 ミヤマホウオウゴケ(P. perdecurrens)は葉の長さ1〜2mm、葉身は2細胞層、葉縁上部は重鋸歯とならない。 近似種 : ホソホウオウゴケ、 トサカホウオウゴケ、 ナガサキホウオウゴケ、 ミヤマホウオウゴケ ■分布:日本全土 ・ 朝鮮半島、千島、台湾 ■生育環境:渓流沿いの水のかかるような湿った岩上や地上斜面など。 ■発生期:ほぼ1年中 ■西宮市内での分布:濡れた渓流畔の岩上・地上などに、やや普通に見られる。 |
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↑Fig.2 全草標本。(西宮市・濡れた岩上 2015.2/12) 大型で緑色〜緑褐色、葉はときに30対以上もつき、茎はふつう高さ3〜6cm、ときに10cm以上にも達する。 |
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↑Fig.3 葉。(西宮市・濡れた岩上 2015.2/12) 茎は披針形、鋭頭、長さ3〜6mm。中肋は葉頂近くに届く。 |
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↑Fig.4 上部の葉縁には大きな重鋸歯がある。(西宮市・濡れた岩上 2015.2/12) |
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↑Fig.5 葉縁。(西宮市・濡れた岩上 2015.2/12) 葉縁は単細胞の鋸歯があり、全周にわたって2〜3細胞の厚さがあり、それらの細胞は厚膜、平滑で葉身細胞よりやや暗く縁取られる。1目盛は1.6μ。 |
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↑Fig.6 背葉の横断面。(西宮市・濡れた岩上 2015.2/12) 葉はおおむね2細胞からなり、ときに3細胞となることがある。 |
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↑Fig.7 葉身細胞。(西宮市・濡れた岩上 2015.2/12) 1目盛は1.6μ。葉身細胞は不規則な6角形、長さ8〜11μ、膜はかなり厚く、表面は平滑、または小さな乳頭がある。 |
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↑Fig.8 苔体は乾いてもあまり縮れない。(兵庫県篠山市・渓流畔 2011.3/31) |
西宮市内での生育環境と生態 |
Fig.9 濡れた岩上を覆うホウオウゴケ。(西宮市・濡れた岩上 2015.2/12) 切り立った岩壁に囲まれた沢の上流部の濡れた岩壁全体をホウホウゴケが覆っていた。 植生は少なく、キジノオシダ、オオバノイノモトソウ、オクマワラビ、トウゴクシダが見られる程度で、蘚類も他にトサカホウオウゴケがわずかに見られる程度だった。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 水谷正美, 1972. ホウオウゴケ科ホウオウゴケ属. 岩槻善之介・水谷正美 『原色日本鮮苔類図鑑』 p.49〜58. pl.4. Fig.36,37. 保育社 最終更新日:18th.Feb.2015 |